番外編『サプライズ』
番外編なので、本編とはまーったくこれっぽっち関係の無い話です。
そして、投稿開始がいつになるかはまだ目処が立ってないですが、第五章の構想を練っています。
気長にお待ち頂ければー!
「大っニュースにゃー!」
そんな大きな声と共に作業場の扉が勢いよく開けられ、私と一緒にのんびりお茶をしていたミトが「ひゃっ!?」とお茶をこぼした。
さらにシロは自分の鼻にお茶をかけ、ナインは椅子から落ちてたりする。
つまり、めちゃくちゃ。
「ど、どうしたんスか!?」
「すっごい大ニュースなんだよ!」
「それは分かったけど、とりあえずこっちは大惨事だから」
「あはは……」
机を拭くミトと、椅子に座り直したナイン。
そして、我関せずと作業を進めるカリン……いや、ちょっとだけ意識がこっちを気にしてる、かな?
なんにしても、ケートはもう少し落ち着いて入ってきてほしい。
「それでえっと、ケートさん。なにか大ニュースなんですか?」
「うむ! 大ニュースだぜ!」
「それは分かったから、早く話して」
「チッチッチ、焦りは禁物だぜお嬢ちゃん。驚いて腰を抜かしちゃいけねぇからな……」
誰がお嬢ちゃんよ。
「とりあえずセツナは、手を刀から離して聞いてほしいんだけど」
「チッ」
「こわっ。あーうん、その……アルテラの街にダンジョンが見つかったみたいなんだよにゃー」
「ダンジョン?」
ダンジョンって、サソリがいた洞窟みたいなやつだよね?
あんなのが街の中にあるの?
「それって街の中っスか?」
「だにゃー。路地裏に地下への道があるのは知ってるかにゃ? そこってゲーム開始時から封鎖されてたんだけど……」
ケートが言うには、あるプレイヤーが仲良くなったおじいちゃんが、アルテラの街の墓守だったとかで、“最近、地下墓所の奥から変な音がするので調べてほしい”と依頼されたらしい。
で、その調査場所が封鎖されてた道の奥だったとかで、その依頼が終わった後に、恒常的に解放されるようになったとかなんとか。
つまり……どういうこと?
「依頼が解放クエストだったってことだぜー。依頼を達成したことで、全プレイヤーに解放されたって感じかにゃー」
「ふーん……」
「まあそれで、いっちょ行ったろやないかい! って思って。ただ、セツナとシロちゃんは厳しそうなんだよにゃー」
「そうなのですか?」
「うむー。結構ダンジョン内が細いみたいでにゃー。武器持ちはかなり厳しいみたいだぜー」
あー、なるほど。
刀とか薙刀は難しいってことね。
「だったら別に殴ったり蹴ったりするけど……」
「あー……いや、その」
「なに?」
「いやー、敵の八割がゴースト、なんだよにゃー」
「……絶対行かない」
「だ、だよにゃー!」
「はっはっはー」と、空々しく笑うケートを尻目に、私はお茶を飲む。
はー、お茶美味しいなー。
「そんな訳で、ナイン君とリンはどうかにゃー?」
「自分っスか? 大丈夫っスけど、ゴースト相手に攻撃できる手段無いっスよ?」
「大丈夫だぜー。ゴーストはこの天才魔法使いケートちゃんがどうにかしてやるぜ!」
「おおー、さすがっス! 頼りにしてるっスよ!」
「はっはっは、良きにはからえー。……で、リンは?」
□□□
「まさか、カリンさんも行くとは……」
「あ、あはは……」
「でも、着いていく理由が素材のためというのは、カリン様らしいですの」
「だねー」
まあ、ケートは予定通りって顔してたし、ミトも驚いてなかったから、二人には着いていくって分かってたみたいだけど。
もう、こういう時だけは頭が働くんだから。
「でも、この三人だけなのは初めてですね。セツナさんもシロさんも、普段は外に出ていますし」
「言われてみればそうかも? カリンさんは常に籠ってるイメージがあるかなー」
「私も、まだ日は浅いのですが、カリン様はほとんど作業をされている印象がありますね。この装備も短期間で仕上げて頂きましたし」
「あー、武器なんてリアル1日で完成だっけ? 早かったよねー」
あのときは早いのか遅いのかよく分かってなかったけど、ケートやカリンいわく“普通は装備製作にリアル一週間は欲しい”らしい。
つまり、私とケートの装備もめちゃくちゃ早かったってことなのだ。
