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よくある話 地球消滅

作者: 心根思想

 これはよくある話の一つである。

それは、まぁ数えだしたら面倒くさそうであり、あるあると称される事も多い。

 今回はその中の一つ、世界が滅ぶネタだ。

 壮大、なんてことはない。ほら、あたりを見渡して考えてみると

「そういや、鉄板ネタだな」

なんて感じるだろう。

実のところ世界が滅ぶなんて簡単に起こることではないが、その壮大さが己の想像力をかきたてるのだろう。

 では、そんな鉄板ネタの一つ。地球消滅。

はじまりはじまり



 不意に、テレビをつけた。

一人の食事は寂しかったから。

僕しかいないリビングで一人鍋を突っつくのはなかなかに心にくるものがある。それは今まで家族と共に食べていたからかもしれないし、急に一人になったからでもあるかもしれない。グツグツと煮えるその鍋は僕の心を僕の代わりに表しているようにみえた。

 僕には家族がいる。

優しい母と父、それにかわいい妹とちょっと生意気な弟。

まさに絵に描いたような家族だった。といっても今の時代三人兄弟というのは多いのかもしれないが。

友達を呼んでちょっとしたパーティもひらけるような広さの家。ここまで行くともうつくられたみたい。

なに不自由ない幸せな家庭。

 でも、この国じゃいつ崩れてもおかしくはない。

なに、戦争が始まった訳じゃない。そもそも我が国は戦争しないと公言している。

 ではなにか。

それには我が国に立ち位置が関わってくる。

政治的ではない。国の場所だ。

僕の国は島国であり、地球の岩盤達が集まる稀なところに位地する。そんなところではよく地震や噴火、津波が起こりやすい。

そんな国の名前は、日本。

知ってるだろう。いや、貴方が誰だか知らないが誰もいないはずなのに僕がこんな状況説明をするなんて僕らしくないから。きっとこの説明を聞いているであろう貴方に説明する。

日本、別名地震大国ではいつ大地震が起きても仕方ない。

わかっただろう。

僕の家族は地震の際、バラバラになった。

生きている、とも聞いていないし、遺体が見つかったというのも聞いてない。

だから生きている、と思う事にした。

どうせこの星の残り時間は少し。

人間達による環境の変化が祟ったらしく、後一週間もしないうちにこの地球は二つに割れる。そう、思う。

 僕は環境の変化を感じとるのが異常に容易いらしく、なんとなく、

(あ、世界終わるな)

ってのがわかる。

といっても、僕は一介の学生。

まだまだ義務教育というベールに包まれた子供。

大人達の気をひこうと戯言を言っているのかと、本気にされない。

いや、大人であろうと、なにいってんだこいつ。と馬鹿にされるだろうし、本気にしたらしたでだからどうするっていう話だよな。

 わかってる。わかってた。

だから親にも言わないで、かわいいかわいい妹と弟に少し伝えて外にでて、そして一人山に行きのんびりと歩いてその時を待って、気付いた。

――あれ、妹と弟は?

なんでおいて来ちゃったの?

かわいいかわいい妹で弟なんでしょ?

どうして、だろう。

……わからない。

自分の命が大事だったのか。家族の命がどうでも良かったのか。なんで親に何も言わなかったのか。

わからない。

 グツグツ

鍋が煮える。

鍋の中にもう具材はない。

無意識に食べていたようだ。

『次のニュースです』

心は荒ぶってても頭は興味がないみたいに冷静で、その言葉を聞きとった。

『本日夕方ごろに突如として発生した大地震。

その被害者が五千万人と多い中、新たに発見されました。

えぇ、見つかったのは家族と思われる四人組でまだ幼い子供二人、親と思われる大人二名です。

見つかったのは海岸近くの崖で、何故そのようなところにいたのかは不明です。

これでこの地震による被害者は――』

幼い子供二人と大人二人。

別にそれの何がおかしい、ってわけじゃない。

ただ、家族構成が似てたから。

ただ、似てただけだから。

何も妹や弟ってわけじゃないから。

そう、大丈夫。

……自分が安全だからって他人を心配するなんて、最低だな。

 そうか、僕は自分が尊かったんだ。

だから自分が死なないように動いて、家族といえど他人を捨て置いて。

実に笑える。滑稽だった。

「ハハハ、ありがとう」

「状況整理に付き合ってくれて、お陰でこれからどうするか決めたよ。決めた」

この世界と共に死んでやる。

 かわいいかわいい妹達、弟達。

兄ちゃんがその思い、背負ってあげるからね。


 僕は親が嫌いだ。

僕の生まれた時には兄ちゃんと姉ちゃんが居た、らしい。

会ったことはない。なぜなら僕の生まれた時にはもう絶命してたから。

僕の親というのはクズと呼ばれる部類で一度くっついて子を産んでは消えて、残されてもイタい目みるし、ついてったってヤな思いをする。

僕という生き物の顔は美形と呼ばれる部類らしく、いつかの金稼ぎの道具として母親についてまわった。

段々と生まれては死んでいく妹弟を見て心が傷まない兄がいようか。

でも何度も何度も見ているとそれが日常のように思えて、普通がわからなくなって……。

やがて母は夫を手に入れた。その時は僕はもう数えにして六つ。

常識とは十八歳までの生活によって左右されるらしい。

三分の一が決まってしまった僕には天使のごとく扱われる双子の子を愛でるしかないが、愛がわからない。

 愛がわからないまま世界が終わりそうで、少し涙が流れた。

「なんにも変わらない」

変われない。


 気がついたら鍋に〆のラーメンを入れていて。

お腹はまだまだ空いていて、ラーメンをかきこんで、今度はあったかい涙が流れた。


 その五日後に地球を半分にするような地震が起きたみたいだけど。僕は知らない。

僕は何も知らない。けど、家族が笑ってたならそれでいい。

それでいいと思った。だけ。



 少年は自分を最後の時間で探す事ができた。

彼は世界の終幕を迎える前に気づいちゃって耐えられなかったんだ。

そのまま、天界へと。

沢山のお土産を持って。

なんだか、天使にでもなってるみたいで健やかな顔だった。



めでたしめでたし

鉄板ネタでも、変わり種。

地震というのはいつ起きるのかわからない。

だからこそ彼のような能力があればよかったのに。

環境の変化に気づきやすい。

それにしても何故見つかった家族は崖にいたんだろうね。

生憎と人の心はわからないものでね。

貴方の想像にゆだねるよ。

それが鉄板ネタのいいところだから。

このお話は全てフィクションです。

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