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第9章「ノネレーテの結論」【9】

 入院中のカーシャは、頭領ノネレーテがホミレートの町から姿を消したと聞いて、捨てられたのだと落ち込んでいる。


 それを伝えたのはゼオンであった。


 彼はノネレーテからカーシャの入院費用として金を預かっていた。


 ノネレーテはカーシャに会わずに行くと決めていた。


 会えば心が揺らいでしまうと分かっているからである。


 ノネレーテがどこへ行くつもりかとカーシャに尋ねられたが、ゼオンは知らないと答えた。


 リグ・バーグへ行って国軍の騎士と会って、落とし前を着けるなどとは言えなかったからだ。


 もしも自分もリグ・バーグに行くとカーシャが言い出したら、大変だ。


 しばらくカーシャに付き添っていたゼオンたちであったが、彼女の退院の目処が立っ事を受けて、彼らもホミレートから旅立つと決めた。


 それを伝えるのはアミネの役目となった。


 実質彼女の身の回りの世話をしたのは同姓のアミネだったので、別れの挨拶として話をした。


 決して納得のいった表情ではなかったが、カーシャは今までありがとうとアミネに礼を述べた。


 故郷にでも帰ってみようかなと、最後には笑顔でアミネを送り出してくれた。




 賞金首のステムをどうしたかというと、まだ三人と一緒にいた。


 ロッグディオスが逃げた後、ホミレートの駐屯所は無人となっていたからだ。


 ダメ元で見逃してくれないかと願うステムだったが、それは三人とも無視した。


 手配書が貼り出されていた掲示板がある酒場へ行き、店主に相談してみる。


 すると店主は、ここから南へ下るとウベキアという少し大きな町があるから、そこへ突き出してやるといい、と教えてくれた。


 喜んで三人が酒場を出て行った後、店主はふと思い出す。


「おや…前にも同じ事を聞かれたような…」




 かくして、アミネの馬車にはステムという賞金首が一人追加されて、計四人となった。


 果たして馬車が重くなった事を、彼女の愛馬トズラーダが気付かないはずがない。


 ウベキアへ着くまでだからと老馬をなだめすかすのだが、実はそれだけではなかったのだ。


 大きな分厚い本が十三冊、荷台に載せられていた。


 アミネが古本屋で見つけた、呪術師に関する物である。


 これとてかなりの重量になる。


 結局この町では賞金を受け取れない格好となったので、支払いはヌベシャから貰った報酬から立て替えることとなった。


 アミネはトズラーダは元より、ゼオンやエルスにも頭が上がらない。


「なあ、これって馬車だよな?」


 ステムが余計なことを言う。


 馬が引いている割にはとんでもなく遅い。


 走っている者には確実に抜かれ、歩いている者にも時折抜かれる始末。


 仕方なく、ゼオンとエルスは馬車を降りて、徒歩で馬車と共に歩く。




 さて、この十三冊の本であるが、問題は重さだけではなかった。


 結論から言えば、読めない、のだ。


 文字自体は古代のものといっても、現代で使われているものと似ているので、全く分からないという程でもない。


 だが、どうやら読み方はまるで違っているようなので、誰にも読めない。


 こういう物を研究している学者が何処かにいるだろうと、古本屋の店主が助言を授けてくれた。


 目指すはここから南、ウベキアの町である。










 コルス国、ルーマット村。


 ガーディエフ軍が居候させてもらっている村である。


 仲間の兵を数名殺され、呪術師を三名誘拐された。


 軍の空気は淀んで、重い。


 兵士リャガは、目撃者であるタラテラの町のオパッセの証言と、同じくタラテラで働いているシャラディーの証言をガーディエフへ伝えた。


 リャガは順を追って分かりやすく説明したつもりだが、容易には受け入れ難い内容であるが故、ガーディエフも返答が出来ずにいる。


「その、オパッセとシャラディーはまだタラテラにいるという事か?」


 その間を埋めるべく、ビルトモスが問いかける。


 オパッセは軍の監視対象であり、彼を監視するのが、民間の組織に勤めるシャラディーなのだ。


「その通りです。オパッセはタラテラから外へ出る事を禁じられ、シャラディーはその彼が重罪人と接触するかもしれないので見張っております」

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