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才能は流星魔法  作者: 神無月 紅
異世界へ

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0095話

「私たちの勝利よ!」


 逃げ去っていった敵の姿を見ながら、ソフィアが叫ぶ。

 最初、その言葉を信じてもいいのかどうか迷っていたのは、降伏して黎明の覇者と共に敵と戦っていた者たちだ。

 まさかこうも呆気なく勝負がつくとは思っていなかったのだろう。

 とはいえ、それはあくまでも降伏してきた者たちが感じていることだ。

 イオにしてみれば、ベヒモスとの戦いからこっち、戦闘の連続だった。

 それでも一晩休むことが出来たので、まだ多少の余裕はあるが。

 ただ、それはイオが魔法使いということで、敵との戦いの最前線に参加していなかったからというのが大きい。

 何度も繰り返し魔法を使ってはいるものの、この辺は流星魔法の才能故か、そこまで魔力を消費して精神的に疲れるといったことはない。


(あるいは、その辺も実は杖が肩代わりしていて、だからこそメテオを使えば杖が壊れるとか……そういうのもあるのかもしれないな。ミニメテオは小規模な魔法だから、その辺もどうにか出来ているといった感じで)


 おおおおおおおおおおおおおおおお、と。

 そんな雄叫びを上げている黎明の覇者の傭兵たちを見ながら、イオはそんな風に考える。

 黎明の覇者の傭兵たちの雄叫びに釣られるように、やがて降伏してきた者たちの口からも雄叫びが上がり始めた。

 こうして、戦いそのものは黎明の覇者の勝利で終わるのだった。

 ……とはいえ、話はこれで終わりという訳ではない。

 戦いが終わってそれで全てが片付いたというのなら、イオにとっても楽だったのは間違いないだろう。

 だが戦いが終われば、それはそれでもっと別のことをする必要がある。

 具体的には怪我をした者の治療、死んだ者の埋葬、降伏してきた者への処遇……他にも様々に。

 幸いだったのは、降伏してきた者よりも逃げ出した者の方が多かったことか。

 逃げ出した者たちがこれから具体的にどうなるのかは、イオにも分からない。

 ドレミナまで戻って今回の一件を報告するのか、それともドレミナに戻ることも出来ず、そのままどこかに逃げ出すのか。

 もしくは、ドレミナに戻れず、逃げ出すようなことも出来ず……少し前にイオたちがここに派遣されるようになった盗賊となるのか。

 そのどれもがありそうだった。


(ともあれ、何だかんだとここまで続いてきた戦いが終わったのはいいことだよな。……問題なのは、これからどうするかだけど)


 戦いは終わったものの、ここにいたイオやベヒモスの素材を欲した者たちとの戦いの全てが終わった訳ではない。

 このままドレミナに戻れば、また同じような騒動になってもおかしくはない。

 もっとも、ドレミナに戻れば黎明の覇者の戦力は十分に揃うのだが。

 黎明の覇者の中でも、現在ここにいるのはあくまで精鋭でしかない。

 ドレミナで拠点となっている宿には、まだ多数の者たちがいるのだ。

 ……とはいえ、それは黎明の覇者だけではない。

 イオがベヒモスとの戦いでメテオを使ったのを見て、多くの勢力がそれを確認するために人を派遣してきた。

 それはつまり、ここにやって来た勢力の大半はドレミナに行けば本隊とも呼ぶべき者たちがいるということを意味している。

 もちろん、中には勢力として小さい集団もいて、そのような勢力は少数を派遣するのではなく、全員でやって来ていたりもるするのだが。


「ギュンターさん、この戦い……本当にもう終わったんですか?」


 ふとイオは、近くを通りすぎたギュンターに尋ねてみる。

 イオにって、お偉いさんの中で一番親しい相手がギュンターだったので、そんな風に聞いたのだが……そんな問いに、ギュンターは難しい表情で口を開く。


「どうだろうな。正直なところ、分からない。もちろん、ここでの戦いという点では間違いなく終わったが、ドレミナに戻ったときにどうなるのかは、まだちょっと分からないな」

「ドレミナに戻ったときですか。……そうなると、この騒動はまだ前哨戦でしかないって感じですか?」

「そうなるな。もちろん、こういう場所に派遣されてきた連中だ。俺たちも含めて精鋭だろう。だが、それでも数が揃っていれば、どうとでも対処出来る程度の精鋭が大半なのは間違いない」


 地球においては、量が質に勝るというのは当然のことだった。

 しかし、この世界では質が量に勝るということも珍しくはない。

 もちろん、それはあくまでも本当に優れた……突出した質の場合でしかない。

 少し強い程度の敵を相手にした場合は、結局のところ数を用意すれば対処出来るのは間違いないのだ。

 そしてドレミナには、そんな傭兵たちが大量にいる。

 個人としては決して腕が立つ訳ではないしろ、戦場慣れしているベテランも多い。

 そのような者たちが集まれば、当然ながら非常に大きな力となる。


「とはいえ、そういう連中が纏めて襲いかかってきてくれれば、イオのいるこっちが有利なのは間違いないが」

「その通りね。数が多いだけの戦力だけに、イオのメテオが決まれば、それだけで即座に降伏してもおかしくはないわ」


 イオとギュンターの会話に割り込んで来たのは、ソフィア。

 その表情には、これからの戦いも本気で戦うといった様子がある。

 とはいえ、もしソフィアの言ってることが事実であった場合、イオのメテオであっさりと敵が逃げる可能性が高かったのだが。


「イオの流星魔法は、敵を脅すという意味ではかなり便利なのよね。初めて間近で見る人は、隕石が降ってくるという初めての経験で何も言えなくなるし。そして一度隕石が降ってくるのを見た場合は、その威力がどれだけのものかを知ってるからこそ、恐怖する」