さすがカリン。
「でも実際どうなの、その辺。同じ生産プレイヤーとして」
「んー、そうですね……カリンさんはすごいですよ。カリンさんも自分の作業をしているのに、私のやっている作業までしっかり把握されていたり、時々助言が入ってきたりしますから」
「へー。さすがカリンさん。さすがって感じ」
「ですの。……ナイン様も、もう少しそういった面が身に付いていただければ、安心なのですが」
お、なんか飛び火してる。
まあ、でも……ナインにはたしかに難しそう。
私も『間違えて』斬りそうな動きしてることあるし。
「ナインさんはねー。突然出てくるから」
「そうですの! この間も“シロが攻撃されそうだったんで、つい出ちゃったっス!”って、いきなり目の前に出てこられて……」
「あー、はいはい。ごちそうさまですー」
「あ、あはは……ケートさんはそういうことしなさそうですよね」
怒ってるのか喜んでるのか、むしろどっちもっぽいシロを軽くあしらっていると、まさかの飛び火パート2。
ケート、ケートかー……。
「変な位置取りはあんまりないかなー。強いて言えば、大体私の隣か少し後ろにいるのは気になるけど」
「え? でも、ケートさんは魔法使いですし、セツナさんの後ろなら問題ない……ですよね?」
「私もそう思いますの」
「ああ、違う違う。“私の”隣か少し後ろなんだって。たぶん、今もナインさんよりは前にいる感じじゃないかなー」
というか、絶対いる。
だって、あの三人で接近戦できるの、ケートしかいないし。
ケートのことだから、カリンを守る形にするだろうし、ナインは偵察とか遊撃とかに使いそうだよねー。
「てか、ケートはなんでもかんでも自分でやろうとしすぎ。もうちょっと周りを頼って欲しいっていうか……そうじゃない?」
「え? えーっと、セツナさんは結構頼られてますよね?」
「いや、全然! 二層のボスのこととか、カリンさんの依頼窓口とか……あれ、思った以上に全然頼られてなくない……?」
「そ、そんなことはないと思いますよ。ですよね、シロさん!?」
「え、ええ。はい、その……たぶん」
「そこは言い切ってください!?」
いや、ほんとに頼られてないっていうか、かなり甘やかされてるような。
むう。
□□□
side.ケート
「ぶえっくしょい!」
「な、なんなんスか一体!? きったないっスよ!?」
「ナイン君もさっき大きいのぶちかましてたぜ……?」
「ん。同意」
「いや、そうっスけどー」とかボヤくナインを余所に、私はコシコシと鼻をこする。
きっと噂でもされてるんだぜー。
私ってば、いなくても話題に出ちゃうくらい、スーパーな天才だからにゃー。
「それより、リンはもう見えるようになったかにゃ?」
「ん」
「ならそろそろギアを上げていこうぜい! 一気に最奥突撃にゃ!」
「了解っス!」
「ん」
火のついた蝋燭入りランタンを片手に、私達は前進速度を上げていく。
前から来た敵はゴーレムドリルで穴をあけ、後ろから来た敵は矢で叩き落とす。
時々ゴーストがすり抜けてくるけど、魔法ひとつでダウンだぜー!
「……やっぱり、ケートさんは魔法使いじゃないっスよね」
「ん」
□□□
side.セツナ
「で、これからどうしよっか? ケートのことだし、最奥まで行く気満々だろうから、帰ってくるの結構遅くなりそうだけど……」
「そうですね……私も今は急ぎの依頼も入っていませんし、お二人にお任せします」
「あ、そうなんだ? シロは?」
「私もこれといって特には。お二人の希望に合わせさせて頂きますの」
「そ、そっかー」
それって、要は私に丸投げってことじゃん。
んー、どうしよっかなぁ……。
「エルマンにお茶しに行くのも良いんだけど、帰ってきた時にケートがうるさそうだし、かといってこのままココにいても暇だよねー」
「あはは……。私は作業をしてれば良いんですけど、セツナさん達は困っちゃいますよね」
「だよねー。私とシロだけで出ても良いんだけど、珍しく三人だけだし、それもなーって感じだよね」
そんな風にぐぬぬってると、まるで意を決したみたいに「あ、あの!」とシロが口を開いた。
いきなりどしたの?
