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また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記  作者: 一色 遥
第二章『名前をつけるなら』

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弦を弾いて煙に巻く

「その、すごいな。二人とも」


「ええ……ちょっとお姉さん驚いちゃった」


 ざわざわし始めたなかで、グレン達が私とケートの方へとやって来て、歯切れ悪く言葉を紡ぐ。

 なにがどうなってこの状況なのかわからず、ケートの顔を見れば……ケートは意地悪げに、にししと笑っていた。

 うわぁ……。


「とりあえず、ケートちゃんなんだけど……あの威力はなに? 『スパイラルシュート』は【風魔法】のLv.5で覚えられる魔法なのは知ってるけど、あのフォージピルバを一撃は無理なはずでしょ?」


「にっひっひ、そこは秘密なのだー」


「まあ、そうよね。でも、一撃かぁ……ウォール系の練習しておかないと不味いかもね」


 イチカが同じ魔法使いとして、ケートに質問してみても、当のケートはお口チャックで取り合わない。

 まあ、楽しげに笑ってるから、お口は開いてるけど。


 ちなみに、フォージピルバが巨大ダンゴムシの正式名称らしい。

 なんだかカッコいい名前だなー、ダンゴムシなのに。


「セツナさんは、その……居合い、なのか? うちのメンバーにも刀を使うやつはいるが、居合いはスキルアシストされてないって聞いてたんだが」


「ええ、まあ。基本的には居合いですね」


「刀身がカッコいいから、見せられなくて勿体ないんだけどにゃー。まあ、一瞬閃くのも、それはそれでカッコいいんだけどもねー」


「その、良かったら刀身を見せてもらえないか? ああ、情報はロックで見えないようにしてくれていいから」


 グレンの申し出に、私はケートにチラッと目配せをして……ケートの許可が出たのを確認してから、刀を抜く。

 ちゃんと設定で情報を見えないようにしてから、紫煙をグレンへと手渡した。

 もちろん、持ち逃げ不可にはしてるので、もんだいなしなし!


「無銘で、号は紫煙」


「これは……すごいな。見ただけで業物と分かる一品だ」


「紫煙っていうのは、刃の色と刃文の形からかしら。綺麗な薄紫をしてる」


「ああ、これはアイツが見たら涎を垂らして欲しがるだろうな。っと、ありがとう。良いものを見せてもらった」


 満足したらしいグレンから紫煙を返してもらい、鞘へと納める。

 私達とは別のトッププレイヤーから絶賛されてたって、あとでカリンに伝えておこーっと。


「さてさてー、セツナー。そろそろ行こっかー」


「ん? 行くって、どこに?」


「とりあえずは換金かにゃー。その後は、ちょっと茶でもしばこうぜい!」


「はいはい、行こっか。では、グレンさん達、またイベントで」


 キリッとした顔でナンパみたいな言葉を吐くケートに苦笑しつつ、グレン達に軽く会釈する。

 そして「お手を拝借、姫」と、ケートが差し出した手を取って、空いた手で頭に手刀を落とした。

 人がいっぱいいるところで、変なこと言わないの!



「で、なんで急にお茶?」


 イーリアスの街に帰ってきたところで、私は隣を歩くケートにそう訊いてみた。

 あまりに急だったし、それにグレン達も呆気に取られてた感じだったし?


「んー? あのままあそこにいたら、もっとたくさん情報が漏れそうだったからにゃー。元々の目的は、セツナに私以外の魔法使いを見せることだったし、それは最初の時点で終わってたからにゃー」


「それもそっか」


「ま、イチカさんもトッププレイヤーだから、参考にするのはちょっと違うかもだけどねー。大多数の魔法使いは、もっと発動に時間かかるものだしにゃー」


 ……そうなの?

 イチカさんの魔法発動は、たぶん起動から3秒足らずくらいだったはず。

 まあ……3秒もあれば、全然近づけるんだけど。


「セツナに覚えておいてほしいのは、魔法のイメージ開始と同時に、魔法陣は展開開始されるってことだぜい。私の場合は、ほぼノータイムだから発動と同時に出てる感じだけど、普通は違うのにゃ」


「えっと……?」


「弓みたいなものと思うと良いかもね。ほら、弓って()つ前に、矢をつがえて弦を引くでしょ? 魔法の発動も同じで、まず起動(イメージ)そして、発動って感じなんだにゃー」


 えーっと、つまり……弓の場合は、射る時は矢をつがえて弦を引くという、タイムラグが発生する。

 それが魔法でも同じで、魔法を放とうと思うと、イメージ開始から、魔法陣完成までにタイムラグがあるってことかな?

 

「タイムラグがあればセツナは十分近づけるだろうし、近づけなくても、相手の集中を途切れさせれば発動は止められる。それくらいはセツナならできると思うしにゃー」


「んー……うん、方法は考えておくよ」


「うむうむー。戦術と戦略はどれだけ考えておいても問題ないよ。考えないよりも考える。そうしておけば、いざというときの助けになるし。……まあ、選択肢が増えるから、選択をミスらないようにはしないといけないけどねー」


 考えないよりも考えた方がいいけれど、考えすぎて動けないなら、考えない方がいいっていう話?

 むむむ……そういうの苦手なんだけどなぁ……。


「あはは。まあ、いろいろ言ってるけど、セツナはセツナらしくが一番だよ。そんなセツナだったから、私が一緒にいれるんだし」


「ほえ? どういうこと?」


「なんでもなーいよ。んー、アルテラのエルマンに行こっか。イーリアスはなんかガッツリ系が多いし」


 そう言ってイーリアス中心広場のゲートに向かうケートの後を、私は追いかけたのだった。

 なんだろ……圭、ちょっと変?

 いや、いつもおかしいけど。


□□


 side.カリン


「ん?」


「カリンさん? どうかしました?」


「ん、少し」


 作業場で装備を作っていた私は、針を置いて、生産スキルに付随している設計ウィンドウを開く。

 そして、思い付いたイメージを簡易的に書き出した。


「えっと、カリンさん。これって」


「可能?」


「……人のいないリアル深夜時間に確認するだけなら」


「ん。了解」


 ミトの言葉に頷いて、私は回復ポーションを飲み干す。

 苦い、すごく青臭くて苦い。


「べ、別に飲まなくても、中身だけ捨てればよかったのでは……?」


「ダメ。成果」


「えっと、私が作った物だから、捨てるのはダメってことですか?」


「ん」


 人が作ったもの……例え中身が必要ないものだったとしても、捨てることはやってはいけない。

 それは、なにかを作る立場として、絶対に犯してはいけない禁忌。

 そのことを忘れた瞬間、私は作るということの本質を忘れてしまうから。


 あ、飲まずに別の容器に移しておいてもよかったかも……ぐぅ。


-----


 名前:セツナ

 所持金:12,290リブラ(+5,010)


 武器:居合刀『紫煙』

 防具:戦装束『無鎧』


 所持スキル:【見切りLv.1】【抜刀術Lv.14】【幻燈蝶Lv.3】【蹴撃Lv.6】【カウンターLv.8】【蝶舞一刀Lv.8】 

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