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神殿のおじさんは今日も後悔する

 どこで間違ったのか。

 どうしてこうなったのか・・・。


 私は知人のユーカイさんから「バードハートの町で孤児の面倒を見ないか」と言われて田舎の村からこの町にやってきた。

 ユーカイさんは村に来ていた行商人の方で、神殿で孤児を見ていた知り合いの人が歳なので後継者を探している事を私に相談してきた。

 当時の私には妻が居たため、直ぐには返事出来ずに妻と相談してからと返事をしその日は帰ってもらった。

 その翌年にユーカイさんがもう一度が来て「あの方も歳で危ないので早めに返事が欲しいそうです」なんて言われたので、それは大変だと妻と共に行く事になった。

 村では結婚するのが早くて妻とはお互い16歳で一緒になったのだけど、6年たった今でも子供が出来なかったのも後押しして、前からもしかしたらと村長には話しをしていたこともあり直ぐに準備をしてユーカイさんと共にバードハートへと向かった。

 村を出て3日ぐらいの時に生まれて初めての悲劇にあった。

 町への道のりの途中、盗賊に襲われ護衛の方が反撃に出て戦ってくれたのだけど結局は妻と護衛の人が何人か殺された。

 私と妻は慣れない馬車に苦労しながらも自分達に子供が出来なかった分まで、子供を大切に育てようと神殿での生活について話し合っていたというのに・・・

 茫然自失と私がなっている間に馬車は町についていた。

 町についても何もする気になれずにいた私に、ユーカイさんは宿を用意して私が落ち着くまでの生活も見てくれた。

 一月(ひとつき)ほどショックで宿からも出なかったら私に、子供を連れてきたユーカイさんは「貴方と奥さんの夢は終わっていませんよ」と言ってくれた。

 馬車での話しを聞いていたのだろうけど、私にはその言葉が凄く響いた。

 そこからは神殿に行って、前の方と責任者の交代の話しをしてから神殿コアに触れ、私が神殿の主人となった。

 ユーカイさんが話しを持って来た時に、大体の事は聞いて居たので神殿コアの主人は責務が子供を育てる事だというのは知っていた。神殿なのに孤児院ってのが少し分からなかったが、神は元から孤児院としてこの建物を建てたが、私達が神殿だと言い始めてややこしくなったようだ。神像が置かれているのだから神殿だと言う気持ちは凄く分かる。

 他にも細かい事はあったけど良く分かっていなかったので、前の契約者の方に聞けば「コアに触れれば分かるから心配しなくても大丈夫だよ」と言ってくれたのだが意味が分からなかった。

 実際触れ契約をする時に分かった事が沢山ある。抽象的な感じにコアからの要望を感じるのだが、簡単に纏めると子供を育てる事でポイントが溜まる。溜まったポイントで神殿の敷地で作物も割かし簡単に作れるようになったり、他にもあるが大体は子供を育てるのに掛かるお金が少なくなる。そしてそういった機能の補助を受け、神殿の主は子供を強く育てさせるのがコアの目的の様だ。

 妻と普通の家族の様に育てるって話しをしてたのと馬車で襲われた事を考え、戦う事など無く生きて欲しいと思う。強く育てろというなら私は私なりの強さを教え育てようと決めた。


 それからあっという間に過ぎていった。

 私のやり方が気に食わないのか、コアのポイントは少ししか入って来ないので私と子供達で町の掃除などしながらもポイントやお金を稼ぎ、少し貧しいが子供達も笑顔で育って行く。

 5年くらいたった時、朝起きて庭の様子を見に行こうとしたら、2歳になっていないだろうハーフの子供を連れた小人族の女性が神殿の扉の前で死んでいた。子供は弱っていたが神殿の機能を使い回復させ元気を取り戻した。母親と思われる女性は身分の分かるようなものは無かったのでそのまま墓地に埋葬した。

 子供の名前が分からず困っていたところ、神殿に住んでいた子供たちが「あなたのおなまえは?」や「ステータス、ステータスって言ってー」など話し掛けていたら、ハーフの子の前にステータスが浮いていた。

 消えてしまう前に慌てて確認したらアンって名前だと確認できた。

 ハーフの子供は珍しいからか、子供たちはアンの世話を一生懸命手伝ってくれた。私もここまで小さな子は初めてなので正直、子供たちの行動には驚かせられ、そして優しく育ってくれて感謝した。

 毎日が過ぎるのは早く、14歳を超えた子供たちは神殿の恩恵を受けれないので、その時までに町のルールや数字の勉強、働き先での言葉遣いなど沢山の事を教え旅立っていく。それでも働き先の見つからない子はここを手伝ってくれながら仕事先を探したりしている。

