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才能は流星魔法  作者: 神無月 紅
異世界へ

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0084話

 ソフィアが判断を下すと、黎明の覇者が行動に移るのは早い。

 何人かが、現在黎明の覇者に降伏してその指示通りに動いている勢力に使者として向かう。

 現在ベヒモスの骨がある、黎明の覇者の拠点となっている場所は安全だったものの、それ以外の場所……少し離れた場所では、多くの勢力が戦ったり、あるいは睨み合ったりしている。

 中には顔見知りがいて、その相手を通して撤退するように説得している者もいるのだが。

 とにかく、色々な場所で戦いや、そこまでいかずとも緊迫感のある状態になっているのは間違いない事実だった。

 しかし、そのような場所に向かうのだから、当然ながら多くの者は危険な目に遭うだろう。

 ソフィアは当然ながらそれを知っていたものの……その上で、少しでも多くの味方に接触する必要があるからと、数人単位ではなく一人ずつ多方面に向かわせた。

 これはそのような真似をした者が一人でも大丈夫だと信じているからこその行動。

 もちろん、本来ならソフィアもそのような真似はさせたくはないし、出来れば一人ではなく数人ずつで行動して貰った方が安心なのは知っている。 

 だが、それでも……今のこの状況を思えば、少しでも早く事態を進める必要があるのは間違いなく、そういう意味ではやはりここで素早く動いて貰う必要があるのは事実だった。


「気を付けて行きなさい。相手が攻撃をしてくるようなら、すぐに逃げてもいいわ。今のこの状況では、名誉の戦死よりも泥臭くても生き延びてくれた方が助かるから」


 他の勢力と接触するために本陣から出て行った者たちに対して、ソフィアがそのように言ったのは決して大袈裟なものではなく、真実からの言葉だ。

 そうして送り出すと、次は周辺の警戒を厳しくする。


「いたぞっ、逃がすな!」


 今までよりも周辺の警戒を厳しくすれば、当然ながら今までは見つからずに黎明の覇者を偵察していた相手を見つけたりすることもある。

 見つけられた方は必死になって逃げようとするのが、この場合は見つかった相手が悪い。

 見つけたのがイオやレックスであれば、あるいは上手く逃げ出すような真似も出来たかもしれない。

 しかし、黎明の覇者では新人扱いではあっても、他の場所ではれっきとした即戦力として期待出来る傭兵たちに見つかってしまえば……ましてや、ランクA傭兵団である黎明の覇者の中でも精鋭と呼ばれる者たちに見つかってしまえば、逃げることは出来ない。

 逃げ出そうとしていた傭兵は、あっさりと捕まってしまう。

 ……偵察を任されているだけに、自分の逃げ足には自信があったのだろうが、それよりも素早く動ける者は多い。

 そうして捕まった男は、ソフィアの前に引きずり出される。


「さて、今みたいに偵察をしていたということは、私たちと敵対するつもりだと考えてもいいのかしら?」

「は……ははは……さて、どうだろうな。俺たちだけでは黎明の覇者に勝つのは難しいだろうよ。けどな、ここには俺たち以外も多くの勢力が集まっているんだ。その勢力と俺たちが手を組んだらどうなると思う?」

「勝つのは難しくなるでしょうね」

「……難しくなるか。そこで勝てなくなるって言わない辺り、あんたたちは厄介だよな。けど、それが分かってるなら丁度いい。大人しく俺たちにその素材を渡した方がいいんじゃないか? 何も、隕石を落とすって奴を渡せとは言わねえ」


 そう言う男の視線が、イオに向けられる。

 それは明確に、イオが彗星を落とす……流星魔法の使い手だというのを知っていると示していた。

 とはいえ、それはおかしい話ではない。

 ドレミナの騎士団にイオの存在を知られており、そこから情報が拡散されたと予想するのは難しい話ではなかった。

 男の言葉から考えると、イオが流星魔法を使う件は間違いなくこの場にい多くの者が知っているのだろう。

 もしイオの存在を隠し通すためには、ここにいる全員を殺す必要があった。

 そのような真似をするのは難しい。

 ……いや、やろうと思えば出来るだけの実力を持っているのは間違いないが、それを実際に行ってしまえば、黎明の覇者にとっても風評被害といったことで大きな被害を受けることになってしまう。


