回り始めた運命の歯車は羞恥と共に。1
頭から地面に突っ込んだ利剣。
想像するだけで痛そうですが
人間ってそれでも生きているもんなんですかね。
………
「ここは…?」
辺り一面、視界に入るもの全てが真っ白な世界。
地平線もなく、自分が立っている足元も真っ白。
「なんなんだ、これ…」
上下左右真っ白。
さっきからポンポンと場所が変わり過ぎだろ。
そっ、と自分の左腕に触れてみる。
すると右手は左腕に触れる事なく貫通してしまった。
「か、身体がない!!」
驚きのあまり大声をあげてしまったその時だった。
―――やっと見つけました。―――
唐突に聞こえる女性の声。
辺りを見回してから最後に後ろに振り返ると、そこに声の主はいた。
腰までストレートに伸ばした金髪に
濁りのない透き通った碧眼の凄く整った顔立ちの美人。
神話の女神様が身に纏っていそうな純白のローブに、
黄金に輝くティアラやネックレスに腕輪。
素材は金だろうか。
所々に青や紅、色とりどりの宝石が散りばめられている。
まさに俺が想像していた通りの女神像だった。
その美しさにしばらく言葉を失い、見とれてしまう。
ん、待てよ?
これは…神様イベント来た?
能力付与とか死因、この世界の説明がある?
さっきまで慌てていた俺だったが、本物?の女神様を
目の前にして俺のテンションが一気に爆上がりする。
だがここで浮かれてはしゃぐのもカッコ悪い。
にやけそうな頬をグッと押しとどめて平静を装う。
ここは一つクールに決めておきたい。
馬鹿丸出しより賢くふるまった方が後々有利になるかもしれない。
まず第一声が大事だよな。
「ここはどこだ?」
いや、これは何というか間が抜けてるな。
死語の世界ですぅ、とかさ迷える魂の広場です、
とか言われても、だから何だって話だよな。
どうせこの後すぐにこの場所から離れるんだろうし。
今この場所についてはとりあえず置いておく。
「あなたは誰ですか?」
愚問だろ。
女神様にしか見えねえわ。
悪魔です。貴方を消しにきました。
とか言われたら戦闘になるのかな?
勝てる気がしない。
「俺は…死んだのか?」
あ、いい。
いいねこれ。
状況は恐らく分かってるよ。
分かってはいるけど
念のため確認をしたいんだみたいな。
その余裕がある感じがいいよね。
それならもう一歩踏み込んで
「俺はこの後、どうなるんだ?」
とかクール路線で行きたいよね。
カッコいいし。
よし、そんじゃあ第一声は「俺はこの後、どうなるんだ?」で決まり。
―――全てのご質問にお答え致します。まずここはあなた方の世界で言う
迷える魂の広場でしょうか?それで概ね間違ってはいません。―――
(え?)
―――私は、そうですね。貴方の思う通り
女神という認識が一番近しいと思います。―――
(え?あぁ、うん。女神様かやっぱり)
いや、そうじゃなくて。
―――次ですが、貴方は死んではいません。―――
表情一つ変えず、機械のように淡々と
俺の考えていた疑問に
応えてくれる女神様。
ん?これってもしかして…
(いや、あー、あのぉー…)
―――はい?なんでしょうか?―――
(俺……何も喋ってはいないんですが…)
――シャベル…。……ヒト族の音による意志疎通の伝達方法ですね?
この空間に肉体というものは存在しません。よって、ここに存在
する者が思い、考えるだけで意志疎通が可能です。―――
(あ、そうすか…)
うーわ。
女神様から視線を外し脇を見る。
脇とは言っても全て真っ白なんだけどな。
ってことは最初から俺の思考がだだ漏れだったって事か。
こう言ったらカッコ良くね?クールじゃね?とか
………恥ずかしい!
これは超絶恥ずかしい!!
俺は両手で自分の顔を隠す。
―――羞恥、でしょうか?この空間には貴方と私しかいません。―――
何も恥ずかしい事などありません。
(いや、もうそれが恥ずかしいんですが…もういいです)
隠していた両手を下ろし、半ば開き直ったように女神様を見た。
思えば女神様からしたらただの一人間の恥など
さして気にもならないのかも知れない。
俺個人は超絶恥ずかしいが。
(あー…すみません、話を戻して下さい……)
と、片手をひらひらと振る俺に対して女神様は
―――そうですか。―――
とだけ短く返して話を続けた。
俗に言う説明回なんでしょうか?
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