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ロイ・マクエル受難の日々⑧

今回はコメディー回です。


         第30話


        「恐怖!夢工房」




 この世に生きるあらゆる人々にとって、夢というものは必ず存在する。


 万人にとっての代表的な夢は『大金持ちである』事であろう。人にとってのあらゆる欲望はほぼ全て、お金が解決してくれると言っても過言かごんではない。逆にお金がないと何もできないと言ってもいいぐらいだ。たくさんのお金を持っていればいるほどたくさんの夢をかなえられる。皆がお金持ちである事を望む欲求は、当然理解できる。その夢を具現化するならば『生まれ変わったら資産家令嬢』『結婚した相手は大金持ち』などだろう。

 では次に求められる夢とは何があるのか。よく聞くのが『最強と言われるほどの強さ』である。今は戦乱の世だ。強さを備えていれば自分の腕ひとつで望むものが手に入り、あるいは守り抜くことができる。なるほど強さとは、人生における望む場所に行ける切符きっぷのようなものだ。十二分に夢としての価値はある。その夢を具現化するならば『生まれ変わったら何故なぜかチートで最強』『追放されたのに意外なスキルで俺TUEEE』などだろう。

 さらに上げるとするならばどんな夢があるのだろうか?世の中には男と女がいる。本能であるのかないのか、無意識であるのかないのか、常に人は自分より上位に位置する異性を追い求める。誰でもいいというわけではないのだ。容姿ようしに優れたものや自分を幸せにしてくれそうな相手など、みずからの 姿形すがたかたちかいりみずに人は高望たかのぞみに過ぎるパートナーを夢でも見るかのように探すのである。その夢を具現化するならば『皆に嫌われている令嬢なのに王子様に惚れられる』『普通の顔の僕が何故なぜか突然、美少女ハーレムに召喚される』などだろう。


例に上げた夢以外でも数多あまたの人々が数多あまたな夢を思い描く。そしてその中にはけっして万人から理解はされない夢もある。理解されないからといって例に挙げた夢より価値がないなどということはない。その夢に価値があるかどうかは自らが決めればいいのだ。そして同じ夢を描くものと夢について語り、作り、育てれば良い。







「・・・・・・・・・というわけじゃ。分かったのなら夢を追い求める儂の手伝いをせい。ロイ」


「え?何?全然意味わかんない?長々と語り出したと思ったら何やらせる気なの?朝早くにこの丸太小屋の入り口の上に『夢工房』って看板付けてたよね?何する気なの?悪い予感以外何もないんだけど」



 大資産家ハウンズ家の家出いえでなん ハウンズ・ロイ・マクエル。同じくハウンズ家の放浪ほうろう隠居いんきょハウンズ・ロビン・ガトリン 。ふたりは現在迷いの森奥深くにある丸太小屋の入口付近で話をしていた。


 僕のじいちゃん、ロビン・ガトリンは放浪ほうろうへきがある。元々は僕とじいちゃんで住み始めた丸太小屋なのだが、徐々にじいちゃんは小屋を空けるようになり僕はこの2年間ほぼぼっちで小屋に住み続けていた。もう13歳になる。

 ただ、じいちゃんは一ヶ月に一度はこの丸太小屋に帰ってきて僕に稽古けいこをつけてくれていた。


 今回もいつものようにブラッと帰宅しただけだと思っていたのだがどうも様子がおかしい。

息遣いが荒く鼻息も荒い、視線はキョロキョロと落ち着かず何より背中に珍しくリュックサックを背負っていた。



 明け方に何やら『カンカン』音がするので扉を開けるとじいちゃんが仁王におう立ち。そして長い講釈。ドアの上には看板『夢工房』だ。やはりあやしすぎる。もはや犯罪臭しかしてこない。


「夢を追うので手伝いしろ」・・・・なるほどなるほど。







 嘘だっ!!!!!!!!!!!!!!!!







