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才能は流星魔法  作者: 神無月 紅
異世界へ

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0073話

「いたぞ、あいつらだ。流れてきた情報によると、あの杖を持っている男が隕石を落とす能力を持っているらしい。何とか確保するぞ!」


 イオたちの前に姿を現したのは、二十人ほどの集団。

 そんな集団は、杖を持った男……明確にイオを狙っていた。

 あるいはイオ以外にも杖を持った者がいれば、まだ話は違ったのだろう。

 しかし、生憎とここにる中で杖を持っているのはイオだけだ。

 そうである以上、ここで相手が狙っているのは明らかにイオだった。


(しっかりと俺と認識した上で狙っている? だとすれば、この敵は一体何を考えてそんな真似を……いや、これは考えるまでもないか。多分、さっきの男が情報を広めたと考えた方がいい)


 イオが思い浮かべたのは、騎士団……ではなく、最初に襲ってきた中年の男。

 ゾブンとアザラカの二人を相手に、防戦に専念していたとはいえ互角に戦うといった力を見せた強敵。

 その相手を追い払うために、イオは流星魔法を使う振りをした。

 ……実際には、杖を動かしただけで呪文の詠唱も何もしてはいなかったのだが、それでもイオがこれみよがしに杖を動かした時点で危険なものを感じて逃げたのだ。

 その一件でイオが流星魔法の使い手を認識され、イオについての情報を流したのだろう。

 一体何故そのような真似をしたのか……というのは、考えるまでもない。

 イオに対する意趣返しというのもあるだろうが、それ以上に重要なのは、やはりどうにかしてイオを確保したいということなのだろう。


「いいか、最初に襲ってきた男やその仲間が周辺に隠れている可能性がある。今はイオを守るのに専念しろ。突出するような真似はするなよ」

「へぇ……まさかゾブンがそんなことを言うなんて。この短期間で随分と成長したな」


 援軍として合流した傭兵の一人が、今はイオを守るのが最優先だといった指示を出すゾブンを見て、面白そうに言う。

 そんな男に対し、ゾブンは一瞬不満そうな視線を向ける。

 だが、今の指示は自分らしくないというのは理解していたのか、それとも今はまずイオを守って敵を倒すのを優先した方がいいと判断したのか、近付いてくる敵の集団を睨み付けるだけだ。

 純粋に数という点では、ゾブンたちが不利なのは間違いない。

 しかし、その数の差もそこまで圧倒的という訳ではなく、何よりも質では自分たちの方が勝っているという自信があった。

 だからこそ、今は敵との戦いに集中するのが優先だと判断していた。


「いいから、今は敵に集中しろ。……レックス、イオの護衛は任せたぞ」


 ゾブンの言葉に、レックスは頷きつつイオの側まで移動した。

 そうして黎明の覇者の準備が整ったところで……


「後ろだ! 後ろからも敵がやって来ているぞ! 注意しろ」


 アザラカのその言葉に、他の面々は一瞬だけ動揺するも、すぐに建て直す。

 歴戦の傭兵たちにしてみれば、予想外の方向から攻撃をされるというのはそう珍しい話ではない。

 それでも対処出来るからこそ、黎明の覇者の傭兵としてやって来られたのだ。

 だが……即座に対応した黎明の覇者を見て、近付いてきていた敵の傭兵たちは舌打ちする。

 傭兵たちが黎明の覇者の戦闘準備が整うのを待っていたのは、後ろに回り込んで相手の不意を打つという目的があったからだ。

 だというのに、自分たちが不意打ちの準備をしており、まだその準備が完了していないというのに、相手に別働隊の存在を察知されてしまったのだ。

 別働隊も、そこまで見つかりやすい態度を取っていた訳ではない。

 それでもこうして背後から攻めようとして理魚を見つけたのは、黎明の覇者がそれだけ実戦慣れをしていたからだろう。


「くそっ! 仕方がねえ! やれ! このまま一気に連中を押し込むぞ! そうすれば、俺達の勝利だ! 何も黎明の覇者を全滅させる必要はねえ! あの杖を持ってる奴を奪えば、それでいい!」


 その声に、イオたちを襲ってきた傭兵たちは一気に攻撃をしかける。

 指示を出している者が口にしたように、黎明の覇者の傭兵という強力な相手を全滅させる必要はない。

 今の状況でやるべきなのは、あくまでもイオを奪うという行為のみだ。

 そしてイオを奪ったら、一目散に戦場から逃げ出せばいい。

 あとはイオから隕石の件について詳しく情報聞き出し、自分たちで利用するなり、あるいは誰かの売り飛ばすなりすればいいのだ。

 そんな風に考えている相手だけに、イオを守る方としてはそれなりに厄介な相手となる。


「イオを守りながら戦う! ここで戦っていれば、周辺にいる仲間たちも俺たちの存在にすぐに気が付くはずだ! そうすればここに戦力が集まってくるだろうから、時間が経過すればそれだけこちらが有利になる!」


 アザラカの叫ぶ声が周囲に響く。

 それは自分たちは決して不利ではないと示すと同時に、自分敵に対して時間をかければそれだけイオたちが有利になるというのを教え、少しでもこちらにとって有利になるようにするという……そんな狙いを持った言葉。

 実際、その言葉を聞いた敵の中には見て分かるほどに動揺する者もいる。

 このままいけるか?

