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コミュ障キモヲタ少年がエリート騎士団にやってきた。⑧

 

         第8話


  「ラームット・アロエ・クラリネ」







「あ、あの、じ、自己紹介を。僕はロイ・マクエルで16歳。に、西側にしがわの国から来ました。ちなみにカバンの中は着替えと本しか入ってな、ないから」


「!・・・・わ、私は、ラームット・アロエ・クラリネ! 16です。こっちは一緒に来たランカ。さ、さっきはあの、ごめんなさい! か、勘違かんちがいからあんな事。わ、私き、昨日から宿舎しゅくしゃにきて、あ、ひ、ひぃぃぃ!! ・・・いや・・いやぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」



【針のむしろ】というたとえがある。


 ツラい場所にいることや批判ひはん非難ひなんの目にさらされていることの例えたっだはず。

 だがあの例えには上位じょうい互換ごかんが必要だろうと思う。なんていうの? 視殺しさつおり? とか集団しゅうだん呪怨じゅおん? とか・・・・・なにも例えてはいなかった。







「・・・と、言う訳だ。この男は侵入者でも変質者でもない。君たちと同期の近衛騎士候補生である。全て勘違いから起きた事で双方とも被害は軽微けいびであることから、軍としてこれ以上の問題追求はせず不問ふもんとした。改めて自己紹介を。ロイ」


「ロ、ロイ・マクエルです。西側の国からき、来ました。16歳です。よ、よろしくお願いします」


 師団事務所でのドッキリ☆ネタバラシの後、部屋に荷物を置くやいなやルーズリッター団長とリンダ寮長に連れてこられたのは候補生宿舎の奥にある大部屋だった。

 そこには30人程の女の子たちが集められており簡単な事件の説明と僕をさらし首に・・・いや違った、自己紹介の場となっていた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 ルーズリッター団長の説明は理路りろ整然せいぜんとしていて解りやすいものだった。だが部屋をおおうのは完全に凍りついた空気。さ、寒い。ツンドラ地帯に移住する準備は万全です・・。まあ、たとえこちらからどんな言葉を投げ掛けようと彼女達の心を溶かせはしないと思う。何故なぜかって?


「うっ、ひっく、うう、、」「大丈夫よクラリネ。落ち着いて。もうあんなにコトはされないから」「全てアイツが元凶げんきょう。私達まであのような恥ずかしい目を」


 クラリネ三人組のすすり泣きや健気けなげはげましが大部屋奥からしっかりと室内に聞こえている。【女性医療機関】での検査の事を言っているのだろうが、どう聞いても僕が何かしたようにしか聞こえない。クラリネはともかく取り巻きの二人はワザとあんな言い回ししてないか?


 ルーズリッター団長から聞いたのだがあの二人はクラリネ付きのメイドだったそうだ。クラリネが近衛騎士候補生になるというのでいっしょに入団したらしい。



『ハイネ・フローレス』(16歳)元クラリネ付きメイド。世話好きで口数が多い。男性不信。


『ルビス・ドーター』(16歳)元クラリネ付きメイド。クールで口数が少ない。M気あり。




「アッハッハッハッハッハッハッ、きらわれてるなロイ・マクエル。コレは色々と大変だぞ」


「お、面白おもしろがらない下さい、団長。そ、そりゃ反対をガン無視の入団ですから。それと・・・」


「?」


「ぼ、僕はハブられても慣れてるんで大丈夫ですけど、クラ、クラリネは僕と同室ですからね。さっきも顔を会わせてすぐ大絶叫だいぜっきょうからの絶対ぜったい拒否きょひモードっスよ?ちょっと気のどく過ぎるというか・・・」


 最初はキモがられても少し話をできるかなと思ったんだけど、なんだろう?目を見ると急変きゅうへんしておびえ始めたんだよ。・・・やらしい視線は送ってないよ。ほ、ほんとですよ?


「なんだ。しっかり他人たにんを思いやれるじゃないか?」


「これならしばらく彼女を任せてもいいと思います」


「???」


 なにを言っちゃってるの、この二人? 団長はガサツだからいいとしてリンダさん。あなたついさっき僕と大乱闘スマッ○ュブラ○ーズになってましたよね?まかせる相手あいて完全に間違ってますよ?異世界の例えまで出させないで下さい。


 ここは受け入れたら駄目だめだ! 引いても駄目だ! 同室解消の言質げんちをとれ! いっそついでに近衛騎士団の団長も辞退するんだ! 同時にあの恐ろしい皇女からも離れるんだ! 一石三鳥じゃないか! なぜもっと早く気づかなかったんだ!! いや待てよ。それよりなんだか働いたら負けかな、まで思ってきたぞ。こりゃいかん。



