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「パンはもういいのか?サラダはどうだ」

「間に合ってます」


落ち着いたサイアスは私を席に戻すと何事もなかったかのように食事を薦める。既にパンを2つも食べた私はお腹いっぱいだ。

きっとルヴィアナに出来なかったことを私にしようとしてるのだろう。

身代わりだとしても、それで少しでもルヴィアナの望む幸せにサイアスが近付けるのなら構わない。

構わない……けど、食べ物ばかり薦められても困る。

ルヴィアナの体を太らせるわけにはいかない。


「子供の体は大人と違ってそんなに食べられないの」

「そう、なのか」


サイアスが申し訳無さそうに俯く。

きっと何も知ろうとしてこなかった自分を後悔しているのだろう。


「ところで魔王様。私のこれからについて話がしたいんだけど」

「…………魔王、様か」

「何?」


呼び方が不満なのだろうか。

臣下でも魔族でもないただの人間に魔王様とは呼ばれたくないのか。とはいえいきなり名前で呼ぶのも失礼な気がする。


「じゃあお兄さん?」


サイアスの見た目は若いからおじさんと呼ぶにはまだ早いと思い、そう呼べばなんとも言えない顔された。これも違うらしい。


「言いたいことがあるならはっきり言って」


察してくれ、みたいな顔をされても私は心を読む魔法なんて使えないのだから無理な話だ。


「………………と、……いか?」

「声が小さい。なに?」


あまりに小さな声過ぎて聞こえなかったので指摘するとビクリとサイアスの肩が揺れる。

この魔王、私が思うより小心者か?それとも私がルヴィアナの姿をしてるから接し方が掴めなくて困惑してるのか……多分後者だ。

だとしたら私が手伝ってあげるしかない。

サイアスの事を他でもないルヴィアナ本人から任されているのだから。


「父と、呼んではくれないか……?」


今度ははっきりと聞こえたその言葉に悩む。


「私、外見はルヴィアナちゃんだけど中身はあなたの娘じゃないのよ」

「分かっている……。ルヴィアナはもう、居ない……私はその穴をお前で埋めようとしている。あれだけ目をそらしておきながら、自分勝手なのは理解している。それでも……それでも私は……娘が、恋しいんだ」


悲しげな顔をされてしまうと、なんとかしてやりたいと思ってしまうあたり私はお人好しなのだろう。


「…………分かった。ルヴィアナちゃんからもあなたのことを頼まれてるし、私はルヴィアナちゃんの体で生きるって決めたから。今日からよろしく、お父さん」

「……!あぁ、ありがとう」


体はルヴィアナのものだから私もルヴィアナとして扱われるのだろうか?

ルヴィアナ本人に申し訳ない気もする。

そんなことを考えているとサイアスが再び口を開いた。


「その、お前が嫌でなければ……名前を、与えてもいいだろうか?」

「名前?」

「ルヴィアナの体で生きる以上、周りからはルヴィアナとして扱われるだろう。だが私にとってルヴィアナはルヴィアナで、お前はお前だ。だから別の名前が必要だと……元の名前が良ければ、教えてくれればそう呼ぶ。ただ、人前ではルヴィアナと呼ぶことになるが」


元の名前と言ってもこの世界に馴染めるような名前じゃない。

かと言ってサイアスが私をルヴィアナと呼ぶのはなにか違う。体がルヴィアナだから仕方ないとは思うけど。

だから別に名前があるならその方がいいかもしれない。


「そうね、新しい名前を貰えるならその方がいいかも……」

「そうか!」


サイアスの顔に喜びの色が浮かぶ。

犬の尻尾の幻覚が見えた。


「なら今日中に考える、楽しみにしていろ」


幻覚の尻尾をブンブンと振りながらサイアスは私の新しい名前を考えると言って部屋を出ていった。

絆された訳ではないが、少しだけ可愛いと思ってしまった。



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