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回り始めた運命の歯車は羞恥と共に。4

女神様の返答はおおむね予想通りだったと思います。

人生って甘くないね!


(俺に、能力とか技術ってもらえませんか?)


どうせ思うだけで伝わってしまって隠し事が出来ないんだ。


ストレートに聞いてやろうじゃないか。


その質問に対して女神様はこう答えた。


―――申し訳ありませんがそれは出来ません。―――


(ええ……)


―――過度な情報や能力を与える事はその世界の理を曲げてしまう恐れもあります。―――


(与えられた力で世界征服とかしませんよ!そういうの興味ないですし!)


それでも俺は女神様に食い下がる。


―――例え世界に危害を及ぼさない人格であってもそれは出来ません。―――


うむむぅ…。


―――原則、並行世界に迷い込んだ存在に対しては過度の干渉は行わず

最低限の対話と初期対応のみを行うようにさせて頂いていますので。―――


ふむ。という事はこういった例は初めてではないと言うことか。


確かに昔から神隠しや雲隠れやらと、人や物がなくなるというミステリーはあった。


もしかしたらそれらは全て、世界の狭間に運悪く飛び込んでしまったのかも知れない。


―――多くはその通りです―――


あ、やっぱり?


って、そんな話は置いといて…。


今は俺が普通に生きていく方法の交渉だよ。


(で、でもですよ?新しい世界で俺は戸籍も住居もない。

生きるために必要な資金もないんですよ?

これじゃあすぐに死ぬか、生きるために罪を犯してしまいかねませんよ…?)


口を尖らせて犯罪行為をするかも知れないぞ!と半ば脅迫めいた事を口走ってごねる俺に、


―――その問題でしたらある程度対処は出来ます。―――


と女神様はあっさりと返答してくれた。


(え?出来るんですか?)


―――貴方個人に能力や技能の付与は出来ませんが、

住居や存在の証明など、出来る事は行いましょう。―――


(あ、ありがとうございます…)


どうやら俺ツエエエ!にはなれないが、ホームレスだけは回避出来るようだ。


並行世界に行っちゃったらホームレスでした。とか笑えない。いやだよ!


―――まず住居ですが、記号や文字を照合する限りでは、元の世界の住居と

貴方の転移した場所の住居が同じでした。―――


ふむふむ。ってすげえな偶然。


―――現所有者は既に生きてはいないようなので、そのまま継承させておきましょう―――


(あの洋館ですか)


あのやたら広かったホールの風景が甦る。


―――はい。あの建造物が貴方の住居となります―――


(分かりました)


一人で住むには大きすぎるけど、もらえるなら貰っておこう。


―――次に戸籍ですが、ヒト族の証明書を創造するには細かすぎるのでご自身でお願いします―――


(細かすぎる、ですか)


―――こう言う伝え方をすると傲慢だ、と誤解が生じるかも知れませんが、

我々の力が大きすぎて証明書という紙をヒト族の文字と記号で一枚だけ精巧に

作り出すというのは非常に力の配分が難しいのです―――


(どういう事です?)


神様の万能翻訳機能にしてはいまいち分かりにくい。


―――貴方の住む国家を一本の筆と見立てて、その筆で米という穀物一粒に

一万文字を書くようなもの、と思って下さい―――


(難しい、っていうか無理に近いのは分かりました)


それでも神様ならそれすらもやってのけそうだけどね。


(戸籍を自身で、との事ですが具体的には…?)


―――ごく一部のヒト族の、貴方に対する存在と認識を改変します。―――


(俺の存在と認識の改変……)


―――貴方が名乗る事で、対象のヒト族に「貴方というヒト族は存在していた気がする」

と認識させるようにします―――


(人間の記憶操作!?)


―――はい。―――


はい、って。


真顔で凄い怖いこと言ってる女神様。


―――しかし、それをしないと存在の証明が出来ませんが?―――


小首を傾げて尋ねてくる女神様が凄く可愛く見えるがやる事は人体改変だ。


(それは困ります)


困る……んだが、他人の記憶をいじくる事に少々なりとも罪悪感を感じる。


―――改変するヒト族は一部です。一部とは言っても貴方が住む都市単位にはなりますが―――


(東京、ですか)


そこそこ広いな。


いやぁ、でも…俺が生きるのに必要なのと、


あくまで存在を認識してもらうだけだから…。


いいよね?


