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クローケンに案内され、辿り着いたのは重厚なドアの前だ。ここがサイアスの執務室らしい。

というかこの家は広すぎる。

私のいた部屋から階段を上り、廊下を数分てくてくと歩いてようやく付いた。

クローケンが抱っこを申し出てくれたが恥ずかしかったのでお断りした。今、素直に甘えておけばよかったも少し後悔してる。体が弱っていたせいもあり、足が産まれたての子鹿の様にぷるぷるしているから。

だが、そんなことを気にしていてはあのバカ親に説教なんて出来ない。

私はクローケンにドアをノックしてもらい返事と共に開いた部屋に飛び込んだ。


「……何の様だ。自ら殺されに来たのか偽物」


あまりの言い草に頭に血が上る。


「クローケンさんから話は聞かせてもらったわ!私は確かにあなたの娘じゃない。この体に乗り移ってしまった他人よ。でもね、あなたの娘の代弁ならできる、私も親に正しく愛されなかったから」


サイアスが私の言葉に目を見開き眉を釣り上げた。


「分かったことを言うな!これからだったんだ、私はルヴィアナを愛そうと、心を入れ替えようとしていた!謝ろうとしてた、その矢先だったんだ……ルヴィアナは……っ」


予想外の言葉に驚いてクローケンを振り返ると彼は神妙な面持ちで頷く。

サイアスは態度を改めようとしていた。だが、それはもう手遅れだったのだ。


「……遅すぎるのよこのバカ親っ!」

「なっ……!?ば、ばかだとっ!?」

「そうよ!馬鹿よ、大馬鹿よ!!あんたがもっと……もっと早くこの子に、ルヴィアナちゃんに目を向けていたら彼女は自ら死を選んだりしなかった!」


さっき首を絞められたから声を出すたび喉が痛い。

それでも私は言葉にするのを止めなかった。


「子供はね、大人の言葉を素直に信じてしまうの。それが大好きな父親からの言葉なら尚更よ。一度口から出た言葉は二度と戻らない!あなたの言葉でルヴィアナちゃんがどんなに傷付いたか、わからなかった!?まだ、まだまだ、これから楽しいことも嬉しいこともたくさんあったのに、あんたの言葉がルヴィアナちゃんから命を奪ったのよ!子供だからわからない?いいえ、分かるわ!それでも親を慕って愛されたいと願うのが子供なの、それしか生きる術を知らないのよ!!父親なら自分のことばっかりじゃなくて子供にも目を向けて、もっと早く行動に移しなさいよ!この馬鹿親!」


私もルヴィアナと同じで愛されたかった。

母親に虐待を繰り返されても大好きだった。

そう刷り込まれて育ったと言われれば否定はできない。

でも、どんなに刃物の様な言葉をぶつけられても愛したいと思っていた。

だって、母が虐待をするということは母も祖母から同じように苦しめられてきたということだから。

虐待を自分が止めることで、母も救われるんじゃないかなんて思ってた。

結局、何度話しをしても言葉を紡いでも分かり合えることはなくて最期まで望んだ愛は得られなかったけど。

ルヴィアナの気持ちを代弁するつもりが、いつの間にか自分の感情が混ざってしまい悔し気持ちが涙になって頬を濡らす。

服の袖で涙をぐいっと拭い私はまっすぐにサイアスを睨んだ。



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