「で、でもですよ? この拒否きょひモードじゃ僕との同室生活でもクラリネはストレスマッハですよ? 訓練にも支障がでます。ここは非常に、ひじょ〜〜〜にぃ! 残念ですが僕がですね・・・」


「だったら私の部屋に来るか? ベッドは1つしかないから一緒に寝ることになるが? どうだ?んん?」


「っ! ルーズリッター団長! それはなりません!」


 いやいやもう『私の部屋に来る?』ネタはいいよ。前回やってるから。三段落ちとか笑えない。あまりにワンパターン過ぎて僕より早くリンダさんがツッコミしてるじゃん。そんな艶めかしい目で見ないで下さい。

 ・・・・・・・・ん?あれ?マジでマジな誘い? またまた〜〜・・・・・え? なに? あれ? ぼくのへんじまちですか?


 周りの女の子達からのナイフの様な視線しせんが飛んでくる。解ってるんだけどね〜。コレ完全に試してますよね〜。解ってるんだけど一生に一度あるかないか、いや、これからも絶対ないであろう絶世ぜっせいの美女からのおさそいであります!ほら1%、いや0.1%でも万が一、本気ほんきだったら。とかさ。思うじゃん?夢見たいじゃん?男の子だったらさ?  


 痛い痛いいたたた・・・!? リンダさん足踏んでる踏んでる! 何やってんの? 思わせぶりなこと止めてください。トイレで羽やすめだけは選びませんよ。僕にも夢を見させて下さい! この夢を終わらせないで下さい!!












 ────私の悪夢は何も終わってはいなかった。




 あの出来事・・・からもう一月半がたった。最初の頃は目を閉じるとすぐにあの男の顔が浮かんだ。優しい目で語り掛けてきた男はただの悪魔だった。私を自分の欲望の贄にしようと、いや、され・・・・・・・・・・ラナイ。

 何度も大声デ叫んだ。夢であって欲しいと悪夢であって欲しいト願った。でもあの、醜悪しゅうあくゆがンダみも、おぞましい声も、にごりきった目も、頭から消えなかった。

 気がくるイそウだった。一睡いっすいも出来ず、食事も出来ず、死ぬ事が何度も頭ニ浮かんだ。死んだら忘れられる。楽になれる。いやだいやだあやだ。


 何度か気が付くとハイネやルビスが泣きながら私をおさえていた事があった。そのたびに泣いた。三人で泣いた。

 そして2週間が過ぎ、ついに私が死を選ぶことはなかった。あの悪魔は死んでいると聞かされた。少し楽になれた。部屋に引きもる私の為にエリザヴェータ様やリンダさんがお見舞みまいに来てくれた。けがらわしい私でも優しい笑顔で話してくれた。うれしかった。


 一月もたった頃は普通に近い生活が送れる様になった。悪夢はうすれていった。女性医療機関への受診じゅしんうながされたが気が進まなかった。

 あの出来事を思い出したくないし、ふしだらな女とうわさを立てられるのも嫌だった。私にはエリザヴェータ様の近衛騎士になる夢がある。汚れた女では資格がない。栄えある近衛騎士になるのだから。


 さらに半月がすぎ、予定通り私は候補生宿舎に入居した。もう大丈夫。もうアレは終わってる事なんだ。

 それにここは女の子しかいない。父も母も、姉様まで心配してたけど大丈夫。目さえ見なければもう男の人とも普通に話せるんだ。ランカもいる。私は強くなるんだ。エリザヴェータ様を守るために誰よりも強く、誰よりも・・・。









 ──────────── そしてあの日。


 私の部屋に。あの子が入ってきた。ヘラヘラと笑いながら話しかけてきた。キモチワルイ。




 え? え? なに? 誰? 男の子? なんで? どうして私の部屋ニ、?





・・・薄気味うすきみわるい笑顔でにじり寄ってきた。鳥肌とりはだが立った。 




 ・・・・な、ナニをするキナの? そのやさな瞳で、私にナニをするとイウノ?




 アレは、悪夢はマダツヅイてイるの・・・?




 オワラナイ。




 オワラナイ。オワラナイ。




 オワラナイ。オワラナイ。オワラナイ。




 ヤッパリ何もオワラナイ・・・・・・・・。





 そうカ。あの子の目はあノ・・・悪魔の濁った目に似てイるんダ。優しく見える瞳は、ニセものに違いない。














 殺シタホウガが・・・イイ。アレは悪魔ダカラ。


最後までお読み頂き有難う御座いました。


今回のお話で第一部が完結になります。

この「なろう小説らしからぬ嫌われ主人公」に

ここまでお付き合い頂きました事お礼申し上げます。


次回からの第二部は舞台が変わります。

宜しければ引き続き「超絶!コミュ障騎士!」を

お願いします〜。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コミュ障編、面白かったです。 ロイ君の心情描写がいいですね。 強いロイ君もいい。 これからが楽しみです。
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