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聞き間違えるはずもない声。


「…………パパ……?」


バラバラに切られた髪の隙間から、冷たい目でリーアとサーリを睨むサイアスが見えた。


「熱い熱いっ!!消して消してぇっ!」

「痛い痛い痛いよおぉっ!」

「うるさい」


熱さと痛みで絶叫する2人をサイアスは遠慮なく蹴飛ばした。


「ぎゃっ!」

「うぐっ」


蹴飛ばしただけのはずなのに2人は車がぶつかった時の様な勢いで思い切り石の壁に叩き付けられた。

リーアの髪はいつの間にか全て燃え消えていて頭皮も赤黒く焼け爛れている。

そしてサーリは腕から血が止まらず倒れた場所に血溜まりを作っていた。

2人とも壁に打ち付けられた衝撃で意識を失っているようだ。


「ヴィア!!……こんな姿になって……っ」


サイアスは私を見つけるとぎゅっと強く抱きしめる。

その温もりに助かったのだとホッとした。

私の手足を縛っていたロープを解き無惨に切り落とされた髪を撫でるサイアス。その表情はまさに娘を助けるために必死で駆け付けた父親の姿だった。


「旦那!……お嬢さん!ここにいたのか!」


サイアスより遅れてやってきたクローケンも私を懸命に探してくれていたようで、汗だくだった。

髪を切られた私を見て、まるで自分が傷付けられた様に辛そうな顔をする。


「クローケン、そこの罪人どもを牢にぶち込め。簡単には殺すな、死んだほうがマシだと思うような罰を与えてやる」

「……わかった」


クローケンは魔法で大きな水の塊を出すとそのに気絶した2人を押し込む。


「……旦那、そこの子供はどうする?」

「っ……!」


コルトがビクリと肩を震わせた。


「……一緒に連れていけ。怪我をしてるようなら手当を」

「わかった。ボウズ、歩けるか?」

「う、うんっ!」


コルトはチラチラとこちらを気にしながらクローケンの元に掛けて行く。

サイアスに抱き締められたまま私はコルトに手を振ると、彼も振り返してくれた。

クローケンが気絶したままの2人とコルトを連れ出し、サイアスが私を抱き上げる。


「ヴィア、帰ろう」

「ん……」


優しく声をかけられてぎゅっとしがみついた。


「あ、セーラは!?」

「無事だ。すぐに手当を受けて命に別条はない」

「よかった……あ、あと誘拐犯の人!」

「既に捉えてある。お前を誘拐した罪として打ち首にするつもりだ」

「駄目っ!あの人、コルトが……弟が誘拐されて仕方なく私を誘拐したの!だから」

「減刑しろと?」


問われてこくこくと頷く。


「あいつが誘拐などせずにすぐに衛兵なり騎士なりに助けを求めていれば、お前はこんな目にあうことなどなかった。それでもヤツを庇うのか?」

「家族を助けたかったからよ。ルヴィアナちゃんの髪を切られたのは申し訳ないけど……コルト私を助けようとしてくれた、だから。あの子から家族を奪わないで欲しいの」


そう懇願すればサイアスはグッと眉間に深いシワを寄せる。


「なぜお前が負い目を感じる。お前をこんな姿にしたのはあの愚か者どもだ。自分を卑下する必要はない。なぜ他人のことばかり気にする……もっと、自分の体を大事にしろ」

「あ、そうだよね。ごめんなさい……ルヴィアナちゃんの体を危ない目にあわせて……」


この体は私のものじゃない。

サイアスにとっては大事な娘の体だ。もっと気をつけなければならない。

そう思い謝罪言葉を口にすると


「違う!」


怒鳴られた。

思わずビクリと肩が震える。


「違う。そうではない。ルヴィアナは確かに大事だ、だが私はヴィア。お前も同じくらい大切だ。お前は私の娘だろう」

「……娘」


確かに私はサイアスを『パパ』と呼んでいる。

だけど心のどこかで自分はルヴィアナの偽物だからと一線引いていた。

いくら本物の娘の体で生きていたとしても、別人。別の魂。本物にはなれない。

私はルヴィアナの願いを叶えるための代役に過ぎないと思っていた。

だけどサイアスは違った。

ルヴィアナと私をそれぞれ別の娘として愛してくれていたのだ。

本当の親にも愛してもらえなかった私を、娘と言ってくれた。


「……パパ」

「あぁ」


そう呼べば微笑み抱き締めてくれる。


「パパぁ……」

「ヴィア」


こんなことで泣くなんて情けないと思いながらもボロボロと涙がこぼれ落ちる。泣きながら私はサイアスにしがみついた。


「こ、怖かった……私のせいで、コルトが傷つけられたらどうしようって……私のせいでっ、セーラが死んじゃったらどうしようって……ずっと怖かったっ」


嗚咽を漏らし顔を涙でぐちゃぐちゃにしながら泣く私の頭をサイアスは優しく撫で続ける。


「ヴィアのせいじゃない。もう大丈夫だ……生きていて、良かった」

「うん、っ……うんっ」


『もう大丈夫』、その言葉は私の心を温かく溶かすようだった。


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