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【連載版】勇者の剣の〈贋作〉をつかまされた男の話   作者: 書店ゾンビ
エピローグ 終わらない勇者の物語
51/91

終わらない勇者の物語

        ◇


「ジュールさん早くッ、船が出ちゃいますよぅ!」


 辞書乙女のエルンが、内海に面した港町で叫ぶ。

 季節は春。穏やかに吹く風か、どこからか花の香を運んできていた。

 ジュールは集まる野次馬たちに律義に手を振り返しながら、「ちょっと待て」と人ごみの先でピョンピョン跳ねるエルンに言った。


「いや、お前が名前を叫んだから、余計前に進めなくなったぞ」

「そうやって人のせいにしない! ご立派な身体があるのですから、上手いこと掻き分けてきてください! ああ、船がもう帆を張っちゃってる!」

「それに俺は、回収した聖剣も背負っているんだが……」

「ご立派な身体があるのですから、弱音も吐かない!」

「理不尽すぎるだろ……」


 虚偽の悪神を討伐してからも、ジュールとエルンの旅は続いていた。

 ジュールは各地に潜伏している怪物の残党を倒すため、エルンは失われた聖剣をすべて集め直して聖地を再興するためだ。


 そして、旅をするなら一人より二人の方が賑やかで楽しい。


 二人はどうにかこうにか港に着き、船に乗り込んでようやく一息吐いた。

 エルンはデッキの手すりにもたれて、ぐったりしている。

 ジュールはそんなエルンの背後に立ち、背中の荷物を揺すりながら言った。


「――で、次はどこに行くんだったか?」

「次は南岸側の〈極彩の魚港〉です。お魚が美味しいらしいですよぅ!」

「エルン、目的忘れてないだろうな……。それから、夏には一度、白港に戻るからな」

「わかってますってば、安心してくださいな!」


 エルンがどんと胸を張って言う。

 ジュールはイマイチ安心できない残念さんを見て、「まぁ、これはこれでいいか」と笑うことにした。そのジュールの腰には、今もあの勇者の剣が提げられている。


 彼がこの剣を手放すのは、まだ当分先の話だった。


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