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〜使用人の私が王子も敵国王子も夢中にさせる〜  作者: レノスク


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第11章 月光の下の想い

城の廊下は、夜の静寂に包まれていた。


窓から差し込む月光が大理石の床を淡く照らし、長い影を伸ばす。


その静けさの中で、アリシア・ルミエールは軽やかに歩いていた。


誰もいないはずの廊下に、なぜか気配を感じる。


「……誰か、いるのかしら?」

アリシアは少し身をすくめるが、振り返る勇気は持てなかった。


その瞬間、優しく温かい声が心に届く。


「そんなに緊張しなくても大丈夫だ、アリシア」

第一王子、レオニス・アルディアの声だった。


その声には自然と安心感が宿り、聞くだけで心が穏やかになる。


背筋の伸びた姿、穏やかな笑み、そして気品を備えたその立ち居振る舞いは、まさに王道の王子そのものだった。


レオニスは目を細め、無邪気に笑うアリシアを見つめる。


無理に言葉にせずとも、その視線の優しさだけで、彼女は温かさを感じる。


「月夜に散歩……気持ちいいですね」


アリシアが微笑むと、レオニスも微かに肩を揺らして笑った。


その笑顔は、太陽のように明るく、でも柔らかく、誰も傷つけない光だった。





廊下の陰に、ひっそりと影がひとつ。


カイル・アルディアは壁にもたれ、二人の様子を見守っていた。


胸の奥に小さな嫉妬の炎が揺れる。


兄の優しさがあまりに完璧で、眩しくて、胸がざわつくのを抑えられない。

(……兄上は、何でこんなに……)


カイルは拳を握り、気持ちを押し込める。

優しく、誰にでも安心感を与えるレオニス。


その隣で無邪気に笑うアリシア。


二人の間に漂う空気の温度に、自分だけが入り込む余地はないのだと、わかっている。


「……でも、兄上の幸せが最優先だ」

自分に言い聞かせるたび、胸の奥の痛みが増す。


けれど、それでも目の端で二人を追い続ける自分がいる。


嫉妬と、守りたい気持ち。





廊下の空気はひんやりとしているが、三人の心はほんのり温かい。


アリシアの笑顔は周囲を柔らかく照らし、レオニスの穏やかな視線が安心感を与え、カイルはその光景を押し殺しながらも心で感じる。


「……俺は、兄上のために……」

カイルは壁に手をつき、静かに息をつく。


だが、胸の奥の小さな炎は、まだ消えてはいなかった。


嫉妬。興味。守りたい想い。


すべてが静かに、でも確実に心の中で揺れている。


月光の下、三者三様の想いが交錯する。


声に出さずとも、心の距離は確かに縮まっていることを、それぞれが感じていた。


カイルは気持ちを抑えられないかもしれない。

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