11話初収入
教会に行く途中にすれ違う人たちを観察していたらすごい人・・・人?がいた。
その人は・・・ライオンのようなというかライオンだった。
しかも二足歩行。さらに連れの人と話をしている。
「ファンタジーだな・・・。」
苦笑いをしていると
「なにニヤニヤしてんの?凛太郎?」
舞子が気味悪そうに聞いてきた。
「ニヤニヤなんてしてないし、ただ・・・あれ見てみろよ。」
「・・・なるほどね・・・。」
納得して戴けて嬉しゅうございます。
「どうした?獣人が珍しいか?」
ラヴェルさんが立ち止っているおれたちを見かねて聞いてきた。
「ええ・・・。というか初めてみました。」
いまだに苦笑いをしながら舞子が答えた。
「おまえらの世界にはいないのか・・・。まあ、みんな初めてみたらそんなリアクションだ。」
ラヴェルさんはそう言うとまた歩き出した。
「あれが教会だ。」
ラヴェルさんの指差した方向にレンガの洋風な家が見えてきた。
村のバンガロー(小屋)とは大違いだ・・・。
教会のドアの前に来ると大きさがよくわかった。
修平の家ぐらい?いやそれ以下か・・・。
ようするに小さい家だ。
中に入ると、5、6列のイスが左右両方に並んで真中に赤い絨毯が敷いてあった。
「あなた方が仕事を引き受けてくれた方ですかな?」
人の良さそうな初老のお爺さんがあらわれた。
たたかう
どうぐ
にげる
・・・じゃなくて、
「あ・・・はい。」
そうそうこういう返事をせねば。
いきなりたたかうなんて選択肢が出たもんだから混乱してしまったよ・・・。
「では三人とも中へどうぞ。」
「いやおれはちがう。」
「えっ!?」
ハモった・・。
じゃなくて、ラヴェルさん!アンタ仕事俺らに任せて逃げる気ですか?
「昼までには戻ってくる。」
気がつけばドアが揺れていた。
もちろんラヴェルさんの姿はなかった。
あの人あんなキャラだったっけ?
「しっかり働いてくださいね。」
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そのころ修平たちは村はずれの森で薬草を取っていた。
「なかなか集まりましたね。」
修平クンがはバスケットの中を確認しながら言った。
「これだけあれば十分ね。手伝ってくれてありがとう。」
「いえいえ〜毎日おいしいご飯を頂いているんですからこれくらい当然ですよ。」
リリィさんはクスクス笑っていた。
「フフッ。ほめても何も出ないわよ。」
凛太郎たちが必死に仕事をしている中三人は楽しそうに笑っていた。
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「これでラストォ!!」
舞子がボロボロの手で雑巾を窓に叩きつけた。
キュッキュッキュッキュッキュッ
神父が満足そうにあたりを見渡した。
「お疲れ様です。いまお茶を入れましょう。」
凛太郎と舞子は椅子にすわった。
「・・・・おわったか?」
ドアから顔をぴょこりと出したのはラヴェルさんだった。
あんた・・・どこ行って・・・・え?
驚いたのはラヴェルさんの様子がものすごく疲れていたからだ。
「何してたんですか?」
「狩り。」
狩り・・・?
「掃除なんかより収入が好いんだよ。」
へ〜。まあそりゃそうだな。
「お茶が入りましたよ〜。あ、ラヴェルさん。戻っていらしたか。しばしお待ちをいまお茶をいれてきます。」
「イヤ、結構です。」
「そうですか・・。ではお給料のほうです。」
二つの袋が渡された。
「一人1000ガルドです。」
この世界の通貨はガルドというらしい。
ちなみに、1000ガルドでは野菜が5、6個買えるらしい。
「初収入だ・・・小遣いにしな。」
「え?でもこのお金は食費に・・・。」
「フン、そんなはした金あっても無くても変わらん。」
そのとき神父さんのおでこにうっすら血管が浮かんだ・・・。
「俺はここで待ってるから、買い物でもして来い。」
いまの神父さんとここで待つ気ですか・・・・。