表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〜使用人の私が王子も敵国王子も夢中にさせる〜  作者: レノスク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/18

第10章 天才の、ほんの一歩

朝の宮廷魔導塔は、冷たく静かだった。


 石造りの回廊に、魔力の残滓がわずかに漂う。


 そんな中、第3王子 カイル・アルディアは、少し浮かれた足取りで階段を上っていた。

(……今日は面白いことが起きそうだ)


 研究室の扉の向こう。


 宮廷魔道士 セシル・フェインが立ち止まっている。


 いつもなら、迷いなく魔法陣を完成させ、必要な修正もほとんどしない天才だ。


 だが今、彼は手を止め、眉をひそめ、息を小さく吐いていた。

(おお……これだ。まさか努力を意識するなんて)


 カイルは思わず口元を緩め、静かにくすくす笑う。


 いたずら心が自然と湧き上がった。


「おーい、セシル! 今日も実験中か? 爆発させるなら事前に知らせてよ、逃げるから」

 扉を開け、声をかける。


 セシルはわずかに顔を上げるが、すぐに机に向き直る。


 そのわずかな動きだけでも、カイルには十分すぎるほどの反応だった。

(動揺したな……ふふ、見逃さないぞ)



 ◆



 机の上には、書き直された魔法陣の紙束が積まれている。


 普段なら一発で完成させるのに、何度も書き直している。


「おやおや、これは珍しいねぇ」

 カイルは椅子に腰掛け、くすくす笑いながら指で紙をつつく。


「迷ってる? それとも……誰かのために考えた?」

 セシルは眉をひそめ、わずかに息を吐いた。


 手元の動きが一瞬止まり、指先が微かに硬直する。

(ビンゴだな)


 カイルは心の中でガッツポーズ。


 天才が自分以外の誰かを意識して動く――こんな貴重な光景は滅多に見られない。


「ふむふむ、努力する天才……いい表現だな」


 軽口をたたきつつも、カイルの目は真剣だった。


 この変化を誰より早く見つけた自分が誇らしい。



 ◆



 いたずらはやめない。


 机上の小さな魔法具を、さりげなく微振動させる。


 セシルはそれに気づき、指が止まる。


 眉が寄り、呼吸もわずかに乱れる。

(反応した! やっぱり揺れてるな)


 カイルはニヤリと笑う。


 だが、声には出さず、ただ静かに観察するだけ。


 彼にとって、セシルの一挙手一投足が新しい楽しみだった。



 ◆



「セシル、今日の魔法、安定してるな」

 ぽつりと言うと、セシルは再び机に向かう。


 表情は無表情だが、肩の力は少し抜けている。

(……うん、間違いない。変化してる)


 カイルは背もたれに体を預け、静かに満足した。

(この小さな成功、誰に向かうんだろうな……ふふ、楽しみだ)


 いたずら好きな第3王子は、胸の奥でワクワクしていた。


 天才のほんの一歩を、誰より面白く見届ける。


 ――物語は、確かに動き始めたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