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才能は流星魔法  作者: 神無月 紅
異世界へ

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0072話

 イオの口から出た、流星魔法を使うという言葉。

 それを聞いた者は、二通りの反応を示す。

 片方は、少し前にその意見は却下されたのに、何故またそのようなことを言うのかといったもの。

 こちらはゾブンとアザラカの二人。

 もう片方は、それはいいかもしれないというもの。

 こちらは、援軍としてやってきた黎明の覇者の傭兵たち。


「本気か? この状況で流星魔法を使おうものなら、間違いなく面倒なことになるぞ」


 ゾブンの馬鹿にしたような……それでいて、実際には心配するようなその言葉を聞いたイオは躊躇した様子もなくその言葉に頷く。


「はい。今、この状況ではどんなに多くの戦力がこの付近にいるのか分かりません。そんな相手全てに対処するのは、黎明の覇者であっても難しいのではないですか? なら、そのような真似をしなくてもいいように、強烈な脅しをしてみせた方がいいかと」


 イオを狙ってこの辺りに潜んでいる多くの戦力は、流星魔法を自分の目で直接見ている者はいないだろう。

 あるいは遠くから……ドレミナから流星魔法を見た者はいるかもしれないが、それと間近で見るというのとでは大きく違う。

 実際に間近で流星魔法を見れば、迂闊にイオに手を出すといった真似は出来なくなるはずだった。

 個人用に使ったミニメテオではなく、ゴブリンの軍勢やベヒモスを倒すのに使って通常のメテオの迫力は圧倒的に違う。

 だからこそ、今この場で使ってしまえば様子見をしている者たちを相手に徹底的なまでの威力を見せつけるような真似が出来るのは間違いない。

 こう何度も多数の勢力に襲われている今の現状を考えると、そうしてしまうのが一番いいと考えるのは当然だろう。


「本当に……いいんだな?」


 イオの様子からすると、冗談でも何でなく本気で言ってるのだと理解したのだろう。

 ゾブンがこれ以上考えを変えるように言っても無駄だと判断し、確認するように尋ねる。

 イオの能力を考えれば、それは間違いなく出来ることだ。

 そしてイオが言うように、牽制としても非常に大きな意味を持つだろう。

 ……それを牽制というのが、そもそも間違っているように思えないでもなかったが、


「はい。こう言ってはなんですが、俺がここで動かない場合、それこそこれからも延々と敵に狙われる可能性があります。俺を無理に連れていくといったような真似をした場合、どうなるか。それをしっかりと示した方がいいと思います」


 そう告げるイオの言葉を聞き、何人もが確かにと思った。

 結局のところ、こうしてイオが……あるいはイオではなく流星魔法を使うための何かが狙われているのは、自分たちがそれを狙ってもその対象が特に反撃らしい反撃をしてこないと理解しているからだろう。

 もしマジックアイテムの類なら、自意識の類はない。

 もちろんその場合は、マジックアイテムを使っている者が狙われるのにうんざりしてマジックアイテムを使うといった可能性もあるのだが。

 そして相手がイオのような人間の場合……この場合も、連れ出すようなことが出来てしまえば、あとでどうとでも出来ると判断していてもおかしくはない。

 あるいは、流星魔法を使うイオを奪ってしまえば、そのまますぐ誰かに売り飛ばすといった考えなのかもしれないが。

 とにかく、イオは自分がそんな風に危害――誘拐も含めて――を加える相手には容赦をしないと示して見せる必要があった。

 普通に考えれば、ゴブリンの軍勢とベヒモスに使った二度の流星魔法で、それを使う相手を怒らせればどうなるのかというのは、考えるまでもなく明らかだと思うのだが。

 どのような理由があるのか、現在こうしてここにいる者たちは何故か自分がどうこうされる訳はないと、そのように思っているようにイオには感じられた。

 なら、ここで迂闊に自分に手を出せばどうなるのか、それをしっかりと相手に教えておく必要があった。

 ミニメテオではなく通常のメテオを間近で見て……それでも自分に向かってちょっかいを出してくるようなら、そのときはイオも本気で相手にメテオを叩き込むといったような真似をする必要があるだろう。

 しかし、恐らく……本当に恐らくの話だが、イオの放つメテオを間近で見た勢力のほとんどは、イオを怒らせるのは割に合わないと判断して撤退するのだろうと予想出来た。

 ……中には間近でメテオを見ても、それでも全く関係ないといったように攻撃してくる者がいるのかもしれないが。

 そのような者がいた場合は、それこそ人数が少ない以上は黎明の覇者の傭兵たちに対処して貰えばいいだろう。

 黎明の覇者の傭兵たには、それを行うだけの力が十分にあるのだから。


「分かった。……最後にもう一度だけ聞く。本気なんだな?」


 改めて聞くゾブンに、イオは躊躇なく頷く。

 杖に握り締めるその手には力が入っており、今この状況……黎明の覇者と暗黒のサソリの戦いが終わりつつあるのを切っ掛けとして、様子見をしていた多くの勢力が戦場に介入しようとしているのは間違いない。

