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24話-7※ 幕間/冒険者の話

※魔獣との戦闘描写が入ります。


軽度のグロテスク描写かと思いますのでご注意ください。

 飛び上がった魔獣はノイやキャット目掛けて真っすぐに落ちてきた。


 ノイはキャットを抱えて横に飛び魔獣を避ける。大きな爆発音のような音と衝撃が森を揺らす。砂煙は魔獣の鼻息で吹き飛ばされた。


 砂煙が消えると、そこには胴体を深々と地面にめり込ませる魔獣の姿があった。あの巨体でああやって自分たちを押しつぶすつもりだったのだと思うとキャットの背筋は凍る。


「でけぇ‥‥! はえぇ!」


 目の前の魔獣は、今までの個体のどれよりもずっと大きく、森の木と同じくらいの大きさに見えた。


 魔獣は、とくにイノシシ型のああいうものは力はあるが知能は低いことがほとんどだ。だから攻撃が突進だけだったりしてその分対応がしやすい。

 しかし、こちらの攻撃を避けたり続けざまにあんな攻撃を仕掛けてきたり、目の前の個体からは高い知能を感じざるをえない。体の大きさもあるが、おそらくは群れのリーダーなのだろう。


 知能のある魔獣はかなり厄介だ。


 魔獣は着地と共に獲物の感覚がないことに気が付いていたようで、もうすでに立ち上がろうと前足を立て始めていた。


「あの大きさじゃ回転しても一撃じゃないだろうけどさ。絶対楽だからな。回転切りの方が」


 まだそんなことを言い続けるノイを押しやり、キャットはスクロールを手にする。


「わかったって。スクロールで援護すりゃいいんだろ!?」

「頼んだ」


 突如キャットは木の上に放り投げられた。


「お、わぁ!?」


 浮遊する視界の中、ノイに向かって魔獣が突っ込むのが見えた。魔獣の鋭い牙をノイは剣で防いだが、勢いに負けて空中高く跳ね上げられる。


 放り出されたキャットは枝を掴み素早く体制を立てなおすと、魔獣の方へスクロールを開いた。スクロールからは巨大な火球が飛び出し、魔獣へみごと命中する。


「よっしゃ! でかいのはでかいなりに当たりやすくていいや」


 その火球を目印に、空中からノイが高速回転切りを繰り出すが、狙いが外れ魔獣の背中に多少の傷を負わせただけだった。

 大きく身震いした魔獣に振り落とされ、ノイが地面に着地する。


「今のでそれだけ!?」


 火球は高価なだけはあり、かなりの威力に見えた。ノイの攻撃だって一切手を抜いた様子はない。

 それらを受けてもびくともしていない魔獣に、キャットはただただ驚くばかりだ。


 ノイの方へ向きを変えた魔獣は、また猛スピードで突進する。まともに正面から受けたのではまた跳ね飛ばされるだけなので、ノイも跳躍して突進をかわす。


 避けられたとわかると、魔獣は体の向きを変えてまた突進してくる。猛スピードで直進しているくせに、真後ろに体を捻る速度が恐ろしく速く、ノイは避けるので手いっぱいのようだった。


 続く突進を空に逃げてかわそうと、ノイは跳ぶ。


「他のと比べて毛皮も肉も固くて分厚い。こいつが群れのボス、‥‥なっ!」


 目の前に魔獣が現れ、一瞬ノイの動きが止まる。跳ねた獲物の動きに合わせ、魔獣も跳躍したのだ。


「くっそ!」


 とっさのことに上手く対応できず、ノイは魔獣と衝突した。衝撃でバランスを崩し、そのまま落ちる。


 地面に落ちていくノイを、真上から魔獣が狙う。二つの巨大な蹄がきちんと揃えられ、踏みつぶさんとこちらに向かって伸びている。


 空を蹴って避けてもいいが、着地先が森の中だ。キャットがまだこの下のどこかにいるのだから、一瞬でもこの魔獣を見失うわけにもいかない。


 このまま迎え撃ってもいいが、元の体重と落下の勢いで相当重たいことだろう。斬れる気はせず、上手くいって蹄の方向が逸れるだけだろう。

 逸らした後、降ってくるこの巨体をどう避けるか。


 ノイが判断に迷ったその時、魔獣の横顔を火球が殴りつけた。

 キャットが叫ぶ。


「ぼうっとしてんなよ!」

「助かった!」


 火球の衝撃のおかげで狙いの逸れた蹄をぎりぎりのところでかわし、着地と同時に魔獣の左前足を深く切りつけた。魔獣は大きく叫び、その場で地団太を踏むように暴れる。


 巻き込まれそうなので、ノイもいったん魔獣から距離を取った。


 するとそう時間を置かずにまた魔獣は突進を仕掛けだした。が、突進の速度は先ほどと比べ格段に落ちている。

 突進を避けるのに気を取られ反撃ができずにいたが、これなら攻撃に転じる余裕がある。断然戦いやすくなった。


 さらなる減速を狙い足目掛けて剣をふるうと、魔獣は後ろ足で地面を蹴って短い距離を突進するように戦い方を変えてきた。


 それに合わせてキャットがスクロールで魔獣の攻撃を妨害しながらノイが戦いやすいよう援護しつつ、二人は森を駆け巡る。


 やがて崖のそばにやってきた。


「スクロール、最後だ!」


 最後の火球は走る魔獣の深手を負った前足に命中し、さらに速度を殺した。魔獣は痛みに耐えかねたのかよろけ、大きな隙ができる。


 ノイはその隙を逃さなかった。

 瞬時に魔獣の元へ駆けより、その鼻先で剣を構え、呼吸を止める。


「は‥‥っ!」


 一撃にすべてを込め、斬った。


 目にもとまらぬ速さだった。

 ずっと魔獣を凝視していたキャットでさえ、ノイが何をしたのかよく見えなかったほどだ。


 立ち尽くす魔獣の頭から胴体にかけてが左右にずれ、斬られたと察した魔獣が大きく断末魔の叫び声をあげたが、その声と体は二つに裂ける。魔獣は二つの肉塊となって崩れ落ちた。


「‥‥やった、倒した」


 キャットが駆け寄ってくる。


「なぁ、倒したぞ! やった! やったー!」


 喜ぶキャットをよそにノイは土煙の向こう側、崖のすぐそばを睨んでいた。


 そこには身を寄せこちらを見ている二人の少年少女の姿があって、少年の方と目が合った。瞬間、背筋をぞわりと嫌な気配が伝って、考えるより早くノイは地面を蹴っていた。

お読みいただきありがとうございました。


幕間はこれで終了です。

明日からは第二章、またチトセ視点のお話に戻ります。

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