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商品番号003『正義のかたち』
―誰も間違っていない。だから、世界は壊れた。
ひとつの街で、戦争が起きた。
きっかけは些細だった。
境界線に置かれた一輪の花。
それを踏んだのが、どちらの兵士か。
誰が先に撃ったのか。
どちらが侮辱したのか。
どちらの神が先に否定されたのか。
議論はまとまらなかった。
でも、それぞれの国が言った。
「我々は、守るために戦う」
「自由を奪われないために」
「正義のために」
兵士は叫んだ。「敵を倒すことが、平和への近道だ!」
教師は泣いた。「子どもたちに希望を教えるために、我々は立ち上がる!」
司祭は祈った。「神は、この戦いを祝福している!」
科学者はうなずいた。「この技術は、防衛のためにだけ使われる」
政治家は誓った。「この犠牲は、未来への投資だ」
そして、街は燃えた。
瓦礫の下から、少年が出てきた。
左右で言葉が違う国の血を引いた子どもだった。
彼はひとつの質問をして、沈黙を呼んだ。
「“正しい”って、どっちの言葉で言えばいいの?」