秘そめし
前回までのあらすじ
・イベントがあるよ。
・ケートがなにか悩んでる?
「そういえば、カリンさん達のイベント用作品ってどんな感じなんですか?」
「装備以外」
「あ、えっと、カリンさんの装備部門以外は完成しました」
「つまり、カリンさんが出す楽器と、ミトさんの飲料は完成ってこと? 早いなー」
イベントまでリアル一週間を切ったとはいえ、自信を持って完成と言えるものを作ってるのはすごいかも。
どんな感じなのかなー?
「えへへ。セツナさん、良かったら飲んでみますか?」
「え、いいの? 飲んでみたい!」
「では、ちょっと準備しますね」
そう言ってミトは台所の方へと歩いていく。
アイテムボックスから出てくるものとばかり思ってたんだけど……違うのかな?
「提出は期限最終日にする予定です。カリンさんの装備品完成が、その辺りになりそうなので」
「え!? あ、じゃあもしかして邪魔しちゃった?」
「問題ない」
「カリンさんもこう言ってますし、気分転換も大事ですから」
そう言って微笑むミトにホッと胸を撫で下ろし、薄紫色のジュースを受けとる。
色的にはブドウ、かな?
中に少し泡が見えるから、もしかすると炭酸が入ってるのかも?
「あ、美味しい」
「良かったです。結構試行錯誤して、その味に辿り着いたのは一昨日なんですよ」
「そうなんだー。シュワッとして爽やかだけど、ちょっと深みのあるマイルドなところもあって……濃すぎないブドウの味が感じられるよー。すごいね!」
「えへへ。ありがとうございます」
嬉しそうに笑うミトにほっこりしつつ、作業を続けるカリンの傍らにあるカップに目を向ける。
……あれ、ただの水じゃない?
美味しいのに、飲まないのかな?
「カリンさんの飲み物が気になります?」
「え? あ、うん。これ、すごい美味しいから、飲まないのかなって」
「あはは……。カリンさん、試飲だけでかなりの数を飲んでるので、暫く飲みたくないみたいです……」
「あ、そう……」
なんとも言えない気持ちになりながら、私はカップの中のジュースを飲み干す。
……新しいなにかを生み出すのって、大変なんだなー。
□
そんなこんなミトと話をしていた私だけれども、ミトが「そろそろカリンさんのお手伝いに戻りますね」と、作業に参加し始めたのもあって、私は作業場から外へと出ていた。
二人とも、イベントに向けて頑張ってるんだなー。
「さて、それじゃ私はどうしようかな……」
ゲートのあるイーリアス中心広場で、少しだけ考えて……「よし」とゲートをくぐる。
みんながイベントに向けて頑張ってるし、私も頑張ろうかな!
……というわけで、私は今、二足歩行の蛙と戦っていた。
戦う、というよりも、訓練してる感じだけど。
「むっ、右!」
「ゲコッ!?」
「次は左! それから、正面!」
「ゲココッ!?」
振り下ろされる剣を避け、突き出される槍を逸らし、飛んできた矢を切り落とす。
避けて斬ってはいつも通り……ただ、私は今、目を閉じてそれを行っていた。
「今! 風の型、『旋花』!」
「ゲコ!? ゲコォォォ……」
「ふへー。【見切り】の訓練は大変だなー」
そう、今は【見切り】のスキルレベル上げを頑張っているのだ。
私には【幻燈蝶】もあるし、カリンの装備もあるしで、二足歩行蛙程度ならダメージを受けても死ぬことはない……はず。
一応MPにだけは気を付けとこ……。
「でも、訓練を始めて一時間くらいで、スキルレベルは3まで上がったし、何度か攻撃を受けてるから【幻燈蝶】も発動できてるし、いい感じかなー」
湿原だから、足も取られて、足捌きの練習にもなるし。
うんうん、我ながらいい案!
「そういえば、なにか取れるスキル増えてたりするのかな? えーっと……スキル欄の習得可能リストはーっと」
いつもスキルレベルしか確認してないスキルの項目を、習得可能リストのところまで動かす。
するとそこには、前回見たときよりもすごくたくさんのスキルが表示されていた!
いつのまに!
「使えそうなスキルはあるかなー? ん? 変なのがある」
スキル名を流し見していると、その中のひとつに目が止まる。
そのスキル名は……【秘刃】。
スキル説明には、『数秒、斬撃を置く』しか書いてない。
斬撃を置くって何。
「……まあ、使ってみたら分かるかな? とってみよーっと」
軽い気持ちでスキルを取得。
すると、ちょうどいいタイミングで、二足歩行蛙が視界に現れた。
「とりあえず、残り1体だけにしようかな」
「ゲコ?」
「【蝶舞一刀】風の型、『旋花』!」
「ゲコォ!?」
戦闘開始直後に、技を叩き込まれた蛙達が、光に飲まれて消えていく。
『旋花』は下から上に斬り上げる技だから、弱点の顔が綺麗に真っ二つになるんだよねー。
「ゲ、ゲコ……」
「よしよし、それじゃーやってみよー。【秘刃】」
スキル名を呟いた瞬間、目の前に透明な壁が出来たような、不思議な感覚が生まれた。
……たぶん、これを斬ればいいんだろうなー。
「じゃあ、蛙さんの正面にスパッと」
「ゲコ?」
届かない位置で刀を振った私に、たった1体残された二足歩行蛙は、呆気にとられたみたいに固まる。
そして、「ゲコココ!」と、まるで笑うみたいに鳴いて、まっすぐ突っ込んできた。
「お、よしよし。どうなるかなーっと」
「ゲコー!」
勢いよく突っ込んできた二足歩行蛙が、あの壁があったところに入った瞬間……スパンッと体に刀傷を生む。
「ゲ、ゲコ……?」
「あー、なるほどー。そういった感じなんだー」
突然生まれた刀傷に、理解できないような動きで後ずさる二足歩行蛙。
そんな姿を見て、私はにっこりと微笑み「ありがとうございました」と、頭を下げて刀を振るった。
これなら、居合いのデメリットが消せそうだー。
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名前:セツナ
所持金:11,590リブラ
武器:居合刀『紫煙』
防具:戦装束『無鎧』
所持スキル:【見切りLv.3】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.4】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.9】【蝶舞一刀Lv.8】【秘刃Lv.1】
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