大灰刀『回天』
前回のあらすじ
・シロvsグレートウルフ
・カリンの指示が鬼畜の所業
「それじゃ、シロ。頑張って」
「はい!」
アルテラ平原のボス、『グレートウルフ』を倒したことで手に入れた『灰狼の爪』を使って、カリンに作ってもらった新武器、大灰刀『回天』を構えたシロが、怯えることもなくゆっくりと進んでいく。
武器以外の装備は、ゲーム開始時のままの初期装備。
まあ、狼を倒してから、リアル一日しか経ってないことを考えれば……武器ができてるだけでもすごいこと、らしい。
「ま、シロだったら、武器を新調するだけで勝てるでしょ」
私なんて、素手で倒しちゃったくらいだしねー。
狙いさえしっかりつけられるなら、あとはのんびり回避してればいいだけだし。
「グラァァァ!」
そんなことを考えていたら、部屋の中央に大きなモンスターが姿を表した。
今日の予定は、シロを第二層に連れていくこと。
つまり、そう、黒サソリだ。
「グラァァァァ! ……グラァァァ……」
「なんか今日のサソリ、元気ないね」
「グラ、グラァァ……」
両手のハサミを持ち上げて、威嚇のポーズをするも、なんか視線のような気配が私の方をチクッチクッと……まるでチラ見してるみたいな感じに突き刺さる。
……なにか用?
シロも、相手の様子がおかしいのが気になるのか、手を出すのを悩んでる感じだねー。
「まあでも、今日は観戦だし……」
よっこいせっと、部屋の壁際に座り込んで、ボーッとしてみれば、黒サソリからの視線がまたしても突き刺さる。
その視線をしばらく無視していると、黒サソリは「グラ……?」と小さく鳴いて、気を取り直すように「グラァァァ!」と大きく鳴いた。
なんなんだお前は。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「グラァ!」
「では、よろしくお願い致します」
「……グラァ」
威嚇をものともせず、優雅に頭を下げるシロに、黒サソリもなぜか頭を下げたように一瞬身を低くする。
……そんなモンスターだったっけ……?
「参ります! ――ハッ!」
「グラァァァ!」
右上から斬り落とすように動いた刃を、黒サソリはハサミで防いで、返すようにもう片方のハサミを繰り出す。
それをスルリと回るようにして避けたシロは、流れるようにハサミの根本を斬り裂いた。
やっぱり楽勝っぽいねー。
「……でも、サソリってあんな動きしてたっけ? この間よりも強くなってるような?」
いや、もしかするとしてたのかもしれない。
ただ、私が全部潰しちゃったから……。
なんかごめんねー。
「今です、【薙刀術】『紅葉突』」
「グラッ!」
ハサミを引いた一瞬の隙を突くように、シロが鋭い連続突きを繰り出す。
しかし、黒サソリはそれをハサミで防ぎ、頭上から尾を突き入れた。
「くっ」
「グラッ、グラァ!」
死角からの攻撃をギリギリのところで避けたシロは、尾の付け根を狙い、薙刀を振るう。
その攻撃はHPゲージをしっかりと削り、このままならシロの勝利は確実……と、そう思った時だった。
「グラァァァァァ!」
地面に突き立てた尾を軸に、黒サソリが回転しはじめた。
……ええ?
困惑する私をよそに、黒サソリは次第に回転速度を増し、なんとか避けていたシロを体当たりで吹っ飛ばした。
……えーっと?
「と、とりあえずシロは……大丈夫そう?」
ただ、ドガーンって感じに叩きつけられたのを見るに、たぶん気絶状態になってる可能性はありそう。
黒サソリの方も、速度を緩めていってるし、黒サソリが追撃するよりも先に動き出せるかがキモかなー。
「グラッ!」
止まって、尾を地面から抜いた黒サソリが、私の方に視線らしき気配を投げて小さく鳴く。
その後すぐにシロの方へと突撃していった。
……いったいなんなんだ。
「グラァァァァ!」
「……【薙刀術】『柳雅旋』!」
「グラッ!?」
突きだしたハサミを、そっと撫でるように刃が躍り……まるでカマイタチが過ぎていったかのように斬り落とす。
『柳雅旋』は薙刀の本領発揮とも言える。
長柄の先端についた刃で薙ぐことに特化した武器ならではの、広範囲に作用する薙ぎ技。
「本来は薙ぐだけの技なのが、シロが使うことで、まるで踊るようにその刃を滑らせる技になる。アレは最初見たときびっくりしたんだよねー。カウンターしようにも、衝撃が奪えないから跳ね返すこともできないっていう」
まさに、柳に風……私の力も、ナインの勢いも、さらりと受け流して対応してしまう。
そんなシロ向きの技だ。
「てか、さっきのダメージも思ったより受けてないみたいだし、これはガードしたか、受け流したかって感じかな?」
そもそも、さっきの衝撃音なら、初期装備のシロは即死しててもおかしくなかったしねー。
ノーダメージとはいってないみたいだし、完全には受け流せなかったんだろうけど。
「ま、でもこれなら……とりあえず金までは楽にいけるかな?」
とか、完全に他人事みたいに観戦しつつ、私はアイテムボックスから飲み物を取り出す。
んー、やっぱりミトのジュースは美味しいなぁ。
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名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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