 決してクビが痒いわけではない!僕の五感が警鐘けいしょうを鳴らしている。この案件は絶対関わってはいけない。じいちゃんの目が爛々(らんらん)と輝いている。ゴクリと生唾を飲み込む、こんなじいちゃん初めて見るよ。後ろに背負うリュックサック・・・あれは、ヤバい。何かが入っている、パンドラの箱に違いない。何時いつも手ぶらスタイルのじいちゃんが荷物を持っているのだ。



 ・・・・・・・三十六計逃げるにかず。



 僕は密かに左手に持っていた小石を指弾のように弾き出した。『カツン』と異質な小高い音が部屋奥から響く。じいちゃんの視線が僕かられたその一瞬、その目に猫騙ねこだましを仕掛けてじいちゃんの左脇をすり抜けるようにドアから外に脱出する。成功だ。音と光、瞬時にニ感を狂わせての脱出劇。ボンドさん、僕が後を継ぎます!ゼロゼロマクエル危機一髪!満員御礼!ありがとうございますありがとうございます。




『ヒュガッッ』


 うおっ!!?あっぶっなぁ・・・。




 目の前を太い棒がさえぎる様に突き出される。僕は丸太小屋のドアを出たところで思わぬ足止めをった。ちっ!二人いた。

 完全に盲点もうてんだった。じいちゃんがこの小屋に他人を連れて来た事はない。やけにアッサリ脇を抜かせてくれたと思ったらもう一人いたってわけか。冷や汗がほほつたう。先週巨大熊と素手でやり合った時と同等の緊張感が襲う。この可笑おかしなマスクを被った人、強い。・・・でも何故か知っている人の様な気が。


「ロイ様、、くん。何も心配はいらない。怖いとかキモいとかを感じるのは最初だけだ。君もぐに我等われらの同士として幸福感にひたれる様になるさ。デュフフフ」


 なるほど。この二人は僕に幸せを運ぶ使者だったのか・・・。








 嘘だっ!!!!!!!!!!!!!!!!








 信じる要素はマジカルゼロ!オブザエンド。


 もはやなりふりかまっていられない!このマスクメンに魔空まくう空間くうかんに引きり込まれる前に蒸着じょうちゃくだ!いや脱出だ!

 両腕を地面に向けて振り抜く、そでに仕込んでいた煙幕弾が地面に当たり炸裂さくれつし周囲にけむりが立ち込める。ふはははは!こんなこともあろうかと!準備に抜かりはない!


「アバヨ〜とっつぁ〜ん。いやさ、じいちゃ〜ん。また会おう!」


 僕は煙におおわれていない上空からの逃走を試みるため飛び上がる。だが、これこそが罠だった!




 三方から(・・・・)一斉にあみが投げ付けられる。自由の効かない空中では投げ網をかわす事など不可能だ。僕は3つの網にからめ取られる。してやられた。見動きが取れない僕はすべもなく地面に落下した。



「手こずらせてくれたでゴザルなー、ロイ氏。でも必ず最後は空に飛び上がると信じていたでゴザルよ。ニンニン」



 起き上がろうとする僕の前に仮面の紳士が立ちふさがる。勿論もちろんタキシードは着ていない。おまけにかなり残念な言葉使いだ。仮面で隠してあるので顔は見えないが、聞き覚えのある声である。



「・・・・・・・・・何をやってるの?ハウンズ・マーク・ザインにいさん」



「・・・君は闘いの要所要所で、特に手練てだれ相手に劣勢になった時は跳躍を使う。そうでござろう?ロイ氏?」



 ロイはえてフルネームで話し掛けたがその仮面の男は問いかけに答える事は無く、冷静にロイ・マクエルの戦法の弱点を指摘する。良く観察している。



 だからこそロイには兄であると確信が持てた。かなり久しぶりに会ったのだが、この人は ロイ・マクエルの兄で、ハウンズ家次男のハウンズ・マーク・ザインで間違いないはずだ。


 文武両道の天才で、優しい兄ではある。ただ、欠点や失敗があれば分析や対策を病的な程に考え込むタイプで、会う度に反論の余地のない説教をくらうのでロイは苦手にしている。話をすると疲れる相手なのである。

 なんなら誰と話しても疲れるまである。よって結論はぼっち生活とは至高の・・・・・・・・長くなるのでやめよう。



 それにしてもトンデモ無い再会もあったものである。



 ちなみにじいちゃん以外の二人はそれぞれマスクと仮面を着けている。凄い威圧感だ。この三人組はここで仮面舞踏会でも始める気なのか?それともこの奇行をSHYな言い訳で仮面に隠すつもりなのだろうか・・・・・・・・・。

 いやいやいや待て待て、顔隠してても何も隠せてないから!むしろ狂った何かをさらけ出してるから!あなた達の引退セレモニーを今すぐ希望します!




「ほっほっほっほっ」

「デュフフフフフフ」

「ニントモカントモ」




 解説に困るコラボが繰り広げるられている夢工房の前は、もはや理解不能な魔界と化していた。








コラボ・・・?

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