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少し休んだ後はクローケンが側にいて、この世界のことをいろいろ教えてくれた。
この世界は人間と魔族の住む大陸がそれぞれ分かれている。
魔族の国は魔王サイアスを頂点として、人間の口は人間の王様を頂点としてその下はどちらも貴族、平民で構成されているそうだ。
ちなみにケビンは貴族だがクローケンは元平民とのこと。医療に関する魔法を極めて功績を出し貴族の位を与えられたのだとか。
平民と貴族と階級は別れているものの、努力すれば爵位を貰えたりそれ相応の褒美を貰えるという実力主義社会の様だ。
そうなったのはサイアスが魔王になってからで、以前は血筋で役職や階級が決まり固定されていたそうだ。
サイアスが魔王になってから、魔族の国は大きく発展した。そう考えれば彼は良い王様なのだろう。
…………父親としては最低だが。
「ちなみに、今まで私みたいに誰かに憑依したとか、物語に出てくるみたいに別の世界から召喚された人はいたの？」
「100年に2、3人くらいの感覚でいるらしいぞ。ただ、今まで確認されたのは人間の国だけで魔族の国では聞いたことがないな」
「その人達は元の世界に戻れた！？」
食い気味になってしまった私の気持ちを察したのだろう。
クローケンは眉を下げて首を横に振る。
「いや、残念ながら戻ったという記録はない」
「…………そう。あ、じゃあ召喚は？召喚出来るなら戻すことも……」
「召喚の話もあるにはあるが、この世界に引き寄せることは出来ても送り出すことは出来ないんだ」
「やっぱりそう都合よくいかないか」
戻る方法はないという事実に肩を落とす。
予想はしていたがもしかしたらという思いもあった。
「……じゃあ、私はこれからどうなるの？」
この体はルヴィアナの物だ。
あんな親でも娘の体に他人が入り続けてるのは嫌だろう。私を偽物と殺そうとしたくらいだし。
「もしかして本当に殺され」
「そうはさせねぇよ」
私の言葉を遮ってクローケンが否定した。
「……今お嬢さんの魂まで居なくなったら、お嬢の体は死んじまう。だからいくら旦那相手でも、俺が殺させたりしねぇ。お嬢さんには申し訳ねぇが、どうか最期まで生きちゃくれねぇか。お嬢の成長する姿を……どうか見せてほしい。俺の自己満足に過ぎないはわかっているが幸せになったお嬢の姿を見たいんだ。この通りだ、頼む！！」
クローケンは床に両手の拳をつくと深々と頭を下げた。
必死さは凄く伝わってくる。
だけど、ルヴィアナはもういない。器だけでも幸せになって欲しいと思うのはクローケンの言う通り完全に自己満足に過ぎないだろう。
それをわかっていても、彼はルヴィアナが幸せな姿を見たいと願っているのだ。
だが、それを果たしてサイアスが許可するだろうか。
「……少し、考えさせて」
急な申し出にそれしか答えられなかった。
