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第5章「オパッセの目撃談」【10】

 するとまた頭が二つ、ごとりと落ちる。


 そこでようやく男たちも異常事態てある事に気付いた。


 剣を抜き、女剣士を倒すべく構える。


 だがノネレーテは軽やかに、時折口元に笑みを浮かべる余裕すら見せている。


 相手の剣を簡単に弾く姿は、男と女の腕力の違いなどまるで感じさせなかった。


 そうして防ぐものが無くなった男の首を、何の抵抗も無いかの如くに斬り落とすのだ。


 みるみる生きている男の数が減っていく。


 既に三分のニが首だけになってしまった状況で運良く生きている男たちは確信する、“勝てない”と。


 お頭、と呼ばれていた者もとっくに頭が地面に落ちている。


 こうなればもう、各々が這う這うの体でばらばらの方角へ逃げ出した。


 追いつかれたら間違いなく殺される、必死で馬を走らせるしかなかった。


 どうしてあんな女と出会ってしまったのか、運が極限に悪いのか、誰が、仲間のうちの誰かだろうか?




 逃げようとする男をノネレーテは一人斬ったが、残りはあっちこっちと別の方向へ走っていく。


 あと一人くらいなら追いかければ斬れると、彼女は逃げていく一人に狙いを定めた。


「おおっと、いやいや、いかんいかん」


 今まで散々深追いはするなとパレムに説教を喰らってきた。


 部下を置いてどこかへ行ってしまったら、例えば別働隊に自分たちが襲われるかもしれないとパレムは危惧している。


 部下たちに何かあっては困ると思い直し、ノネレーテは剣を鞘に収めた。






「あっ、帰って来たんじゃないですか?」


 ノネレーテは空馬をぞろぞろと引き連れてチリパギと仲間の元へ戻ってきた。


 男たちの馬の中で、主人を殺されても大人しくしていた数頭を縄で繋いで連れてきたのだ。


 主人の血を浴びて身体が赤くなっている馬を見て、チリパギは顔をしかめ、自分の子供たちにはあまり見るなと釘を刺した。


 ノネレーテは戦利品だと満足してホクホクしている。


「どっちが盗賊なんだか…」


「うん? 何か言ったか?」


「いえいえ、血を洗い流してやれば見映えもして高く売れるでしょう。良い臨時収入となりますな」


「その通りだ。いつでも肉や酒が好きなだけ買えるぞ」


「そろそろ日も暮れてきますから、さっさと出発しましょうか」


 このまま北上すればチリパギの故郷であるホミレートの町に到着する。


 そこが今回の仕事の最終目的地なのだ。








 エルスたちは安宿で部屋を二つ借りて、エルスとゼオンの部屋、アミネの部屋とそれぞれ別れた。


「どうした、ひょっとして目が悪いのか?」


 エルスは何枚かの小さな紙を手にしていた。


 その紙にはゼオンが酒場の掲示板に貼ってあった賞金首の情報を書き写したものが記されていた。


 それをエルスは眉間に皺を寄せたり両目を細めながら眺めていたのだ。


「違います。ゼオンさんの字がくちゃくちゃで読めないんです」


 きっと別の部屋でアミネは眠っている事だろう。


 羨ましすぎる。


「読み方は自由だが、字が読めないのを他人のせいにするのは良くないぞ」


 呆れたエルスは持っていた紙片を空中へ放り投げた。


 それらがひらひらと宙を舞って床に落ちるまで、ゼオンは目で追っていた。


 気が付くとエルスがいなくなっていた。


 彼は紙片を目眩しに、ベッドに潜り込んでいたのだ。


「まったく、しょうのない奴だ」




 馬数頭は、思った以上の高値で売れた。


 入ってみるとホミレートは寂れた雰囲気の町だったので、最悪売れないのではないかと心配したのだが、たまたまチリパギの商人仲間がこの町を訪れていて、馬を全頭引き取ってくれたのだ。


 ノネレーテとその部下十二人は、酒場で浴びるように酒を飲んでいた。


 その内の一人はテーブルに突っ伏し、もう一人は床に転がって眠っていた。


「今回は上手くいきましたな。チリパギは気前がいいし、そのご友人とやらも金払いがいいときたもんだ」


 しばらくは金に困らないとパレムが喜んでいる。


「運が良いというのは偶然じゃない。そこに辿り着くまでに人は徳を積み、幸運を引き寄せるんだ」


 あまり呂律がまわっていない。


「さて、この次はどうしますか?」

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