師が師なら、弟子も弟子
前回のあらすじ
・ハクヤの特訓をするセツナを置いて、ケートはシロの特訓中
・頭を使わない戦闘民族
side.ケート
シロと向かい合うように地面に座ったまま、私は小さく溜め息をこぼす。
そんな私のは気づくこともなく、シロは「一本の矢……」と、なにやら考え事をしていた。
……でもまあ、唸ってるところを見るに、良い案が出てきてはなさそうだ。
「ふむ。シロちゃん、昔の言葉にも“敵を知り、己を知れば百戦危うからず”ってのがあるにゃ。今、セツナがやってる訓練や特訓ってのは、基本的に“自分を知り、足りないところを鍛える”って感じのやり方だぜ」
「そう……ですね」
「しかーし、それだけでは越えられなさそうなのも現実にゃ! セツナみたいに、挑んだときは不可能だったことを、戦闘中にレベルアップして可能にしてしまう主人公補正の塊みたいな存在とは、私もナイン君も、もちろんシロちゃんも一緒にはできないにゃ。セツナは、対応能力が高すぎるぜー。一度見た攻撃は当たらないとか言うタイプの戦闘民族だぜー」
「え、ええ……?」
そもそも、セツナは運動関係に対しては即応性が高すぎるんだよにゃー。
小学生の頃から、一度失敗した動きは、次のタイミングで克服するみたいなのを繰り返してたし……バスケでディフェンスを抜かれた時も、次のタイミングではもう確実に止めちゃうくらいのアレだったし。
そのせいで、心の底から本気で楽しめなかったっていうのもあるんだろうけどにゃー。
「だからこそ、セツナとは違うアプローチで、我々も強くなっていかねばならぬのです。私が魔法を極めようとしてるのは、動きたくないのが大きな理由だけど、もうひとつの理由としては……セツナには絶対に勝てないし、セツナに置いてかれるのが確定してるからだにゃ。だからこそ、セツナの知らない世界で強くなって、何度でも叩きのめしてやるのだ!」
「……お友達、なのですよね?」
「友達以上、恋人未満かにゃー」
「こいっ……!?」
私の軽口に、シロが顔を紅くしながら固まる。
……ふむ、やはりかー。
シロはまだ、ナインのことが好きなままみたいだにゃー。
難儀難儀。
「ま、それは冗談として、仲良く笑いあうだけが友達じゃないと思うぜー。時にはぶん殴ってでも止めるし、喧嘩上等の勢いで口を出さないといけないこともあるさー。さすがに殺し合うのはゲームの中だけにしとくべきだけどにゃー」
「それはそうですけど」
「そんなわけで、セツナに勝ったことのある私としては、相手をよく知ることも、勝利のためには必要なことなんだぜ! って言いたいんだぜー。今回の相手はプレイヤーじゃないにせよ、このゲームのなかでシステムで管理されて動いてる敵にゃ。……つまり、絶対的理不尽ってのは無い……はずにゃ」
見えない敵が見えない攻撃で、即死攻撃を仕掛けてくる、とかは理不尽の塊だけどにゃ。
あの試練においては、試練の内容に応じて、ハヤブサの動きが決まっている……と見て間違いないにゃ。
なんでもリン達の試練は、提供された素材を使って、指定された物をその場で作り上げることだったらしいし。
その際のハヤブサは、どうやら素材の提供と、タイムカウンターの役割だったらしい。
そして、この話を聞いて気づいたけど、私の試練は、魔法による限界を見せること、だったのかもしれない。
だからこそ、最初に一人で挑んだときは、様子見をしてしまってタイムアップ的な……。
「……できればもっと説明してほしかったにゃ」
「ケート様……?」
「なんでもないぜ。とりあえず、私からの助言としては……あのハヤブサは、翼がないと飛べないみたいだぜ」
「……えっと?」
私の話を聞いて、シロが“なにをそんな当たり前のことを”みたいな顔で固まる。
うむ、私もそう思うし、仕方ないと思うけどにゃ。
ただ、この情報ってのは……かなり重要だと思うんだよにゃー。
「シロちゃんは鳥がどうやって空を飛んでるのかは、知ってるかにゃ?」
「いえ、それはあまり……」
「まあ簡単に説明すれば、翼をはためかせる際に、空気を羽と羽の間に逃がすんだぜ。そうすることで、羽全体に浮力がかかる……みたいな感じだにゃ。翼の動かし方を変えることで、進行方向を操作してる感じだにゃ」
「なるほど。勉強になりますの」
鳥には、はばたきを利用して飛ぶ方法と、翼を動かさず滑空するように飛ぶ方法がある。
滑空は高度が下がるけど、体力を温存しつつ速く飛べるため、鳥達はこの二種類の方法を上手く使い分けてるって感じだ。
更にいうと、ハヤブサは鳥のなかでも最速といわれてる鳥だったりするにゃ。
「つまり、あのハヤブサも、翼を動かして空を飛んでるってことだにゃ」
「え、ええ。そうですけど……」
「頭が固いぜー。ダイアモンド級だぜー? もう少し頭の体操した方がいいぜー? 要は、ちゃんとした鳥の飛び方をしてるってこと。リアルと同じ、魔力とかのファンタジー要素を含んだ飛び方じゃない、ってことだぜ」
「あっ!」
ようやく分かったみたいに、ハッとしたシロから顔を逸らして、私はまた溜め息をこぼす。
ほんと、もう少し頭を使ってほしいにゃー。
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