「残念だけど、そのつもりはないわね」

「そうかい。なら……後悔することになる、ぜ!」


 叫んだ瞬間、素早く腕を振るう。

 男はいつの間にか縛られていたロープを解いたのだろう。

 すると腕の裾から長針が放たれ……

 キィン、という甲高い金属音が響くと同時に、肉を貫く音も響く。


「ぐ……が……」


 長針を放った男は、何が起きたのか理解出来ないといった表情を浮かべながら、地面に崩れ落ちた。

 まさか自分が得意としている長針を使った奇襲があっさりと防がれた上に、そのまま返す一撃で太股を切断されるとは思ってもいなかったのだろう。

 一瞬……本当に一瞬で行われたその攻撃は、まさに鋭いとしか表現出来ないような攻撃だった。

 誰がそのような真似をしたのか。

 それは考えるまでもなく、ソフィアだ。

 数秒前までとは違う、冷徹な視線。

 その視線を向けられた男は、一瞬貫かれ、切断された太股の痛みすら忘れるほどに、ソフィアのその視線に目を奪われる。

 冷徹な視線だからこそ、今こうして自分がいつまでも見ていたいと思ってしまうかのような、そんな光景。

 とはいえ、それでも太股の切断という重症は、すぐにその痛みを思い知らせることになるが。


「ソフィア様、無事ですか!?」


 傭兵の一人が、すぐにソフィアに近付き、そう尋ねる。

 ソフィアの技量であれば、あの程度のことは問題ないと思うし、実際にソフィアは自分の力で今の奇襲に対応している。

 しかし、それでもやはりこうして目の前でソフィアが襲われるといった光景を見れば、それに対して思うところがあるのは当然だった。


「大丈夫よ、問題ないわ。私がこの程度でどうにかなる訳がないでしょう?」


 氷の魔槍を振るい、自分は何の問題もないと態度で示してみせる。

 その動きは、ソフィアが本当に問題ないと態度で示していた。

 そのようなソフィアの様子を見て、近くにいた者たちが安堵した様子を見せ……安堵すれば、当然次には自分たちを率いているソフィアを暗殺しようとした相手に殺意が向けられる。

 男が最初からソフィアを殺そうと思って狙っていたのかどうかは、正直なところ分からない。

 しかし、実際にこうしてソフィアを狙ったというのは間違いのない事実なのだ。

 であれば、この場にいる者たちが男を許せないと思うのは当然だった。

 それを示すかのように、足を一本失っている男に向かって武器を手に近付く者たち。


「待ちなさい」


 だが、そんな者たちの姿を止めたのは狙われたソフィアだった。


「ソフィア様!? 何で止めるんですか! こいつは……」

「分かっているわ。けど、止めておきなさい」


 傭兵の一人が不満そうな様子でソフィアに叫ぶも、ソフィアはその言葉に対してそう返す。

 狙われたソフィア本人がそう言うのであれば……と、不満を叫んだ男ももちろん、他の者たちも足を失って苦痛に耐えている男に近付くのを止める。

 当然不満を抱いたままではあったがのだが。


「それで、ソフィア様。これからどうするんですか? この男はその辺に放り投げてくるということでいいでしょうか?」

「そうね。殺しはしなかったんだから、感謝して欲しいけど……この様子を見る限り、感謝はしてくれそうにないわね。もっとも、今の状況を思えばそんな風に思ってはくれなさそうだけど」


 足を一本失ったのだから、それに感謝をしろという方が無理だろう。

 とはいえ、命を狙った相手に対して足一本ですんだのだから、幸運であるのは間違いないのだが。

 ソフィアだったからこそ、この程度ですませたのだ。

 もしこれがソフィア以外の者であった場合、殺されていてもおかしくはない。

 足を失ったのは痛いかもしれないが、義足を手に入れれば普通に動くことは出来る。

 あるいはマジックアイテムの義足であったり、ダンジョンで見つかるようなアーティファクトの義足を入手しようものなら、それこそ生身の足よりも明らかに性能は高くなる。

 ……もちろん、そのような状況であっても多くの者にしてみれば、自分の生身の足の方がいいと主張するのだろうが。


「また狙ってきたら、今度は何もさせずに殺しますよ」


 傭兵の一人が、痛みに呻いている男を睨み付けながら、そう告げる。

 その言葉に、話を聞いていた他の者たちもそれぞれに頷く。

 自分たちを率いているソフィアが狙われたのだ。そのことに、思うところがあるのは当然だろう。

 もしソフィアが死ぬ……まではいかなくても、怪我をするといったようなことになっていた場合、傭兵たちはソフィアが止めようとも暗殺を企んだ男を殺していたのは間違いない。

 そういう意味では、まだこの男は幸運だったのだろう。


「はいはい、その男は取りあえず離れた場所に捨ててきなさい。もしその男の仲間がいるのなら、助けに来るでしょう。来ないのなら……そのときは、運がなかったということになるでしょうね」


 足が一本なくなっている状態だけに、かなりの血が流れている。

 その血の量は、そう遠くないうちに大量出血によって死んでしまうだろう。

 あるいは男がポーションの類を持っていれば、死ぬまではまだ長引くかもしれないが……ソフィアにはもう男に興味はなかった。

 時間が経てば死ぬ。仲間が助けに来れば、生き残る。言ってみれば、それだけなのだから。


「一人が近くまでやって来たということは、他にも……イオ? どうしたの?」


 他にもまだ近くに敵が潜んでいるかもしれない。

 そう言おうとしたソフィアだったが、その言葉を遮るようにしてイオが一歩前に出る。

 そんなイオの様子に、不思議そうな視線を向けるソフィア。

 他の傭兵たちも、ソフィアの言葉を遮るとは何を考えているといった視線をイオに向けるが……イオはそんな視線を気にした様子もなく、口を開く。


「ソフィアさん、今回の一件を終わらせるために、俺の流星魔法をもっと積極的に使って下さい」


 そう、告げるのだった。

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