『みじかい小説』055 / ネオンの煌めき ~1000文字に満たないみじかいみじかい物語~
今日もこの町にネオンが灯る。
「ネオン」なんて言っても、近頃では本物のネオンは少なくなり、そのほとんどが「LEDネオンサイン」に置き換わってしまった。
なんでも、コスパがいいだとか、ネオンのようにガラス管を使用していないから環境にいいだとか、確かそういった理由である。
なんでもかんでも軽く新しいものに置き換わっていってしまっているような気がして、アタシなんかは、この年になると、重みのある古く味わい深いものの良さが失われているように感じらてもの悲しさを覚える。
アタシは今年で六十になる。
十八の頃にこの町に流れ着いて、当時はとにかくお金が必要だったから、住み込みで働かせてもらえる店を訪ね歩いた。
何軒かまわる中で、気のいいママが支配人に口をきいてくれて、とあるガールズバーで働けるようになった。
きわどい服を身にまとい、毎晩毎晩、どんちゃん騒ぎ。
反動で病んじゃう子も多かったけど、アタシは根が図太かったせいか、いくらお客が嫌だろうが、いくら酒を飲まされ気分が悪くなろうが、構うことはなかった。
そんなアタシといい仲になったのが、当時ボーイをしていた元夫だった。
二人とも二十代という年齢もあり、勢いで結婚したようなもので、そのまま勢いで子供までできた。
アタシが育児にかかりっきりになり、夫が返ってきても小言ばかり言うので、だんだんと夫婦仲が覚めていき、結局三年後には離婚した。
母子家庭になったアタシはママや同じような先輩を頼り、女一人、この町で生きていく決意をかためた。
息子はやがて、小学校に入り、中学校に入り、高校を卒業し、家を出ていった。
気づけばアタシは、とあるクラブのチーママにおさまっていた。
そんなアタシに、店を出さないかと声をかけてくれた人がいた。
アタシとその人は、すぐにいい仲になった。
アタシは店を持つ話に、気をよくして「ウン」と答えた。
しかしその話が嘘だった。
アタシは借金を背負わさる形で、その店をオープンさせることになった。
とにかく必死で働いた。
そうして、やっと今年、借金を返済し終えたというわけだ。
あー疲れた。
老後のことなんて、今はまだ考えられない。
息子とは音信普通だし、愛人ももういない。
身軽になったこの身で、次はどうしてやろうか。
田舎に部屋でも借りて、細々と穏やかに暮らしていこうか。
このネオンの町を出て?
なんだか笑えてきて、アタシは煙草に手を伸ばすのだった。