仕方ないよね?


女神様と共犯になろうじゃねえか…。


(ではそれでお願い致します)


―――分かりました。では最後に資金ですが、前所有者の資金は貴方の資金である、

と認識を改変します―――


(もう、驚きませんが、それはゼロ円ではないって事でいいんですよね?)


前所有者の資金を俺の資金と認識してもらったとしてもゼロ円はゼロ円だからな。


……前所有者さん、死んでるとはいえごめんなさい。


俺も詳しくは分からないが遺産相続とか


贈与とかで無くなっていないんだろうか?


―――ゼロ、ではなさそうです―――


(そうですか。ちなみに資産についても新規で俺の銀行口座を作ったり、

希望の数字を書き込むって言うのは無理なんですよね?)


―――はい。口座を作る事は証明書を作るのと同じく困難な作業になります。

資産についても、亡き人の資産を貴方に譲渡するのとは違い、貴方個人の

資産として無から有として生み出す行為は国家の経済に影響を及ぼしかねませんので。――――


(過度の干渉になる、と。分かりました。)


何はともあれ、住居、戸籍、資産は用意してもらえた。


日本国、日本語、文明レベルは似ている。


後は自分でその世界で調べて生きていって下さいという事だ。


―――我々が貴方に出来る「救い」は全て行いました。―――


(何か、色々と有難うございました)


女神様とのやり取りに終わりが近づいた事を感じて


俺は女神様に深々と一礼をする。


―――1つ、これは不確定な要素ではありますが―――


(え?)


礼をした状態のまま、下げた頭だけを上げて俺は女神様を見た。


―――もし身体に異変や特殊な感覚が備わっていた場合、

それは我々が授けたものではなく世界の狭間を通った影響と思って下さい―――


(は、はい)


終わりがけに言われるとすっごい気になるんですが。


何かあっても神様の責任じゃないからねみたいな。


まぁ、洋館で目覚めた時は身体に怪我や欠損はなかったし。


目も見えていたから大丈夫だろ。


匂いと音は…どうだったんだろう。


無音だったからなぁ……。


―――それでは現世にお戻しします―――


そう言って女神様が両手を前にそっと突き出すと


まばゆい光が生まれる。


って、確か俺、床に受け身なしで頭からダイブしてたよな!?


(あの、女神様、これから戻る世界の俺なんですが)


―――それでは、貴方にとって良き一生であることを願います―――


あ、ちょっと……


女神様に向かって一歩を踏み出す。


が、俺の声を無視した女神様の放つ光に包まれて


またもや俺の意識は薄れて消えていった。



――――――



2019年 3月 26日 14時50分


ゴッッッ!!!!


突如額に走る激痛。


「っっっっ~~~~!!!」


声にならない声を上げて床を転げ回る。


「く…ぉ……ぉ……」


痛い。超痛い。痛いしか考えられない。痛い、痛いとき、痛ければぁぁぁ!!!


………


痛みでしばらくうずくまっていたが、時間の経過と共に何とか動けるようになってきた。


「死ぬかと思ったわ…」


本当に痛いときって、声とか出ないんだなぁ。


「床に絨毯が敷かれててもこの痛さか…」


受け身なしで額から倒れこむ経験。


映画やアニメでそういうシーンがあったら


俺は間違いなくリアルな声が入れられそうだ。


「よっ……と」


まだ痛む額を押さえながら立ち上がってから


ホールを見回す。


「……この館が俺の新居、かぁ…」


訳が分からない状態で来た当初はただただ不気味だった洋館。


それも何だか今は愛着が………


そんなすぐに湧かねぇ。


「……いつか湧くのかなぁ」


首を傾げてポツリと呟いてから俺は


玄関の扉に手をかけた。

長々と説明回にお付き合い頂きありがとうございました。

やっと並行世界での生活が始まりますが…

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