イイ女の秘訣
前回のあらすじ
・ケートが試練に挑戦
・不完全燃焼ォ!
「……ナ、セ……、セツナ!」
必死そうに名前を連呼する声が届き、私はゆっくりと目を開いた。
目の前に広がるのは、石造りの天井。
そして、覗き込むケートの顔だった。
「セツナ! やっと起きた……まったく、お寝坊さんだにゃ~」
やれやれと、呆れるような言葉を吐きながらも、ケートの声は少しだけ震えていて。
私はそんなケートの目尻にそっと指を沿わせ、「おはよ」と涙を拭った。
「はいはい、おはよーさんだぜ。で、気分はどうかにゃ、眠り姫」
「うむ、苦しゅうない」
「姫じゃなくて殿だったぜー」
にゃははと笑うケートが、私をそっと立ち上がらせてくれる。
ふむ、どうやら第二層のボス戦は終わったみたいだ。
「ケート。その、」
「その答えは称号を見れば分かるぜー」
「称号? ああ、なるほど」
言われるがままに称号一覧を見れば、そこにはしっかりと“第三層到達者”の称号が追加されていた。
つまり、ボス戦はちゃんと突破できたということだろう。
でも、ケートがどうやってあのハヤブサを倒したんだろう……?
「にひひ。ケートちゃんの戦いぶりを見られなかったのは残念かにゃー?」
「ちょっとだけね。私でも、捉えるだけで精一杯だったのに、どうやってケートが倒したのかなって言うのは気になるし」
「そこはまあ、秘密だにゃー。ほら、イイ女には秘密があるものだぜ」
「はいはい」
自らの頬に手を当てて、影を背負っているみたいな……ちょっとよくわからないけど、なんかそんな感じの顔をしたケートに、私は全く興味がないと言わんばかりの声で、軽く受け流す。
そんな私の反応に「むう」と膨れ面を見せたケートを笑い、私は「ありがと」と小さく呟いた。
「さーてと、セツナも復活したし、行きますかにゃー?」
「うん、行ってみよっか。……たしか、一面海の世界だっけ?」
「そう言ってたにゃー。ま、行ってみれば分かるぜい」
それもそっか。
二層は荒野ばっかりだったし、海、楽しみだなー。
□
side.カリン
今のゲーム内状況的に、やばいものが出来てしまった気がする。
いや、まだ試作であり、さらに単発式のライフル形状。
今の完成状況であれば……バランスは崩れない……?
「えっと、カリンさん。これ、どうしましょう?」
「一旦封印」
「え、封印ですか?」
「ん」
それでも、今は外に出せない。
決闘システムでの試し撃ちでよかった……外で、試し撃ちなんかしてたら、大事になっていたかもしれないから。
なぜなら、この呪符銃。
たった一枚の『鬼火』呪符消費で、十枚束ねた鉄板、それを支えるトレントウッド丸太を貫き、さらにその後ろで射線を見ていたミトのHPを、八割ほど吹き飛ばしたのだから。
防具をつけてなかったら、ミトのHPは全損してたかもしれない。
「説明、難しい」
「あー……ですね。セツナさんに、どう説明しましょうか……」
エルダーウッド丸太を使って作った銃には、トリガーを引けば呪符が発動する仕組みに加え、使用者のMPを銃内部に溜めて放つ仕組みも組み込んである。
この溜め込んだMPを使って、呪符の威力を向上させているのだ。
その辺りの考え方は、魔法をメインで使っているケートに教えてもらい、銃に溝という形で彫ってある。
……むしろ、それをやらなければ、ここまで威力はでなかったのかもしれない。
「ひとまず、一度見てもらったら良いかもしれません。決闘システムでなら、外に漏れる心配もありませんし」
「ん」
「ケートさんなら……異常性も理解してくれると思います。たぶん」
「たぶん」
そもそも、ケートの脳内自体が異常性の塊な気もするのだけれども。
それでも、私達は職人だ。
商人の嘘は神もお許しとは言うけれど、職人の腕は嘘をつけない。
なればこそ、結果がどうなったのかということに関しては、正直に伝える他なく。
「面倒」
「あ、あはは……また余裕ができたら、改良してみましょう。ほら、セツナさんの意見も知りたいですから」
「ん」
ひとまずこの話題は置いておこう、と銃をアイテムボックスへと仕舞った直後、脳内にアナウンスが響く。
どうやら、二人は無事、第二層のボスを突破したらしい。
しかし、第二層のボスはどうやら……前回のボスとは違うみたいだ。
「試練?」
「試練の通過って言ってましたよね?」
「ん、不思議」
「ですね」
ミトと二人、首を傾げつつも、ケート達にメッセージを飛ばしておく。
今回も同じ、祝の一文字だけだけど。
「そういえばセツナさん達、第二層のボス称号を全部手にいれちゃいましたね」
「ん」
「東のボスだけは、ナインさんと一緒にですけど、東西にゲートキーパーと、全部セツナさん達です。すごいですね!」
「ん」
「でも、もっとすごいのはカリンさんです! ナインさんも含めて、三人共の装備を、全部カリンさんが作ってますから」
満面の笑みでそう言ってのけるミトに、私はなんとも言えず、まばたきを繰り返す。
たしかに、そう言われるとそうなんだけども。
「道具は、所詮、道具。使い手、次第」
「それはそうですけど……」
「驕らない。今より、先、のため」
「えっと、今よりももっと良いものを作るために、驕らないで、精進しようってことですか?」
「ん」
自分に出来ることにはしっかりと自信を持ち、その上で、さらに上を目指す。
卑屈は足元をふらつかせ、驕りは目の前を眩ませる。
だからこそ、自信を忘れず、謙虚に、貪欲に手を伸ばし続けるのだ。
今までも、これからも。
「難しいですね……」
「ミト」
「……はい?」
「私は、先に行く。いつか、追い付いて」
あの二人のように、隣り合わせに切磋琢磨する関係も羨ましいけれど。
私は、私達は……追うものと追いかけるものの関係でいたい。
時に手を差しのべ、時に背を押される関係で。
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名前:セツナ
所持金:105,040リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』改
所持スキル:【見切りLv.4】【抜刀術Lv.15】【幻燈蝶Lv.6】【蹴撃Lv.11】【カウンターLv.10】【蝶舞一刀Lv.11】【秘刃Lv.2】【符術Lv.3】【八極拳Lv.5】
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