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12話-2 精霊騎士と仲直り

 リュカは友達相手だと怒りも遠慮もなくなる。ご飯を食べながらエルダーへあれやこれと次々質問を投げかけていた。真面目な彼はそのすべてにきっちり答える。それもまたリュカを喜ばせたようだ。


 リュカはご飯を食べ終わった後も彼にべったりくっついて色んな話をしたり聞いたりしていた。その様子はまるで小学生に好かれたお兄さんの図。実に微笑ましい。

 始終楽しそうなリュカを見るのは私も嬉しい。


 騎士団全員分の朝食の片づけをリュカと2人で手伝っていると、ようやく覚醒したフェグラスとドゥア、そして魔人が連れ立ってテントの方へ向かうのが見えた。

 今日はこの後魔法陣の修正について話し合うと朝食の時話していたのを思い出す。


「ねぇチトセ、この世界のエルダーってね、僕の知ってるエルダーと違うんだよ」

「そうなの? どこが?」

「僕がぎゅってしても怒らないし、一緒に寝てもいいって聞いたら寝ていいって!」

「えっと、ふぅん?」


 抱き着くまではいいけど、一緒に寝たいと突然言われた時のエルダーの顔を思い浮かべる。きっと相当困惑したに違いない。


 良い人が過ぎるのか、本気じゃないと思ったのかわからないけれど、リュカはいつも本気だ。きっと夜になって、リュカが同じベッドに潜りこんできたらびっくりするんだろうな。考えると面白かった。


 さっきまであんなに怒っていたのに、急に距離を詰めるんだから、リュカも大概距離感がおかしい。いい意味でね。

 それを受け入れてしまえるのは、リュカの好意が素直で悪意のないものだからだろう。下心のない純粋な好意は嬉しいものだ。


「じゃあ、今夜はリュカ、エルダーさんと一緒に寝るの?」

「ううん。チトセと寝る」

「そうなの?」

「うん」


 あんなに嬉しそうに報告してきたのに、私と寝ると即答。なんだか勝ったって気がして嬉しいけど、妙に気になる。


「いいんだよ? エルダーさんと一緒に寝たって。私、一人で寝られるし」


 懐いてくれてる子供を出来心でからかう、そんな気持ちでちょっとだけ意地悪を言ってみる。するとリュカは一瞬迷うようなそぶりを見せたから、ドキッとした。

 だけどすぐに私を見て、頭を振る。


「チトセと寝るの」


 よかった。一瞬「ならそうする」って言われるかと思っちゃった。

 でもこれじゃ、ほんとは私がリュカと一緒に寝たいみたい。


 思わぬ本心になんだか恥ずかしさを感じていると、リュカが神妙な顔をしているのに気が付いた。目が合うといつもみたいに首を傾げる。


「チトセこわい夢見るでしょう。だから僕一緒に寝たげるの」

「え、こわい夢? 私もしかして夜うなされてる? ごめん、気が付いてなかった。うるさくない?」


 知らなかった。

 こわい夢を見てるってわかるってことは、相当うなされてるんだろう。うるさくないことはないよね。

 というか、もしかしてリュカの目の下のクマって、私が原因だったりして。うるさくて、ちゃんと寝れてないとかさ。


 リュカは首を振った。


「うなされてるけど、うるさくないよ。すぐ静かになるし」

「そうなの? それならよかった。‥‥これってよかったっていうのかな。けど、それいつからだろ。昨日もうなされてた?」

「うん。ずっとだよ。いつも。チトセがうなされてなかったのって、一緒にクローゼットに入った時くらい」

「そ、そっか‥‥。そんな前からなんだ」


 お城のクローゼットに入った時のことを思い出すと今でもかなり気恥ずかしくなるから、あまり思い出したくはない。

 ていうか、リュカあれ覚えてるんだ。


 でも、そうするとヘリオンの事とか、諸々きっとトラウマになってるんだ、私。夢って覚えてないから全然知らなかったけど、悪夢を見てるんだなぁ。


 悪夢でうなされてるだけならまだいいけど、寝言とかいびきとかしてたらどうしよう。リュカにそれ、聞かれてたらどうしよう。すっごい恥ずかしい。


「ねぇリュカ、私いびきとかかいてない?」

「うん。いびきは聞いたことないよ」

「ほんと? じゃあ寝言とか」

「寝言はたまに言うけど、気にならないよ」

「えっ! なんて言ってるの、私!?」

「ええー‥‥。覚えてない」


 やだぁ! 言ってるんだ! 寝言!

 どうか神様、恥ずかしいこと言ってませんように!


「でもね、だから僕チトセと一緒に寝たいんだ」

「あ‥‥。そっか、そういうことだったんだ」

「そういうこと?」


 もしかしなくても、リュカが私と一緒に寝たがってたのって、そういう理由があったからなんだ。ダンジョンのあとも、納屋の時も、今朝も。うなされてる私を心配してくれてたってこと。


 そう考えたら急に恥ずかしくなってきた。顔が熱い。


 てっきりリュカが甘えん坊だから一緒に寝たいとか手を繋ぎたいとか言ってるんだとばかり思ってたから。

 あとは、その、私の事ちょっとはそういう意味で好きなのかなとか。


 なんて恥ずかしいことを考えてたんだろう。全部私のせい、私のためにしてくれていたことなのに。盛大に勘違いしてた。


 あぁあ、恥ずかしい! 穴があったら入りたい。


 恥ずかしくて叫び出したい気持ちを抑え、笑顔を作る。


「あ、ありがとうね、リュカ」

「え? なにが?」

「悪夢から、守ろうとしてくれてたんだね」

「ああ、そんなこと。いいの、だってチトセが楽しい夢見てくれてる方が僕好きだもん」


 良い子だなぁ。


 にへにへ笑うリュカが愛しくて、ありがとうの気持ちを込めて頭を撫でる。

 嬉しそうに身をよじって抱き着いてくるけど、それも甘えているだけじゃなくて、他になんだか意味がある気がしてくる。いや、さすがにないか。


 もう2度と勘違いはしないよう、このことは強く心にとどめておこう。


「だから今日もチトセと一緒に寝たい。いいでしょ?」

「わかった。いいよ」

「ほんと!? じゃあ、手を繋いでもいい?」

「いいよいいよ。好きなだけ繋いでいいよ」


 なんというか、リュカの事甘えん坊の弟みたいだと思ってたけど、違う気がしてくる。前も思ったけど、子犬のようだ。

 飼い主が寂しい時とか一緒にいてくれる可愛い小型犬。頼りにならなさそうなのに、とっても頼りになる心強い味方。


 あ、でもそれってペット呼ばわりみたいで失礼かな。けど、私の心の中のイメージだし、悪い意味じゃないからいいよね。内緒にしておこう。


「じゃあぎゅってしながら寝てもいい?」

「それは‥‥ちょっと」


 リュカが本当に子犬とか、前みたいな人形の姿だったら「いいよ」と言うところ、彼は人間の男の子。抱きしめられて眠るなんてされたら、私の自意識が過剰に反応するだろうことは目に見えている。

 だからダメとは、恥ずかしいから、口が裂けても言えないけど。


「だめ?」

「うん」


 私が頷くと、リュカは口を尖らせ腕に力を込めてくる。ちょっと拗ねてしまったみたいだ。やっぱりこういうところは甘えん坊がある気がする。

 けど、そういうところが子供っぽくて可愛いとも思う。なので、ひとまずはこれでいっか。

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