薄霧の試練
前回のあらすじ
・サボテンと戦うシロ
・け、ケートのことなんてそんな……!
「それで、セツナ様。次の鍛練は……?」
休憩も兼ねてお喋りをしていると、シロが次の予定を聞いてきた。
次の予定……ねぇ?
「正直、強くなってると思うし、これ以上ってなると、もうとにかく数をこなしていくしかないんじゃないかなー?」
「数、ですか」
「そうそう。なんていうか、武術の鍛練っていうのは、とにかく反復練習と実践に限るんだよね。反復練習っていうのは、同じ動作を繰り返して、動きを体に馴染ませることなんだけど……私はほとんどやったことがないんだよねー」
だって、やろうって思ったことが大体できちゃうし……。
今やってる抜刀術だって、スキルとして出てこなかったら、触れることもなかった技だしねー。
「修練を積まずにそのレベル、ですか。……やはりセツナ様は、天才肌というものなのですね」
「んー、どうだろ? おかしいって、ケートにはよく言われるけど……ケートもカリンさんも、私よりスゴいことができちゃうし、私が飛び抜けておかしいってわけじゃないと思うよー?」
ほら、この間のイベントも、ケートに負けたしね。
だから、私は一般人だよ、一般人。
「なにを考えているのかは、なんとなく予想は付きますが……ともあれ、次はどうしましょうか?」
「んー、じゃあ足りないものを見つけに、試練に挑戦してみよっか」
「試練、ですか?」
「うん」
□
「よく来たな、風に挑みし者達よ」
あの後、時間の調節も兼ねて一旦ログアウトした私達は、色々と雑多なことを終わらせてログインし、天空神殿へとやってきた。
どうやら、シロは高いところが苦手らしく、ワープしてきた瞬間、「ひっ!」と私にしがみついて、体を強ばらせていたのが面白かった。
まあそれも、神殿に近づいていけば、おさまったんだけど。
「我が名は天空王『フィラノス』、汝らの道行きを裁定する者。次なる界は、大海によって支配されし世界。よって、力なき者は底へと沈む無情の界。ゆえに、我は裁定す。汝らが、大海に挑むに足る者か否かを」
この辺りのセリフは、どうやらお決まりのセリフらしく、掲示板を見て挑戦した人たちも、みんな同じ言葉を聞かされているらしい。
ただ、このあとは、それぞれの試練によって台詞が違うみたいだ。
「……ふむ。我が裁定を受け、すでに次なる界へ辿り着いた者がいるようだ。なにゆえ、この神殿へと訪れた」
「あー、私はただの見届け人だよー。弟子が受けるからね」
「はい。私が、試練を受けに参りました」
「よかろう。ではその力、我が眷属『ライジファルコル』に見せてみるがいい!」
天空王の言葉と共に、神殿の奥へハヤブサが現れる。
それを確認してから、私はのんびりと神殿の端に向かい、地面へと腰を下ろした。
「あー、がんばれー。負けても構わないからねー」
「はい。全力で参ります!」
神殿の中央で薙刀を構え、シロはハヤブサへと視線を向ける。
対する相手の準備を待っていたように、ハヤブサはその翼を広げ、宙へと浮き上がった。
「――ハッ!」
上段から振り下ろされた薙刀を、ハヤブサはスルリと避け、また宙へとその身を踊らせる。
すると、突然……薄霧のようなものが、神殿の内部に発生した。
「視界にはほとんど影響しないレベルの霧だけど……どうも弱いレベルの毒が混じってるっぽいねー」
しかもこれは、試練を受けているプレイヤーだけに影響の出る毒みたいだ。
だから私には全く影響がないのに、シロのHPゲージは三十秒ごとに一割程度減っている。
なるほど、今回の試練は単純みたいだねー。
「シロー。今回の試練は、攻撃を当てることだよー」
「なるほど、分かりました!」
元気よくしっかりと返事をしたシロだったが……やはり相性が非常に悪いからか、全然攻撃を当てられない。
斬り下ろし、斬り上げ、薙ぎ、払い、突きなどなど、連続で攻撃を放っても、ハヤブサはまるで踊るようにその軌道を逸らす。
さらに時間をかければかけるほど、HPは減っていき、その動きから精細を奪っていく。
「……無念、です」
そして、霧が現れてから、きっちり百秒。
シロは神殿の床へと倒れ、その身を光へと変えていった。
「んー、難しかったかー」
「此度の裁定は、これにて終了と、」
「ちょーっとまったー! さっきのやつ、私にもやらせてくれない?」
「ふむ? 汝にはすでに裁定を下しているはずだが?」
「やってみたいんだよねー。ほら、私の試練ってちょっと不思議な感じで終わっちゃったし?」
実際、試練を通過したっていうのも、ケートに聞いただけだしねー。
それに、弟子の試練だし……一度体験しとかないと、感覚も掴めないしさー。
「よかろう。では、構えるがいい」
「はーい」
「やるがいい、我が眷属『ライジファルコル』よ!」
言葉と共に、ハヤブサは宙へと舞い、周囲に薄霧を発生させる。
なるほど、こんな感じなのかー。
「じゃ、軽く一発……【蝶舞一刀】『水月』!」
ヒュンと風を斬る音が聞こえ、一瞬だけ霧が晴れる。
しかし、手応えはなし、かー。
「なるほどなるほど」
視界にはほとんど影響がないんだけど、弱い静電気を受けてるみたいなピリピリ感がちょっと邪魔してくる感じだねー。
それに加えて、ハヤブサの軌道が縦横無尽過ぎて予想できないのも難しい、かー。
「結局のところ、反応できない速度で斬るってことかなー。私とやった時よりも大分スピードはゆっくりな感じだしねー」
HPゲージは削れていくものの、あまり気にせず私はそんなことを考える。
そうして観察を続け、HPが残り三割を切ったところで、私はハヤブサを真っ二つにしたのだった。
ん?
普通に刀を抜いただけだけど、これで斬れるのかー。
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名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
テイム:ブラックスコーピオン(幼体)『ハクヤ』
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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