十六話 吐いてはいけない嘘
「お~い、着いたぞ…………って、二人とも眠ってるじゃないか……おい美香、起きろ」
「むぅ……せんぱぁい? あれ、もう付きましたか………ほら先輩志熊ちゃんおんぶして」
「な、なんで俺が………分かったよ、よっこいしょ」
まだ眠気の残る眼を限界まで開き、背伸びをする。
然程遠くには言ってないと思ったのに、案外着くのが遅かったな。
既にビルの合間から太陽が顔を出している。
「美香~、荷物持ってきてくれ~」
「は、は~い!! 人使いが荒い先輩だなぁ」
私は開きっぱなしのドアから食糧を取り出し、乱暴にドアを閉める。
今日も頑張りますかぁ………
食糧を置き、先輩の様子を見る。
「先輩、志熊ちゃんは寝かせました?」
「ん? ああ、自分の部屋で眠ってるよ」
「…………何もしてませんか?」
私がそう聞くと呆れた顔でこちらを見る。
やめて下さい気持ち悪い。
「あのなぁ…………俺はロリコンでも無いし、する気もさらさら無い。分かったか?」
「ふぅん………じゃぁこれは何ですかぁ!!!」
私は後ろ手に隠し持っていた先輩のカバンの中身を開く。
中には女子のパンツが入っている。
「な…………!?」
「フフフ、図星の様ですねぇ滑稽ですよ先輩のその顔………!! あぁ弁解出来る物ならしてみなさい!!」
「バカらしい、自分のパンツを俺のカバンに入れて何が楽しいんだよ」
分かってらっしゃったんですか?
「なな、なんでこれが私のパンツだと………!? 変態!! ロリコン!! ムッチリスケベ!!」
「それを言うならムッツリスケベだろ………って、俺は変態でもロリコンでもムッツリスケベじゃない」
「くぅ………先輩がそんなに性欲にまみれているとは思いませんでした、一生の不覚………!!」
もうここまでになるとグダグダの素人茶番劇みたいになってきた…………まぁ先輩の言う事は全部正しいし、私がバカみたい。
「そうだお前はバカだ」
「それはキッパリと言うことじゃないっす!! てか心読まないで下さいよ~!!」
「いや、お前は全て顔で考えてる事は分かるんだ。お前、ババ抜きで一度も勝ったこと無いだろ?」
な、なんでそれを………!!
中学校の修学旅行での第一回ババ抜き全国選手権大会(クラス内対抗戦)で惨敗の28連敗を喫した事………
それは中学校からの友達しか知らないハズ………!?
「はぁ………まぁいい。お前、何が目的だ?」
「は、はい? その質問の意味が分かりませんが…………」
「だから、俺に何か用があるのかと聞いているんだ」
先輩はキツイ目線でこちらを見つめて来る。
な、なんか最近先輩はおかしいんだ、変な所で突っ掛かったり、柄でも無い事をし始めたり………
私の知ってる先輩じゃないみたいで。
「なんか先輩、変わりましたよね」
「俺がか? 自覚は無いんだけどなぁ」
ホンット、ウザったい。
「先輩は、本当に嘘がお好きな様で……………そう言う所、私は嫌いっすよ」