 その介入が本格的に行われるようなことになれば、間違いなく面倒なことになる。

 そうならないようにするためには、機先を制するかのような形で動くのが必要だとイオには思えた。

 ……それ以外に、自分の持っている杖がメテオの行使にも耐えられるのかを確認したいという思いがあるのも事実だったが。

 最善なのは、やはり今イオの持っている杖が性能の高い杖で、ミニメテオだけではなく普通のメテオにも耐えられるということだろう。

 そうなれば、これからも安心して流星魔法を使うことが出来るようになるのだから。

 もちろん、杖がメテオに耐えきれずに破壊されるという可能性も否定は出来ない。

 そうなったらそうなったで、また別の杖を見つければいいだけだ。


「分かった。なら……頼めるか?」


 イオの退く気のない様子に、ゾブンは援軍としてやって来た仲間の一人に言う。

 一体何を頼むのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかだ。

 それはつまり……


「分かった、ソフィア様に話を通してくる。ソフィア様なら、イオの提案を聞いても反対するようなことはないだろう」


 そう、ソフィアにこの件について話を通してくということだ。

 さすがにこの状況で流星魔法を使おうにも、ソフィアに何の話も通さずに行うといったような真似をする訳にはいかない。

 もしそのような真似をしたら、最悪の場合はソフィアを含めた黎明の覇者に所属している者たちが、イオの使う流星魔法に巻き込まれる可能性があった。

 普通に考えれば、そう簡単に流星魔法に巻き込まれるといったようなことはない。

 だが、馬に乗って戦っている者は当然だが高い機動力を得る。

 そうなると最悪の場合、イオが使う流星魔法の着弾地点付近にソフィアたちがいないとも限らない。

 イオの使う流星魔法は、威力という点では文句のない代物ではあるのだが、どうしても周辺にも大きな被害が出る。

 ベヒモスと戦った時は若干流星魔法にアレンジを加えることにより、ゴブリンの軍勢に使ったときと比べると効果範囲は狭まったが、それはあくまでも狭まったのであって完全になくなった訳ではない。


「ああ、頼む。……イオ、ソフィア様に話を通した以上、もうどうしようもないぞ。お前は流星魔法を使う必要がある」

「分かりました。俺からやると言ったんですから、ここで使えないといった真似はしません。……それで、具体的にはどこに魔法を使いましょう? 出来れば人がいない場所を狙いたいんですが」

「ちょっと待ってろ。報告に行った奴が、どこを狙えばいいのかという情報を持ってくる。それまでは……そうだな。敵に見つからないように行動して、いつでも魔法を使えるように準備しておけ」


 そう言うゾブンの言葉に、イオは素直に頷く。

 何があって即座に反応出来るように準備をしておく必要があると、そう理解したのだろう。

 何しろイオの持つ杖を破壊すれば、それだけでイオの狙いは駄目になる。

 流星魔法は、あくまでも杖があってこそのものであり……何よりその杖も、イオが魔法を使えば壊れる可能性がある。

 そんな杖だけに、イオに魔法を使わせないという点ではその杖を破壊するのが最善なのは間違いない。

 だからこそ、イオは杖を守るように持ち……そんなイオの隣に、レックスが立つ。

 レックスはイオの護衛を任されている以上、ここは自分が何としてもイオが流星魔法を使うまでは守ると、そう考えたのだろう。

 実際、レックスの持つ気迫はかなりのものだ。

 今までイオと共に行動してきて、自分がほとんど役に立っていないというのを自覚しているからこそだろう。

 もっとも、イオにしてみれば自分と親しいレックスが側にいるだけで十分にリラックス出来るので、それだけで意味はあるのだが。


「ちっ、話が決まったと思ったら、またどこかの連中が来やがった。面倒なことだ」


 不意に援軍としてやってきた傭兵の男が、そう告げる。

 この状況で再び敵がやって来たというのは、正直なところイオにとっては面白くない。

 これから流星魔法を使って、この周辺にいる勢力を纏めて牽制する……そして出来れば自分たちにちょっかいを出さないようにさせるというのが目的なのだが、それを行う前に邪魔をされたくはない。

 敵が近付いてきたのを確認し、イオやその周辺にいる者たちが近付いてきた敵と遭遇したところで対処出来るように準備をする。


「イオ、いいか? お前の流星魔法は今回の一件の切り札だ。そんなお前を守るために、俺たちは行動する。それに対処するのなら、お前も何があってもいいように準備をしろ。いいな?」


 そう告げてくる男の言葉に、イオは真剣な表情で頷く。

 ……いっそ、ここで本当のメテオではなくても、ミニメテオでも使ったらいいのでは?

 一瞬そう思ったイオだったが、実際に今そのような真似をした場合、杖が壊れる可能性もある。

 そう思えば、ここで流星魔法を使うのは止めておいた方がいいのも事実であり……今は、とにかく敵の行動を待つのだった。

 この状況をどうにかするには、自分の力が必要なのだと思いながら。

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