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リーアは笑いながらサーリに何か手渡す。
それが何か認識する前にザクリと音がして黒い物が地面に散らばる。
それは私の、ルヴィアナの髪だった。
リーアが渡したそれは大きな裁ち鋏だ。
「ふふふ、なんて無様で哀れなのかしら」
「あははっ、ようやく見れるお姿になったじゃないですか身の程知らずのルヴィアナ様」
ジャキンジャキンと髪を切り落としながらゲラゲラと笑うリーアとサーリ。
私はただ、黙って耐えていた。
「ヴィアっ」
コルトが震えながら私を助けようと立ち上がろうとするが首を軽く横に振り止める。
心配してくるのはありがたい、けど駄目だ。サーリはハサミを持っている。
もしコルトがセーラのように刺されたら、と考えると自分の髪を切られるよりも怖い。髪はまた伸ばせばいいから、まだ平気だ。
それにこのくらい、殴られたり蹴飛ばされたりするよりはなんてことない。
ただひとつだけ気になるとすれば。
(ごめんね、ルヴィアナ……あなたの綺麗な髪なのに……でもコルトに怪我をさせたくないの。許して……)
ルヴィアナに申し訳なかった。せっかくの綺麗な黒髪だったのに。
黒髪は既に肩のあたりまで切られている。元の長さに戻すには時間がかかるだろう。
「いっそのこと、髪をすべて剃り上げてしまいましょう!きっと見ものですわ!」
「さすがリーア様ですわ、いますぐに……ぎゃあぁあっ!?」
先程まで上機嫌で私の髪を切り落としていたサーリが突然悲鳴を上げた。
驚いて顔を上げるとハサミをもっていたサーリの腕が肘からごっそりなくなっている。
鋭利な刃物で一瞬で切り離したみたいに綺麗に切断されたその腕から、ぼたぼたと血が落ちていた。
「あぁ、痛いっ、リーア様!私の腕っ、うでがぁっ!」
「近寄らないで!ドレスが汚れるでしょうっ!……ひいっ!?」
急に腕を無くしたサーリが助けを求めて駆け寄ればリーアは後退る。しかしその瞬間、彼女の頭に火がついた。
鼻につく匂いと共にプラチナブロンドの髪が見る見るうちに燃えていく。
「わたしくしの髪がっ……!熱い熱いいぃっ!」
リーアは必死に逃れようと暴れるが、まるで炎は生きているかのように彼女にまとわりついている。
「愚か者どもが」
ふと、低く冷たい声がした。