 黎明の覇者の傭兵が何人かそう思ったところで、相手の傭兵たちを率いている人物が、動揺を鎮めるべく口を開く。


「落ち着け! 時間が経てば向こうが有利かもしれないが、今の時点で俺たちが有利なのは間違いない! なら、その有利なうちに片付けしまえばいいだけだ!」


 その言葉は動揺していた者たちを建て直すのに何とか成功する。

 そして動揺から戻れば、すぐ行動に移っていく。

 そんな敵を見ながら、ゾブンは忌々しげに舌打ちする。

 動揺して攻撃を躊躇する必要があって欲しいとは思っていたのだが、それが今の一声で台無しになってしまったのだ。


「どうします、ゾブンさん。今から流星魔法の準備しますか? それなら、もしソフィアさんからの許可が出れば、すぐにでも使うことが出来ますけど」

「それは……いや、待て。その場合、狙う場所はどうなる? 今のうちから狙う場所を決めておいて、そこに流星魔法を使うといった準備をしていても、そこではなくどこか指定した場所に使えと……ええいっ! 邪魔だ!」


 イオとゾブンが話している最中に、傭兵たちが一気に襲ってくる。

 とにかくイオを手に入れればそれでいいと、そう判断しての行動なのだろう。

 そんな者たちにとって、イオと話しているゾブンは邪魔者でしかない。

 ……ましてや、流星魔法を使うという話をしている以上、そのまま放っておけば自分たにが壊滅する可能性も否定出来ない。

 そうである以上、今はとにかくその話を邪魔する必要があるのも事実だった。

 それと同時に、その会話を聞いていた者はイオがマジックアイテムの類を使うのではなく、魔法……流星魔法という魔法を使って、隕石を落下させるというのも知った。

 だからこそ少しでも早く敵を倒してしまう必要があるのは、間違いのない事実。

 もっとも、ゾブンたちも当然のようにそんな相手の狙いは分かっているので、敵の攻撃を必死になって防ぐ。

 その攻撃を何とかして防ごうとする行動に、襲ってくる傭兵たちはよけいにやる気になる。

 今のこの状況で自分が一体何をどうすればいいのか……双方共に、そう考えた結果だろう。


(どうする? 話をする前にゾブンさんたちは戦いが始まってしまった。そうなると、俺は流星魔法の準備をした方がいいのか? いや、さっきのゾブンさんの言葉から考えると、俺が呪文の詠唱をしている時に、その対象を変える真似が出来ないと……出来るのか、それが?)


 イオは先程のゾブンとの会話を思い出し、どうすればいいのか迷う。

 だが、少し考えを纏めると、ある程度自分の魔法で狙う場所を変えられるというのを理解する。

 ゴブリンの軍勢に流星魔法を使ったときは、そんなことを考える余裕はなかった。

 しかし、ベヒモスに対して流星魔法を使ったときはどうだったか。

 ある程度の範囲内という限定はされていたものの、それでも多少はどうにか出来るように魔法の詠唱を変えられたのではないか。

 何よりその次に放った対個人用の流星魔法……ミニメテオは、その発動場所を普通のメテオ以上に自由に出来た気がする。


「多少ですが、魔法を命中させる場所を変えることは出来ます! 魔法の発動の準備に入っても構いませんか!?」

「馬鹿、多少程度じゃ……いや、違う。来たぞ! そいつから話を聞け!」


 ゾブンがイオの意見を却下しようとしたとき、視線の先に自分たちのいる方に向かってくる数騎の騎兵を確認し、そう叫ぶ。

 当然ながらゾブンたちと戦っていた傭兵たちにも、そんな声は聞こえる。

 もう援軍が来たのかと、そんな風に緊張した様子でゾブンの視線を追うが……不幸中の幸いと言うべきか、イオたちのいる方に向かって走ってきているの騎兵の数は多くない。

 それを見た傭兵たちは、これならまだ自分たちが勝てる……あるいは自分たちが全滅するよりも前にイオを連れ去ることが出来ると判断したのか、攻撃を一層激しくする。

 背後から奇襲を狙っていた者たちも、現在となってはすでに戦闘を開始していた。

 この辺りの傭兵たちの判断が、さきほどイオたちを襲ってきた中年の男と違うところだろう。

 もしここに先程の中年の男がいた場合、それこそ即座に撤退するという選択をしていたはずだ。

 そうしなかったというのは、襲ってきている傭兵たちが冷静に現在の状況を判断出来なかったからというのが大きい。

 もっとも、人数的に襲ってきた傭兵たちの方が有利なのは変わらないので、今ここで強攻策を選ぶのは決して愚策といった訳ではないのだが。

 それでも今の状況を思えば、決していい手段ではなかったのは間違いない。

 そんな風にいイオは勘上げ……こちらに戻ってくる黎明の覇者の騎兵の到着を待つ。

 それこそいつ流星魔法を使ってもいいように準備をしながら待っていると、その間にも敵は今まで以上に強烈な攻めを見せ……イオは杖を手に、それを黙って見る。

 今の状況を考えると、いつでも流星魔法を使えるように準備しながら待つのが最善の行動だった。

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