三話 希望
《また、お会い出来ると良いですね》
「さん…………さん………きて…………さい!」
「さん………!! ………おきて………い!」
体が強引に揺すられる。
あ、頭が揺れて気持ちが悪い。
「うぅ………気持ち悪いぃ……うぇっぷ」
「ひぃ!? すいません………」
目が覚めると、そこには一人の少女が………いや、志熊さんか。
身体を起こすと、空は青く太陽が輝いている。
――――――――朝か。
「よ、よかった………他の人達みたいにまたずっと寝ちゃうんじゃないか心配で………」
「あぁ………ごめん。俺は……ずっと寝てたのか?」
「そうなります。眠り姫を朗読してたらすぐに拓也さんが寝ちゃうからビックリしました」
良くその時の記憶は覚えていない。
眠り姫。
内容すら覚えていない。
まるで……………眠り姫の内容を聞かせたくないような、そんな気がする。
「あの、どうかなさいました?」
「あ、あぁ………大丈夫」
「そ、そうだ!! お食事って済まされてないですよね? 持ってきます!!」
彼女は駆け足で扉から出ていく。
《ドテッ》
俺は頭を抱えた。
「いたた………へへ、すいません………」
「笑い事じゃないよ? 大怪我になったらそれこそ駄目じゃないか」
どうやら怪我をした様だ、大怪我じゃないが………擦り傷だろう。
「わ、私は大丈夫です……うわっとっと」
志熊さんがバランスを崩しそうになるが、俺が腕を取って支える。
今は昼間だが、電気の通っていない館内はやはり薄暗い。
「まだ中は暗いんだから良く見て動かないと――」
《カンカンカンカンカン》
なんだ、なんの音だ?
何かを叩き付ける音が外から聞こえる。
他にも起きている人がまだ居るのか?
「そ、外からの音みたいですね……行ってみましょう!!」
「えっと…………あ、あれだ!! こっちでーす!!! こっちこっちー!!」
俺が外に出て、軽トラックに向けて手を振る。
荷台に乗ってた女性が俺の事を見付けてくれた様だ。
「やぁ、どもども~近くの大学の者です。えーと、アタシは広瀬 美香で~す」
「僕はこの女の一年先輩の音無 京。宜しくな」
軽トラックから出てきた二人はにこやかに挨拶してくれる。
市民館から支度をしていた志熊が出てくる。
「あ、えっとさ。もしかして今の現状起きてる人達ってアタシら含めて四人ですよね?」
「えーと、はい。そうなりますね」
他にも起きている人を仮定しなかった場合だが。
「いや、アタシらサークルでラジオ研究会ってのやってて…………変なラジオで起きたんだけど、皆寝ててさ~揺すっても起きないから今こうやって起きてる人が居ないか見回ってたのよ」
続いて音無さんが話し出す。
「家に行っても皆寝てるわ、講義中の生徒も全員寝てるわで本当にビックリしたんだ」
やはり、こうやって起きている人はまだまだ居るのか?
いや、まだ起きている人が居た所で今の誰もが寝てる現状を打破する事は出来ないけど…………
希望が見えた。