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毎朝満タンのトラックで、異世界をゆっくり走る。  作者: たむ


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10/20

百本という線

無限を持つ者にとって、最大の力は「出さない」という選択だ。彼はこれまで曖昧に量を調整してきた。しかし噂と信仰が膨らむ中で、明確な線を引かなければならない。百本。多いのか少ないのか、誰にもわからない。ただ、その線があることで、彼はまだ自分でいられる。制限は檻ではなく、輪郭だ。彼は今日、初めて大きな数字を掲げる。

城下町から離れ、彼は再び小さな村々を巡った。だがどの村でも、彼の到着を知っている者がいた。

「奇跡の箱が来た」

言葉は違っても、意味は同じだ。

彼は決めた。

曖昧な上限ではなく、はっきりとした数字を示す。

その日、広場の中央で、彼は地面に大きく「100」と書いた。アラビア数字は通じないかもしれないが、横に線を百本、十本ごとに束ねて描く。

通訳役の若者が説明する。

「一日、百本まで。それ以上、出さない」

ざわめきが起こる。

「なぜ百だ」

「もっと出せるだろう」

彼は静かに首を振る。

「出せる。でも、出さない」

若者が訳すと、空気が変わる。

出せるのに出さない。

それは傲慢にも聞こえるし、節度にも聞こえる。

彼は続けた。

「足りないから、ありがたい。全部あったら、誰も作らない」

井戸を掘る仕草をする。畑を耕す仕草をする。

若者が懸命に伝える。

村人の中に、理解の色が浮かぶ。だが全員ではない。

ひとりの男が前に出て、怒鳴る。

「神の恵みを制限するのか!」

その言葉に、周囲がざわつく。

彼は強く首を振る。

「神じゃない」

胸を指し、首を横に振る。

「ただの、運ぶ人」

若者が訳すと、笑いが少し起きた。緊張が和らぐ。

販売が始まる。百本という数字は、思ったより早く減る。昼前には八十本。

並べなかった者の不満が募る。だが列は守られる。百本目が渡された瞬間、彼は荷台を閉めた。

「終わりだ」

怒号が上がる。

ミアが彼の前に立つ。小さな体だが、耳を立て、牙を見せる。守る姿勢。

彼は胸が熱くなるのを感じた。

怒号の中、ひとりの老人が前に出て、静かに言った。

「百でも、多い。昨日はゼロだった」

若者が訳す。

その一言で、空気が少しだけ落ち着いた。

彼は老人に水を一本渡した。百本の外だ。

ざわめきが再び起きる。

彼は首を振り、老人を指差す。

「井戸、掘った」

老人の手は土で汚れていた。

努力への敬意。例外は、理由がある。

村人たちは黙った。

その夜、ミアが問いかけるように彼を見る。

「なぜ、百?」

言葉は通じないが、目がそう聞いている。

彼は焚き火を見つめながら答える。

「多すぎず、少なすぎず。俺が覚えられる数」

百は象徴だ。

無限ではなく、数えられる数字。

数えられる限り、彼はまだ補充員でいられる。

夜空に星が広がる。

荷台は静かだ。

明日も百まで。

その線を守れる限り、彼は神にならずに済む。

第10話で彼は明確な上限「百本」を宣言しました。無限を持ちながら制限する姿勢は、理解も反発も生みます。大切なのは、彼が自分で決めたということ。次は自然の試練。干ばつが訪れ、百本では足りない状況がやってきます。

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