第14話サヨナラ
「千鶴はもう助からない。」
ラヴェルさんがいつの間にか後ろに立っていた。
「最後ぐらい一緒にいてやれ。」
「凛太郎ー!・・・!?」
舞子が息を飲んだ。
「嘘・・・?」
「・・・これ千鶴にあげる。」
舞子は左腕につけていた銀のブレスレットを千鶴の左腕につけた。
すると凛太郎の腕の中の千鶴が光りだした。
「千鶴・・・。」
光は粒子状になり天へ昇っていった。
凛太郎の腕は抱いているような形のままだった。
「・・・てた。」
「え?」
俺はよく聞き取れなかったので聞きなおした。
「千鶴ちゃん笑ってた。」
「・・・そうか。」
「好きだって言っておけばよかった。」
俺は凛太郎の頭をくしゃくしゃにした。
そうするとまた凛太郎は泣き出した。
こいつは小さい頃からこうだった。
泣きたいときに泣き笑いたいときに笑う素直な奴だ。
俺は涙も出ない。何故なんだろう?悲しいのにな。
「村に帰ろう、みんな。」
リリィさんはいつまでもここにいるべきではないと思ったのだろう。
「俺はドラゴンたちを置いたままだから取りにいく。」
「じゃあ、帰ろうかみんな。」
凛太郎は動かなかった。
俺は足を止めた。
「・・・リリィさん。先行っててください。」
「でも・・・分かったわ。でも暗くなる前には帰ってきて。」
「はい。」
そうしてリリィさん、ラヴェルさん、舞子が去り、俺は凛太郎と共に残った。
「修平。」
「なんだ?」
「俺・・・。どうしたらいいんだろう。」
凛太郎は前を向いて座ったままだ。
「帰ろう。」
「どこへ?」
「俺らの世界へだよ。」
「お前は何があっても帰らなきゃいけない。」
「あぁ。」
その後二人で墓を作り花を供えておいた。
村に帰ると、舞子は千鶴のベットで寝ていた。
枕は涙で濡れている。
凛太郎もすぐに寝た。
今日は満月だった。
「千鶴ちゃん、守ってやれなかった上に泣けなくてごめんな。」
修平の頬にひとすじの光るものが流れた。
「遅ぇよ。」
修平はただ誰に言うでもなくつぶやいた。
その夜は本当にきれいな満月の見える夜だった。