9Kはエルマンで
前回のあらすじ
・第三層の話をカリン達にした
・魚釣り
side.ナイン
「ありがたい申し出っスけど、本当に自分で良いんスか?」
第一層にある喫茶エルマンに呼び出された自分は、今、トッププレイヤーのケートにキャラバンの誘いを受けていた。
いきなり今日来て欲しいって言われたのはびっくりしたっスけどね。
「にゃはは。声をかけてるのはこっちだぜー。まあ、お願いしといてアレだけど、ナイン君一人だけでの参加はちょっと難しい感じだけどにゃー」
「そうなんスか? 誰か誘ってこいってことっスかね?」
「そうそう。うちのメンバーって、ほら……なにかと二人で動くことが多いからにゃー。ナイン君も、半固定の相方がいた方が楽だろうし」
「なるほどっス。しかし、相方っスかー」
いきなり言われても難しいっスね。
……まあ、いなくはないんスけど。
「ナイン君って普段はソロっぽいし、難しいかなーとは思ったんだけどね。私らに物怖じしなさそうなプレイヤーって、あんまりいないからさー」
「トッププレイヤーの方々っスから。むしろ、自分が誘われるのにも驚きっスよ」
「ナイン君は一緒にフンコロガシも倒したし。あのアナウンスで、大半のプレイヤーには、私らの仲間だと思われてたりするんじゃないかにゃー?」
「……それはあるかもしれないっスね。ここ数日、ちょっと視線を感じるっスから……」
現に今も感じてたりするっス。
ケート達はいつもこんな視線を浴びてて、疲れないんスかね?
「それでどうかにゃー? 誘えそうな人いるかにゃ?」
「あー、いるにはいるっスよ。ただ、なんていうか……」
「なんていうか?」
「その、少し引け目があるんスよね。モモ、あー、その子に」
リアルネームを口にしてしまい、すぐに言い直す。
慣れてきたとはいえ、なにも考えずに口に出すと、未だに間違えるっスね。
リアルで友人っていうケート達はすごいっスよ。
「モモさん?」
「いや、それはリアルネームなんで、忘れてくださいっス。ゲーム内はシロっスよ」
「なんだか可愛い名前だにゃー。女の子かい?」
「そうっスそうっス。リアルもゲームも可愛い女の子っスよ」
「へーえ、ナイン君もスミに置けませんなぁ?」
にやにやと笑いつつ、ケートはそんなことを良い始める。
なんなんスかー、ケートだってセツナがいるじゃないっスかー。
「てか、そういう関係じゃないっスよ。ただの友達っス、友達」
「ちぇっ、なーんだ。引け目があるとか言うから、痴情のもつれかと思ったのに」
「……それは、まあ、あながちハズレでもないっスけど」
「……マジで?」
「マジっス」
断言するように頷いた自分に対し、ケートは露骨にめんどくさそうな顔を晒す。
そ、そこまで嫌そうにしなくてもいいんじゃないっスか!?
「ナイン君、その子、本当に友達なんだよね?」
「そうっスよ。それはもう絶対っス」
「……普通、痴情のもつれが起きた相手とは、友達にはならないと思うんだけど」
「あー、なんていうんスかね……これ、シロには言ったってバラさないでくださいっスよ? その……自分、リアルでシロに告白されたんスよ」
「ナイン君ってもしかして、男の子?」
違うっスよ!?
どこからどうみても、女の子っスよ!
大和撫子っス!
「大和撫子は違うと思うにゃー」
「それは自分も言い過ぎた気がするっス。なんにせよ、自分は女っスよ」
「じゃあ、女の子から女の子に告白したってことかにゃー? リアル百合って存在するんだにゃー」
「百合が何かは分からないっスけど、その通りっス。ただ、その……自分、告白を断ったんスよ」
「うわ……そりゃ引け目あるっていうか、普通そんな子をキャラバンに誘おうとしないぜー? むしろ、関わらないように気を使うくらいのレベルだと思うにゃー」
それはそうなんスけど。
なんていうか、自分は離れようとしたんスよ?
でも、シロの方が「友達でも良いので」ってくっついてくるんスよー。
「……めちゃくちゃ強いな、その子」
「そうなんスよ。しかも告白後の方が、告白前よりもグイグイ来るんスよ」
「何、心アマゾネスなの? やめてよ、うちのキャラバンにはセツナっていう、体アマゾネスがいるんだぞ。女子しかいないのに、戦闘民族の村みたいになるじゃん」
「自分、ケートさんも相当だと思うんスけど」
「わかってらい!」
勢いよくケーキの最後のひと切れにフォークを突き刺し、ケートは豪快に食らう。
そういうところがアマゾネス感あるっスけど、良いんスかね?
「そんな訳で、特には気にしなくて良いんスよ」
「ふーん。……で、ナイン君はその子を入れて、その子とどうなりたいのかにゃ?」
「なにがっスか?」
「ナイン君は離れようとしたけど、その子がグイグイ来るから友達みたいな関係になってるって言ってたにゃ? つまりそれって、ナイン君はなにもしてないから成り立ってる関係ってことにゃ。……でも、今回は違う。ナイン君から行動を起こして、その子を巻き込もうとしてるわけにゃ」
何かを試すような、確かめるような目で自分を見つめ、言葉を紡いでいくケートに、自分は思わず目を逸らしてしまう。
その答えがわからないからじゃない。
そんなこと、分かりきっているからだ。
「ナイン君は、関係を変えようとしてるんじゃないかにゃ? 最初に言ってたことだけど、引け目があるんだよね? それをどうにかしたいんじゃないかにゃ?」
「あー、さすがっスね。全部バレバレっスか」
「ケートちゃんは天才だからにゃー。大方、ナイン君のことにゃ、断るときに“女同士なんておかしい”みたいなことでも言ったんじゃないかにゃー?」
「……な、なんでそこまで分かるんスか?」
ほぼほぼ同じ言葉を吐き捨てた過去の自分を思い出し、心が沈みそうになる。
そんな自分の目の前で、ケートは「だって、私も、同じようなことを思ってたからにゃー」とあっけなく笑った。
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