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才能は流星魔法  作者: 神無月 紅
異世界へ

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0097話

 ソフィアたちが馬車で立ち去ると、ベヒモスの骨のある場所に残った黎明の覇者たちはそれぞれ行動を開始する。

 そんな中で最初に行われたのは、当然ながら降伏してきた複数の勢力に対して話をすることだった。


「じゃあ、このまま俺たちはここに残れっていうのか?」


 黎明の覇者に降伏した勢力の一つを率いている人物が、そんな風に言ってくる。

 その口調が少し強気なのは、攻めて来た相手との戦いで勝利をした……というのもあるが、それ以上にイオとソフィアの二人が馬車でドレミナに向かったのを理解しているからだろう。

 流星魔法を使えるイオと、黎明の覇者を率いている人物がこの場から消えたというのが大きい。

 ……とはいえ、それでもこの場には黎明の覇者の中でも精鋭と呼ぶべき者が多くいる。

 だからこそ、多少の強気ですんでいたのだ。


「そうだ。そもそもソフィア様がいないと、ベヒモスの素材をお前たちに渡す訳にはいかないだろう」

「それは……」


 ベヒモスの素材は是非とも欲しい。

 そう思っているのは、この場にいる多くの者の共通している。

 その価値を考えれば当然のことだったが。


「だろう? まさか……自分たちが戦ったんだからと、勝手に素材を奪っていくなんてことは考えていなかったよな?」


 その言葉に、話を聞いていた中の数人が図星を突かれた表情を浮かべる。

 恐らくソフィアやイオがいなくなった今なら、ある程度は自分の思い通りに出来るかもしれないと思った者はいたのだろう。

 そんな相手に対し、話していた黎明の覇者の男は鋭い視線を向ける。


「言っておくが、俺たちを敵に回すということでどういうことか、それは理解しているはずだな? お前たちは今なら好き勝手出来ると思っているようだが……もしそのような真似をした場合、どうなるか。試してみるか?」


 そう言われると、降伏した者たちは即座に首を横に振る。

 降伏した以上、黎明の覇者がどれだけの力を持っているのかは十分に理解しており、イオとソフィアがいなくても、自分たちがどうにか出来る相手ではないと理解しているからだ。

 そのように思える根拠は、最後の戦いにおいて降伏した者たちが戦っているところに援軍としてやって来た黎明の覇者の傭兵たちの戦いを見ているから、というのが大きいだろう。

 黎明の覇者に降伏した者たちも、自分たちの腕には相応の自信がある。

 だというのに、援軍にやって来た者たちの戦いを見ていれば、自分たちには勝ち目がないと理解してしまう。

 それだけの圧倒的なまでの実力の持ち主だったのだ。


「いや、そんなつもりはない。大人しくそっちの指示に従う」


 最初に黎明の覇者の傭兵に食ってかかった男がそう告げると、他にも何人かいた不満を抱いていた者たちもそれ以上は何も言えなくなってしまう。

 ここで黎明の覇者と戦っても、自分達に勝ち目はないというのを十分に理解しているのだろう。

 そんな相手の様子を見て、話していた黎明の覇者の傭兵もまた表情を緩ませる。


「安心しろ。今回の一件が終わったらお前達には約束通りベヒモスの素材を渡す。だから、あの骨を盗むとか、そういう真似は絶対にするなよ。もしそんな事をした場合は、こっちも相応の手段に出るしかないからな」


 この場合の相応の手段というのが何なのかは、それこそ話を聞いている者にしてみれば考えるまでもなく明らかだ。

 命を奪われるのか、それとも腕の一本や二本を切断されるのか。

 その辺りの詳細は分からなかったが、それでも自分達にとって決してよくないことが起きるのは間違いない。

 だからこそ、今の状況を思えばここで迂闊な真似は出来ないと理解してしまう。

 ましてや、あとでしっかりと報酬としてベヒモスの素材を渡すと言われているのだから。


「俺たちと最後まで戦っていた者たちは、降伏するなり、逃げるなり、あるいは……死ぬなりした。だが、逃げ出した奴の中でも、まだ何かを狙ってこっちの様子を窺っている奴がいるかもしれないから、気を付けろ」


