第29話 異常迷宮 3
山型の迷宮、山頂。ここにはボスである王蜥蜴が出現する。
僕達一行はとうとう山頂に辿り着いた。山頂部は広場のような作りになっており、ボスと戦うのに十分な広さが整えられている。
僕は先導して、ボスエリアに一歩足を踏み入れる。広場の中心に青と赤の光が集まっていく。神力は青白い光だ。赤黒い光、その色は僕の少し昔の記憶を刺激した。
魔力だ。悪魔や魔人が魔法を行使する際に発していた力。憧れた力の特徴を忘れるわけがない。ということはこの一連の異常は悪魔の仕業?
光は次第に生物の姿を形取る。現れたのは王蜥蜴ではない、もっと禍々しい蜥蜴だった。
本来の王蜥蜴は体長が5m程の巨大な蜥蜴だ。今、目の前に現れたのは王蜥蜴のレアボスでもない全身から赤黒い棘を生やした全くの別物。
「ウォーラさん、あれは魔力の影響を受けてます」
「ほう、魔力ってーとあれか。魔神共の力か」
「どうやらそのようですね。はぁぁ。一体どうなってんだか」
「今考えたってしょーがねぇだろう。こいつぶっ倒して先に進めば分かることだ。ちゃっちゃとやっちまえ」
ん?ウォーラ様が獲物を譲るなんて珍しいな。いや、この先に控える異常に念のため備えてるんだろう。
一応、サッと確認と。
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縺ィ縺蜥蜴
種族:幻影 蜥蜴種
階位:繧医s
身体能力:
STR:C VIT:B AGI:D INT:E
神術:
技能:
アクティブ
パッシブ
轣ォ閠先?ァ 豌エ閠先?ァ
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何蜥蜴だこのやろう。文字化けがすごいわ。魔力の影響を受けてしまってるってことだな。奴さんは今にも襲いかかってきそうな雰囲気で身構えてるし、こちらも集中していこう。
「ルー、ラトリ。3人で一気に仕留めるぞ」
「了解!」
「ん」
僕は神力全開で前進、一瞬で化け蜥蜴に接近する。
「うおっと!」
やつの射程に入ったのか体の棘を伸ばして刺突を繰り出してきたので跳躍で躱して化け蜥蜴の真上に移動。
(【強電撃】!)
真上から強力な電撃の神術をお見舞いする。落雷のような一撃が化け蜥蜴の背中に炸裂。感電死とはいかなかったようでまだ息がある。僕は次の神術の準備に入る。
ラトリも援護とばかりに【黒い束縛】を行使し、四本の足を拘束する。動きが封じられている化け蜥蜴に対して、すかさずルーが複数の【光槍】を打ち込む。光の槍は弾かれることなく、化け蜥蜴の体に食い込んだ。
(【岩石弾】!)
僕は空中から落下しながらも続けて土の神術、【岩石弾】を行使。2mほどの大きさの岩石が出現させ、そのまま化け蜥蜴に向かって打ち出す。体の中心部分に激突し、そのまま上から岩石の重みで押さえ込む形になった。僕は岩石の上にうまく着地する。
「ルー!トドメを!」
ルーは地面に這いつくばる化け蜥蜴の顔面に向かって槍を引き絞り、
「至高の刺突ぅ!!」
..締まらない掛け声と共に刺突を繰り出す。槍は見事に化け蜥蜴の額を貫いた。
生き絶えた化け蜥蜴は青と赤の粒子に変わっていく。青白い粒子は僕たちの身体に吸収されていくが、赤黒い粒子は吸収されることなく消えていった。アイテムもドロップしない、完全にバグの存在に成り果ててしまっていたようだ。
「二人ともいい連携だったよ。強くなったね」
「あ、ありがとう」
「ん」
二人を褒めると誇らしげな笑顔を向けてくる。
「お前らまだ気を抜くなよ。こっからが本番だぞ」
腕を組みながらウォーラ様が話しかけてくる。
「そうですね。核の様子を確認しないとです。いきましょうか」
僕は出現した核のある部屋への入り口を見ながら言う。魔力が確認できた以上、悪魔かそれに関係する者が原因であることは間違いない。
この先に何が待っているのか、僕は緊張している自分を奮い立てて、核のある部屋に向かう。
***
核のある部屋に踏み入ると、本来は青白い光を発する迷宮核が赤黒い光に侵食されていた。そして、核の前でこちらを向いて立っている存在を視界に捉える。
黒ずくめのフード付きローブを羽織っており、顔の様子は窺えない。
「ほう。あれを倒してきたのか」
黒ずくめは囁く様に話し始める。
「あれね。それはあんたの仕業?」
僕は分かりきってる事だけど核を指差しながら一応聞いてみる。
「んん。模造物如きと話さなければいけないことにそろそろうんざりしていたんだがな」
模造物?神を模しただけの作り物ってか?見下してくるね。
「尊大な言い方だな。あんた達ってみんなそうなの?」
「達?知っている風な口の聞き方ではないか」
僕を痛めつけたあいつもそうだったけど、こいつらはどうも他者を下に見る傾向があるようだな。
「そうだね。この世界では一番詳しいと自負してるよ」
「何者だ?貴様」
「はい?こっちの質問に答えてくれないのにこっちが質問に答えると思う?随分と低脳なんだな。悪魔って」
馬鹿正直きに教えるわけないだろーが。
僕は煽りながら決定的な言葉を投げかけてみる。
「..ほう。これはこれは。本当に我々の事を知っているようだな。さすがの私も混乱しているよ」
じわっと赤黒い魔力が黒ずくめから滲みだす。そしてローブを脱ぎ捨てその姿を露わにした。
真っ黒い肌、肩口まで伸ばした黒髪に赤い眼、2mを超える高い身長、背中に生える蝙蝠のような翼。
昔、未来で襲われた悪魔と同じ特徴を有した存在だった。ギロっと睨まれた瞬間、凄まじい圧を感じ、身体が硬直する。この感じる圧は神様級だ。
「相変わらず——ぐほっ!」
怖い顔してるねと言うおうとしたらすでに目の前に迫ってきていた悪魔。超速のフックで殴り飛ばされ、そのまま部屋の壁に叩きつけられた。これは効く。
「口の減らない模造物だな。詳しく話を聞きたいところだが」
体勢を立て直そうとする僕に悪魔は掌を向けてくる。
「とりあえず貴様は死ね。【業火球】」
そう詠唱すると悪魔の掌の前に巨大な赤黒い炎の塊が出現し、即座に放ってきた。
僕を飲み込むほどの大きさの火球が一瞬で目の前に迫り、そして目の前が真っ赤に染まった。