「もしよろしければ、その……私にお菓子の作り方を教えて頂けませんか?」
「お菓子? あー、ナインに?」
「は、はい。その、恥ずかしながらリアルで成功したことがあまり無く……ゲーム内でなら、どうかと思いまして」
「なるほど」
それは一理あるかも?
ほら、私もリアルで居合いなんてやったこともなかったけど、こっちだったら簡単にできるし。
スキルのアシストってすごいよねー。
「いえ、それはセツナ様自身が凄いのではないでしょうか……」
「そんなまさかー」
「あはは……」
そんなことよりも、シロがお菓子作り苦手ってことが驚きだよねー。
私達の中では一番女の子っぽいし、可愛いし……そういうの得意っぽい感じするのに。
まあ、私は基本食べる専門だけど。
「そういうことでしたら、お手伝いさせていただきます! 私もまだまだですけど、少しはお力になれると思いますので」
「はい、よろしくお願いいたしますの」
ふんす! と気合いを入れるミトとシロを横目に、私は机に身体をもたれかけながら「がんばれー」とエールを送る。
好きな人のために頑張れるってすごいなー。
「え? セツナ様もケート様に作らないんですか?」
「……え?」
□□□
side.ケート
「……悪魔が降臨した」
「……なんスか、いきなり」
「いや、なんかいきなりそんな気がして、背筋に寒気が」
「風邪でも引いたんじゃないっスか? ココ、かなり寒いっスし」
いや、ゲーム内で風邪は引かないと思うけどにゃー。
「そんなことよりも、ココが最奥っスよね? なんもないっスけど」
「だにゃー。まあ、事前情報通りだけどにゃー」
「っスかー。じゃあ、回れ右して帰るっスかねぇ」
「だぜー」
ナインとそんな緊張感の無いやりとりをして、クルリと後ろを向けば……リンが壁をじーっと見ていた。
そして唐突に壁をつるはしで叩き始めた。
……な、なにをやってるのかにゃ。
「えっと、リン? 何してるのかにゃ……?」
「崩す」
「崩すって、ダンジョンの壁は破壊不能だぜー? 壊してもすぐ戻るはずだけどにゃー」
「違う」
言いながらガキョン、ギキョンとリンはつるはしを叩きつけ続ける。
するとどうしたことでしょう!
「壁が壊れたにゃー!?」
「ん」
「す、すごいっス! 隠し部屋ってやつっスよ!」
「ん」
相変わらずの無表情だけど、微妙にドヤってる感じのリンを二人でわっしょいして、私達は隠し部屋へと足を踏み入れた!
なんとそこには……!
□□□
side.セツナ
「完成、した……!?」
「自分で作って、その感想はどうかと思いますの……」
「あ、あはは……」
お皿の上に鎮座する、少し焼き色の濃いクッキー。
多少焼きすぎた感はあるものの、初めての成功品としては申し分ない完成度と言えよう!
……なお、作業場は嵐が来た後のような大荒れ模様だったが。
「なにがどうなって完成したのか全く分からないんですが、スキルの力って凄いですね」
「セツナ様……。とりあえず、リアルでのお菓子作りはやらない方が良いと思いますの。ご自宅が無くなってしまいますので」
「そのレベル!?」
いや、確かに途中何度か爆発したけど、そこまで酷くなかったよね?
それにほら、リアルには電子レンジとかオーブンっていう文明の利器もあるし。
「それが余計に危険だと思いますの……」
「あ、あはは……。でも、完成して良かったですね。ケートさんもナインさんも喜んでくれると思いますよ」
「べ、別にケートのために作ったわけじゃないし」
「そうなのですか? 私はナイン様のために作りましたけど……」
「いや、違うってわけじゃないし、食べさせないってわけじゃないけど。べつにケートのために作ったわけじゃないし」
「あー、えっと、ごちそうさまです?」
「何が!?」
そんなこんなで、わちゃわちゃと話しながら片付けているとケート達が帰ってきた。
その後、ケートがどうなったのかは……。
番外編『サプライズで悪魔召喚するのは止めて欲しいにゃー』了





