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〜使用人の私が王子も敵国王子も夢中にさせる〜  作者: レノスク


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第12章 月光の廊下と心のざわめき

月光が長い廊下を銀色に染めていた。


カイルは壁際に身を寄せ、アリシアとレオニスの会話を遠目で見つめている。


彼らの声は静かで穏やかだが、どこか温かく、耳に届くたびにカイルの胸の奥がざわついた。


「今日も、外はとても寒かったわね」

アリシアの声は軽やかで、無邪気に楽しそうだ。


「そうだな。でも君とこうして歩けるなら、寒さも悪くない」

レオニスの声には落ち着きと優しさがあり、言葉の一つ一つが自然に温もりを帯びている。


カイルはその声に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる感覚を覚えた。

(ずるい……兄上はいつも自然体で、優しくて……俺は……俺は……)


言葉にできない気持ちが、カイルの中で渦巻く。





カイルは普段通りの明るい笑顔を浮かべ、声も弾ませる。


「兄上、寒そうだな! ほら、走って体を温めようぜ!」

ふざけた口調に、いたずらっぽい笑顔。


しかしその笑顔の奥には、嫉妬と焦りがひそむ。


アリシアはくすくすと笑う。


「カイルって、やっぱり面白いわね」

その無邪気な笑い声が胸に突き刺さる。


認められたい、でも兄上を傷つけたくない――矛盾した気持ちがカイルの心を揺さぶる。





レオニスは微かにカイルの動きや表情を観察していた。


肩のわずかな緊張、声のかすかな震え――普段の陽気な演技の裏に、心のざわめきを感じ取る。


「……カイル、何か心配しているのか?」

問いかけの声には責める調子はなく、静かに見守る温もりだけが含まれている。


「な、なんでもないよ、兄上!」

カイルは瞬間的に笑顔が揺れた。


外見は明るく、口調も冗談めいているが、指先の緊張と肩の硬直は隠しきれない。


レオニスは微笑みを返し、深追いはしない。

(……嫉妬してる。でも、彼は自分の気持ちを押さえている……)


その洞察は優しさと共に、静かにカイルを包むように漂った。





月光に照らされた廊下は、三人の距離を映し出す。


アリシアの無邪気さが二人の間に柔らかい光を落とす一方、カイルの心のざわめきはその光を揺らす。


「俺は……兄上のためなら、どんな気持ちも押し殺せる……」

カイルは小さく心の中で呟き、笑顔の裏で拳を握った。


レオニスの視線が、わずかに自分に向けられている。


問いではなく、静かに見守るまなざし――

カイルを責めず、理解するための目。


アリシアの笑顔、レオニスの優しさ、そして自分の心のざわめき。


三者の感情が月光に映え、廊下の静けさの中で複雑に絡み合う。


カイルは笑いを続けた。


でも胸の奥では、まだ整理しきれない感情が、静かに揺れていた。

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