「それは……えっと、取りあえず褒められたと思っておいてもいいんですよね?」


 イオにしてみれば、今の言葉は決して自分を褒めているようには思えない。

 思えないが、それでも今の状況を思えば取りあえず自分は褒められていると思うことにする。


「それで、ソフィアさん。ここでの戦いは終わって、これからドレミナに戻るって話でしたけど……早めに戻るんですか?」

「出来れば早いところ戻りたいんだけど……そうなると、問題になるのはあれよね」


 イオの言葉に、ソフィアはベヒモスの骨に視線を向ける。

 巨大な骨だけに、馬車で持って帰るといった訳にもいかない。

 かといって、このままここに置いていくというのもまた論外だ。

 高ランクモンスターベヒモスの骨だ。

 それが一体どれだけの価値があるのかは、考えるまでもなく明らかだろう。

 そもそもソフィアたちがここで戦うことになったのも、ベヒモスの素材を奪われたくなかったからというのが大きい。

 もし流星魔法の使い手であるイオを渡したくないだけなら、別にここに留まって戦う必要まではなかったのだ。

 そのような真似をしたのは、やはりベヒモスの素材を奪われたくなかったからだろう。

 イオたちが倒した素材だけに、それを何もしていない相手に奪われるを嫌うのは当然だった。


「何人か残していく……というのがいいだろうな」

「でも、そのくらいの人数だと結局誰かが襲ってきたら、奪われることになるかもしれないわよ?」


 何人かとはいえ、それでも黎明の覇者に所属する傭兵たちだ。

 当然ながら相応の実力者である以上、その辺の者たちが襲ってきたところで、対処するのは難しくないだろう。

 だが、それでも手に負えないほどに多くの敵がやってきた場合は、それに対処するのが難しい。

 しかしそんなソフィアの言葉にギュンターは特に気にした様子もなく頷く。


「そうだろうな。だが、ベヒモスの骨はこれだけの大きさだ。そう簡単に持って帰るといったような真似は出来ないだろう。そうなると、この骨を完全に守るには一体どれだけの戦力が必要だと思う?」

「それは……」


 ベヒモスの骨は巨大だ。

 幸い……という表現はこの場合相応しくないのかもしれないが、下半身の部分はメテオによって骨も含めて砕け散っているので、ベヒモスの骨は完全な状態ではない。

 しかし、それを含めて考えてもかなり巨大なのは間違いのない事実なのだ。

 そうである以上、その骨を完全に守るとなると結構な人数が必要になるのは間違いなかった。


「なら、いっそ、この骨は黎明の覇者が所有権を持っていると看板でも置いていって、全員で一度ドレミナに戻り、それからまた全員でここに戻ってくるという選択肢もある。あるいは、数人をドレミナに向かわせ、それ以外の者たちはベヒモスの骨を守るというのもありだろう」


 どちらにも、メリットとデメリットがある。

 特にドレミナの騎士団はかなり前にこの戦場を離脱している。

 そうである以上、どんなに頑張ってもこれから黎明の覇者の面々がドレミナに戻るよりもドレミナの騎士団が戻る方が早いだろう。

 であれば、騎士団から今回の一件の諸々が報告された場合どうなるか。

 間違いなく、黎明の覇者を押さえようとしてくるだろう。

 宿に残っている戦力は多いのでそちらに手を出すのは難しいものの、少数でドレミナに向かっている者たちがいるとなれば、そちらに手を出す可能性は高い。






「とにかく、ドレミナの戦力と急いで合流する必要があるのは間違いないわね」

「……俺が行きましょうか?」


 ソフィアの呟きにそう言ったのは、イオ。

 ここで自分が出るのは、正直なところ危険だというのは分かっていた。

 分かっていたが、それでもドレミナにいる敵が襲撃してきたときにメテオを使えば脅しの一撃になるのはこれまでの経験から理解しているし、何よりも最悪の場合は実際にメテオを使って敵に命中させればいいのだから。

 ソフィアも当然ながらイオのメテオについては十分に理解しているので、イオが行ってくれれば助かるのは間違いない。

 間違いないが、だからといって本当にこの状況でイオに頼ってもいいのか? という思いがある。


「いいの? そんな真似をすれば、間違いなくイオは目立つことになるわよ?」

「それはもう、今更って感じがしますけど」


 今回の戦いで、イオが隕石を自由に落とせるという情報すでに知れ渡ってしまった。

 そうである以上、ここで無意味に隠すような真似をしても意味はないと判断し……


「そう、じゃあお願いするわね」


 ソフィアがそう告げるのだった。

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