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眠ったセカイと眠り姫  作者: 杠 音韻
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四話 花鳥風月

「広瀬さんと音無さんはサークル活動でこの市民ラジオを聴いていたと…………」


「まぁ、ぶっちゃけ寝てたんでそこら辺はうろ覚えですけどね~。女の子声が聞こえて起きたらアタシと先輩以外全員寝てたって訳です」

「聞く限り、その子…………志熊ちゃんだっけ? の声に似てた気がするんだ」

二人の証言を聞くに、今回起きていたのはたまたま復活したラジオを聞いていた俺。

大学のサークル活動でこの市民ラジオを聴いていた広瀬さんと音無さん。


そして、この放送をしていた本人の志熊さん。


やはり、このラジオを聴いていたか否かで別れる様だ。

「えぇっと…………わ、私のせい……なんでしょうかぁ………」

志熊さんが掠れる薄い声でそう呟く。

「い、いや………関係性があるだけの仮説に過ぎない、志熊さんのせいではないよ」


「あ、でも俺達全員が実質放送を聴いて起きたんなら、また同じ放送をして皆を起こせば良いんじゃないかな」

音無さんがそう言う。


な、なるほど。

俺達はこの放送を聴いて寝て、この放送を聴いて起きたとなると、同じ様に寝ている人に聴かせればまた起きるって訳か!!

「で、でもラジオを放送なんて、俺達にはとても………」

「ここはある程度設備が整ってそうだし、俺と美香が準備しておこう」

「へっへーん、伊達にラジオサークルなんてやってませんから!! そのぐらいアタシらだったらちょちょいと出来ますよ~」

こ、心強い………!!

これが大人………頼れる人が居るって良いもんだな。


「わ、わたしっ!! 頑張って声を出しまひゅっ!!」

「うん、頑張ってね」



機材のセッティングが終わり、ラジオブースへ入る。

一枚のガラス板の向こうから広瀬さんと音無さんが手を振ってくれる。

「えーと、眠り姫の第一小節目から…………ここまで……っと」

「あー…………あー………テステス、聞こえてますかー?」


向こうからグッドのサイン。

マイクはオッケー、志熊さんと向かい合わせに座って深呼吸。


「なんか、緊張するね………」

人生初体験のラジオ放送………つっても、誰一人聞いてないと思うけど。

こんなに本格的にやるなんて思ってもなかった。

「そうですね………私も少しだけ緊張してますけど、やらなきゃですもんね!!」



《3……2……1……》


音無さんが手を振る。

ここからは、俺の出番だ。

「市民ラジオ、読み語りのお時間です。《眠り姫》お聴きください」

志熊さんにアイコンタクトを取る。

彼女はゆっくり頷き、にこやかに笑い返す。


その瞬間、深い眠りについた。



「おーきーてーくーだーさーいー…………えいっ」

痛い痛いいてててて。


ほっぺたをつねられる。

目を開くと、豆電球の灯り………と志熊さん。


「あ、あれ………また寝てたのか………放送は終わったの?」

「は、はい……終わりましたけど、始めた途端皆さんがいきなり眠っちゃって」

そ、そうだ、広瀬さん達は……?

「顔を洗って来るそうです…………あの、やっぱり……私のせいなんですよね………」

記憶は曖昧だが、眠り姫の内容は一つも入って来なかった。


恐らくだが、聴く前に寝ていた。

最早これは認めざるを得ない、眠らせる力が働いてるとしか思えない。

そんなのSFとか、小説とか物語の出来事でしか起こりうる現象では無いと思っていた。


だが、実際に今起きていた。

「また、何も分からなかった……かぁ………」

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