五話 生ける屍
「アレ………おかしいですね、この機材全部電源入ってませんけど…………って、なんで先輩電源抜いてるんですか!?」
「俺は、志熊ちゃんに何らかの力を持っていると確信している…………よっと」
「へ? まぁ、そりゃアタシも思ってますけど………だからって電源抜くことに関係あるんですかって!!」
広瀬は分かっていない様だが、俺はあの時ラジオの電源をつけていなかった。
なのに何故だ?
何故、コンセントもささっていないラジオから放送が流れたんだ?
「な、成る程………ってか、あの子達に言わなくて大丈夫なんですか?」
「いや、言わない方が懸命だろう。北谷君には色々と聞きたい事もあるしな」
「…………………美味しくない」
広瀬さんがそう呟く。
俺達が口にしている物は保存食だが、流石に飽きるのも無理もない。
「まぁ、いざとなればそこら辺のコンビニから盗んで来るけどな」
いや、流石に盗みは……………
「いやいや、北谷くんさ。今はみーんな眠ってるんだよ? なぁにを悠長な事を言ってるのかね~」
「そうだな、時期にこの保存食も無くなるし、今度買い出しにでも行くか」
音無さんが口を揃えてそう言う。
まぁ、皆眠ってるから盗みの一つや二つ良いと思うけど………
《コン………コン………》
「ひぅ!?」
ドアの向こうからドアがノックされる。
ま、まさか、起きている人か!?
いや、そうに違いない。
「待つんだ北谷君、ここは俺に任せろ」
そう言ってフライパンを持ち出し、ドアへ向かう。
《ガチャ………》
立て付けの悪いドアが軋む。
ドアの向こうに居たのは、人間だった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「へ………? い、いやぁあああああああ!!!!」
辺りが絶望へと染まる。その猫背の人間とおぼしき生物は音無さんに掴み掛かる。
や、ヤバくないかコレ………つか、なんなんだよ………!!
俺は走り出す。
「音無さんから離れろォ!!!」
その掴みかかったナニカに渾身の蹴りをお見舞いする。
効いたようで、ソレはうろめく。
「ありがとよ、北谷君………おらっ!!」
起き上がった音無さんが大きく振りかぶったフライパンをソレの頭に振り落とす。
「グガァ…………あ゛あ゛………」
その襲いかかって来たソレは地面にうつ伏せになる。
な、なんなんだコイツ……………眠ってるぞ……!?
ソレはすやすやと寝息を立てて眠っていく。
「ま、先ずは広瀬、志熊さんを放送室まで連れていけ。俺と北谷君は後から行こう」
「わ、分かってますよ………ほら、志熊ちゃん、行こう?」
「うぅ………怖いよ………誰か………」
俺は、そのか弱い背中を見送る事しか出来なかった。