 私は戦い方などは教えなかったが、自分でしたいと言った子には特に止めたりしないで、偶に冒険者の人を呼んで話しや武器の扱いなどを聞けるようにしてあげた。

 自分がそうであったように、自分のしたい事をさせてあげたかった。

 そうやって旅立つ他にも、子供たちが外で町の掃除やお手伝いなどしてる時に気に入ってくれた方が引き取る場合もあった。

 子供たちの中で特に優れた能力を持つ子などはユーカイさんの紹介などで、良い店やお金持ちの後継ぎとして引き取られていった。ユーカイさんの紹介の子達はこの町から出ていく事が大半なので会えなくなるが、幸せな生活ができるなら私にとってこれ以上嬉しい事などない。


 かれこれ神殿に私が来てから17年くらいだろうか。

 前からアンを引き取りたい方が居るとユーカイさんから言われてのだが、アンは知らないところに行くのは嫌だと断っていた。アンは余り知らない大人と話すのが得意ではないから、引き取っても仕事が出来ないと思われていたので、里親になってくれる人は現れなかった。

 神が作ったと言われる、魔物退治や町の掃除などまだ分かっていない事が多いポイント(・・・・)がある為、世間で「15で大人の仲間入り」と言われる年になれば住む場所が路地裏や空き地で良いなら、アン一人でも食べるだけなら何とかなるかも知れない。

 14~15で一様成人だと決まっているが、私は親の居ない孤児たちには早いと思う。それでもコアはステータスで14になれば、コアの効果をその子達に与えられないのでこの神殿が破産してしまう。

 その為、私の所では14以上になり引き取りてや働き口があるならここを出ていく事となっている。

 そして14歳になって働き口も見つからなかったアンは、10日前に以前からアンを引き取りたいと言ってた方の所へユーカイさん連れられ旅だった。


 アンが出て2日後、町の憲兵に呼ばれ駐屯所へ行くと部屋案内された私に「貴方は子供を売っていますか?」と言われ、まったく身に覚えののない私は何故かと聞いた。すると、実はユーカイさんは行商の裏で奴隷販売もしていたという。

 信じれない私が文句を何度も言っていると、部屋に違う憲兵さんが入ってきて「貴方は巻き込まれていただけの様です。お帰りなって結構です」などと追い返そうとするので、「詳しく説明してくれるまで帰りません」と言い続けた。

 結局分かったのは、裏で子供を売っていたユーカイさんと共謀していたと思われていたという。

 ユーカイさんは子供を引き取るなどと言って売っていたようだ。全員を売っていたのでは無く偶に売って商売の元金にしていたらしい。私が育ったような村への行商は、アイテムポケットを全員が使える為に自分たちで町に行き、買ったりして足らない分ぐらいしか買わないから赤字だったらしい。それでも自分が親たちから引き継いだ村などへの支援は止めれなかったので、子供を売ることになったらしい。

 確かに私たちが住む村ではそうだった。ユーカイさんが物を売りに来てくれないと冬を超えたりする時に死人が出てきたり、子供を売らないとダメなのは少し考えればわかった。

 ユーカイさんが言うには、「孤児ならば悲しむ人が少なくすんで、村や村とも言えない集落は救われる。それに出来るだけ売らずに仲介料を少し貰いお金持ちの方に紹介してきた。売ったのは片手で数えるぐらいで特に珍しい子だけ」らしい。このタイミングなんだからきっとアンも・・・いや違うはずだ・・・

 その後は子供の事もユーカイさんの事も、憲兵さんに言われた事を信じられずに気付かぬ間に、神殿の広間にある4つの神像の前で座り込んでいた。

 私としては、まず家から出て行った何人が売られたのか。どの子が売られたのか。売られた子はどうなったのか。ユーカイさんは本当に子供たちを売ったのか・・・など取り留めなく考えていた。

 少ししてから神殿ポイントは高いけど、子供に悪意のあるものは神殿領域に入れなくする結界を張って子供達に仕事以外で出ていかないように話してから自分の部屋に戻った。

 このタイミングで私が駐屯所に呼ばれると言う事はアンになにかあったに違いないが・・・



 そして今日も私は神殿内の作業し、何が起きているのか分からなくて不安がる子供達を(なだ)めながら、これからどうすればいいのか、何が間違っていたのか考える。

 このまま神殿に(こも)って居ても、ポイントが無くなって結界を張れなくなるだけなのは分かっている。

 これからも子供達を育て、引き取り先の事まで考えたら不安しか無く答えが出ない。

 夜になって自分の部屋に戻り、窓から空を眺めながら答えの出ない事に悩んでいたのだが、視線の下の方に光る物が見えたので少し顔をした向けた時。


「おじさんがザックさんかい?」


 月の光を浴び、煌めく金色の髪を風に靡かせ、美しいであろう顔を怒りに染上げてこちらを睨む天使がそこに居た。












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