九話 探し出す輝き
「お、置いて行きたくない……?」
すると、梨子ちゃんはこくりと頷き、民家に向かって指さす。
「あそこ、私のお家………あそこに皆住んでる、皆寝てる………私が居ないと、お母さん達が起きた時心配しちゃう」
そうか………で、でも一人にする訳には行かないが………東京に戻りたい。
いや、戻りたいと言っても、初心者以下の乗車経験がない俺が車に乗って、東京まで無事に着くとは思えない。
不可能だ。
「じゃ、お母さんとお父さん車に乗せて行くのは?」
「だめ、起きた時びっくりしちゃうから」
んな事言ったらどんな事してもビックリするだろ…………
梨子ちゃんは相変わらず顔を下に向けたままだ。
もう考えられる方法はたった一つ、梨子ちゃんと一緒に居ること。
それが、俺は正解だと思う。
「じゃ、お父さんとお母さんが起きるまで僕と一緒に居ようか?」
すると、下を見続けていた顔が上を向き、大きく頷いた。
「せんぱぁい…………ちょっとせんぱぁい? オラ前向け先輩!!」
「あ、あぁ…………ごめん」
「まったく、別に先輩のせいじゃないんですから、そんな気を落とさずに~」
相変わらず音無先輩は食事に手を付けない。
食事と言っても硬い乾パンと非常食。
全くもって、味気が無いグットモーニング朝食。
しかも、北谷くんが居なくなってる。
ただ、「ゾンビに連れて行かれた」としか分からない………
「北谷さん………北谷さん………」
「げ……志熊ちゃんも大丈夫ですって、北谷くんは何処かでちゃんと元気ですよ~」
んな事口では言ってるけど、ゾンビに連れてかれて生きてるなんて考えられない。
私だって悲しいけど、悲しいけど、今はそんな事言ってられない。
一人の食材消費量が減っただけで、自分達にとって何も害は無いが………
「俺の不注意で………俺が何も出来なかったから………」
「北谷さん…………絶対に生きていて下さい………」
あぁ駄目だ、こんなマイナスムードだと生きていけない。
音無先輩が志熊ちゃんに「北谷君は外を調べに行った」なんて変な嘘を吐くから……
って言っても、乙女ちゃんの志熊ちゃんにショッキングな事言ってもアレだしな………
どのみち、正解は無い。
生きている事を祈ったって何も変わらないんだ。
私はそう言うおかしな性格。
信じているからこそ、ポジティブに捉えられる。
「あーもう!! 皆そんなマイナスにならないで下さい!! 探しに行きますよ、先輩、志熊ちゃん!!」
いきなり大声出した物だから喉がヒリヒリ痛む。
「え………探しに行くって………北谷君をですか!?」
志熊ちゃんの目が輝く。そうそう、これだよこれ!!
「………そうだな、止まってちゃ何も動かない。車で探しに行くぞ!!」
『しゅっぱーつ!!』