表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/130

第11章「エギロダの武器」【4】

 だからこそ、見張り役の兵が間を空けている事に違和感を覚えた。


「どうした、何を言い淀んでいるんだ?」


 見張り役は更に首を捻った。


「あ、いや、しかし、見間違いかもしれません」


 何をどう見間違ったのかというのだろう。


「要塞の中へ入っていった連中は、皆鎧を身に着けていました」


「だからどうしたと言うのだ! 鎧ぐらい、誰が着けていても不思議じゃなかろうが!」


 とうとうケベスのイライラが爆発した。


 見張り役は萎縮してしまう。


「ケベス様、ここは…」


 リャガはケベスを見張り役から一番離れた場所まで下がらせた。


「それで、どんな鎧なのだ?」


「…ずいろの…」


「む?」


 すっかり声が小さくなっていたので、よく聞き取れなかった。


「水色の、鎧です」


「………!」


 目を見開いてリャガは振り返った。


 見張り役の声の大きさは変わらなかったので、離れたケベスには何も届いていなかった。


「どうした、隊長?」


「コルス軍です」






 一階まで降りてきていたエギロダは、水色の鎧を纏った兵士十五名を出迎えた。


「ようこそ、コルス正規兵のみなさん。私がここの主人、エギロダでございます」


 エギロダは深々と頭を下げる。


 対してコルス兵の一人が兜を脱ぎ、顔を見せた。


「うむ。私はこの部隊の指揮を務めるナポーヒだ」


 短髪の指揮官はエギロダより背が低い。


 その為か、エギロダはある身体を曲げたままでナポーヒより頭を高い位置に上げぬように気遣っていた。


「ナポーヒ様、此度の長旅お疲れ様でございます!」


「ああ、確かに些か疲れた。早速だが、しばらく休ませてもらうぞ」


「もちろんでございます! 既にみなさんにお休みいただけるよう準備を整えておろます!」


 エギロダが合図を送ると、部下がワラワラと足早にやってきた。


 コルス兵一人につき、部下が一人世話係として荷物を持ったり部屋へ案内したりと。


 指揮官のナポーヒには粗相がないようにと、世話係が三人付けられた。


「いやはや、着いて早々に休憩だと言い出すだなんて、コルス軍も地に落ちましたなあ」


 休憩部屋へ消えていくコルス兵を眺めつつ、エギロダの側近ヒリテンが呆れて、そう呟いた。


「奴らがいる間は余計な事をほざくなよ。後でしっかり働いて貰わにゃならんのだから、今は好きにさせとけ」


「へいへい、酒や肉は山ほど用意してありますから、その辺はお任せくだされ」


「それよりも、奴ら例のアレは持ってきてるのか?」


「奴らの馬車の荷台は既に確認済みですよお。間違いなく、アレを、しかも人数分以上に!」


「ああ、そりゃあ助かるな」


 エギロダはにやりと口を曲げる。


 奥の方からは、コルス兵の笑い声が響いてきた。


 早速宴会が始まっているようだ。






 知らせを聞いたツヴォネディが、岩場の窪みへと急いでやってきた。


「コルス軍が来たというのは、事実か?」


「遠目ではありますが、水色の鎧を身に着けた者が十数名、だと」


 リャガは少し顔が青い。


「これは一体、どういう事だ?」


 ケベスは訳がわからんといった具合。


「エギロダと正規兵が繋がっているという事は、コルス本城が呪術師の誘拐に一枚噛んでいるという事ではないか!」


 流石のツヴォネディからも笑みが消えていた。


「呪術師の件に関しては断定出来んが、両者が繋がっているのは事実だ」


 それは、エギロダの要塞など取るに足らないくらいの障壁であった。


「このまま戦えば、我々はコルス軍を敵に回す事になる」


 ガーディエフ軍七十二名、コルス軍十数名。


 これだけなら、まともに戦っても勝てる。


 だが、戦ってはならない。


 コルス国内において国軍に追われる事になれば、ガーディエフ軍は壊滅の憂き目に遭うのは歴然。


「正規兵が呪術師を引き取りに来たのか、それとも我々への牽制か?」


「分かるか、そんなもん」


 ケベスの言う通り、正規兵の目的が分からない。


 この件にコルス本城が絡んでいるかどうかも不明なのだ。


「困ったわね」


 テネリミも弱気な一言を口にした。


 すると、リャガは立ち上がった。


「情報が必要ですね。私はこれからユドリカへ行ってきます」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