 それこそ降伏してきた者たちであっても、黎明の覇者に反抗しようという気分が一瞬ではあった。

 降伏してきた者でもそうなのだ。

 敵対した者はいつでもすぐに襲ってくるといった真似をしてもおかしくはない。

 だからこそ、こうして現在は対抗する準備をしているのだから。

 その指示に従い、降伏してきた者たちは色々と思うところはあれども行動を開始するのだった。






「おい、どうする? 隕石を落とす奴がいなくなったぞ。今なら勝てるんじゃないか?」


 そう言ったのは、黎明の覇者との戦いに負けた者の一人。

 現在そこには十人近い人数が集まっていた。

 それはイオの使ったメテオを見て勝ち目がないと判断して逃げ出した者たち。

 そんな者たちが集まった集団だった。

 自分たちが負けたのは、あくまでもイオの使った流星魔法によるもので、それがなければ自分たちでも黎明の覇者と正面から戦うことが出来ると、そのように思っている者たち。

 ……実際には、そうして戦いの準備を整えることも戦う上で必須のことなのだが、それを認めることが出来ないの者たち。

 そのような者たちだからこそ、今のような状況になってもまだ素直に自分たちの負けを認めることは出来ないのだろう。

 いや、実際には一度自分たちが負けたのは理解しているのだが、それはまだ一度負けただけで、最終的に負けたという訳ではないと思っていた。

 それを諦めが悪いととるのか、現実が見えていないとるのかは、人それぞれだろう。

 少なくても、ここに集まっている者たちは自分たちは諦めが悪いのだと考えていたが。

 問題なのは、他の者達がそのような者たちをどう思っているのかだろう。

 その辺について気にしているような余裕は、ここにいる者たちにはなかったが。


「そうだな。一番の難敵だった奴はいなくなったんだ。それに……俺たちの数が少ないというのも、黎明の覇者に降伏した者たちを上手く味方に率いれれば何とか対処は出来るはずだ」

「けど、黎明の覇者に勝てないと思って降伏した連中だろう? こっちに降伏しろって言っても、それに従うと思うか?」


 降伏した者たちを味方につけるのが無茶だと言った者は、ある程度の状況は理解出来ているのだろう。

 ただでさえ、現在は黎明の覇者の方が有利な状況なのだ。

 それもちょっとやそっと黎明の覇者が有利なのではなく、圧倒的なまでの差で。

 そうである以上、今この状況で自分たちの仲間になれと言っても、とてもではないが向こうがこちらに味方をするとは思えない。


「ふざけるな! 俺たちがこのまま負けるとでも言うつもりか!」


 仲間にするのが難しいと言った男を責めるように、話を聞いていた男が責める。だが……


「ああ、その通り。お前たちの負けは決まったようなものだ」


 不意にそんな声が周囲に響く。


『っ!?』


 その声を聞いた者たちは、即座に反応する。

 手にした武器を構え、周囲を警戒するその反応速度は曲がりなりにも自分たちを精鋭だと言うだけのことはあるだろう。

 だが……そんな反応をさらに上回るのが、声を発した者たちだった。


「話は聞いていたが、お前たちが俺たちに負けていない? いや、それどころか勝ってるといったその様子は気にくわねえな。新人の俺にすら、こうやって見つかってるってのに」


 そう言いながら、男が一人近付いてくる。

 その手にしている槍は、いつでも相手を貫けると、そう言いたげな様子で。

 槍を手にした男……ドラインは、その場にいた相手に対して、強い苛立ちの籠もった視線を向ける。

 ドラインにしてみれば、気にくわない存在のイオを……それも傭兵として考えれば最低限の技術もないイオと、この男たちが自分たち以上に怖れているのが許容出来ない。

 それこそ、すぐにでも手にした槍で男たちを殺したいと思うほどに。

 ……とはいえ、ドラインもイオの持つ流星魔法が圧倒的なまでの力を持っているというのは理解している。

 理解してはいるが、それを認められるかどうかというのは、また別の話だった。


(くそっ、何であんな奴が)


 未だにしぶとく悪あがきをする者たちを前にしたドラインだったが、その内心にはイオに対する強い嫉妬がある。

 必死に鍛錬をしてきた訳ではなく、身体的にはその辺の者とそう違いはない。

 ……実際にはイオは短期間だが山の中でゴブリンと命懸けの追いかけっこをしていたということもあり、平均よりは上といった程度の身体能力を持っているのだが。

 ただし、それだってあくまでも平均と比べればの話であり、傭兵……それも名前だけの傭兵ではなく、黎明の覇者に所属するような本物の傭兵と比べれば、明らかに劣っているのだ。

 だというのに、そんなイオが黎明の覇者の中で大きく評価されているのは、ドラインにとってとても許容出来ることではない。

 とはいえ、そう思っていても実際にそれを口に出すような真似をしないのは、表向きならともかく、本心ではイオの持つ力について本能的に理解してしまっているからだろう。

 もっとも、イオにしてみれば自分がそこまでドラインに恨まれているという自覚は全くなかったし、このように複雑な思いを抱かれているとも知らなかったのだが。


「ほら、さっさと降伏しろ。お前たちはどうしようもない負け犬なんだ。そんな連中が俺たちを相手にどうにか出来ると思っているのか?」

 その言葉は、降伏勧告というよりも相手を暴発させるための言葉だ。

 イオの確保に派遣された精鋭だけに、その場にいた者たちも普段ならそんな言葉に引っかかるようなことはなかっただろう。

 だが、今は違う。

 何度も隕石が落ちてきて、それでも負けてたまるかといったようなことを考えているのだ。

 そんな状況でこのようなことを言われると……ましてや、直前までこれからどうするのかといったことで激しく言い争いをしていただけに、頭に血が上るのは早い。


「てめぇっ! ふざけるな!」


 一人が苛立ちと共に長剣を振るう。

 しかし、ドラインはそんな相手の攻撃をあっさりと回避し……槍の一撃を放ち、あっという間に長剣を振るった男を殺すのだった。

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