一話 眠りについた世界
ザザ、ザーザー。
微睡みの中で薄れ行く意識の片隅、騒がしい雑音が聞こえる。
雑音というより、なんだこの音…………
気にする間でもなく、睡魔に襲われ深い眠りに誘われる。
『ザザ…………ザーザー………ザ………』
徐々にその砂嵐の様な騒がしい音は消えて行く、まるで俺を眠らせる様に。
『ザザ…………あな………は…………しあわ………ですか?…………あなた…………どこに………すか?』
『もし…………これを聞いて居ますか……………私は………げんき………す…………』
『眠りから覚めたら………お会い致しましょう』
「うぅん………うるさいな…………ん? 壊れたラジカセ…………今電源付いて無かったか?」
眠気が覚醒すると、夕暮れに沈む夕日が俺の顔に当たる。
眼を擦りながら時計を見ると、5時で止まっている。
壊れたのか。
ラジカセはとっくの昔に壊れたと思ったが、まだまだ辛抱強い奴だったようだ。
急に胸が痛む。
高校に入ってから一人暮らしで、寂しいなんて思った事は無いけど、やること全部面倒だ。
全ては完全自動だったあの頃と比べて、不自由無く気ままに暮らしてた昔の方が良いかな~なんて思ったりもする。
家賃とか月々の金は実家から送られて来る。まぁそれで生きてきてる訳だが…………
何を思い出してるんだ、俺は。
…………………。
自棄に静かだな。
徐にテレビをつける。
が、電源は付かない。
な、なんだ? 故障か?
クソ、買ってから一年ってのに弱い奴だ、まだ壊れたラジカセの方がよっぽど良いな。
おかしい、昨日までピンピンしてたテレビが壊れてる。
外が静かだ。
なんなんだこの静けさは。
耳を澄ませるが、風が窓を殴る音しか聞こえない。
怖くなって外に出る。
「んなわけ………ねぇよな」
ドアノブに掛ける手が震える。
冷たい汗がどんどん額に浮かぶ。
マンションの廊下には当然誰も居ない。階段を駆け降りて一階へと向かう。
別にここはド田舎ってレベルの田舎じゃないし、5時位でも人通りが少ない訳じゃ無いが、何故ここまで人が居ないんだ?
何故、信号が止まってるんだ?
道路の真ん中に車が数台止まってる。
真ん中だってのに何で止まってんだよ!!
「おい!! どうなってんだこれ!? 意味わかんねぇんだけど!!!」
車に座っていた中年位のおじさんに話し掛けるが、応答は無い。
が、眠ってる………のか?
「……………………」
「おい、起きろよおじさん!! ちょ、他の皆も!!」
目は瞑って寝息を立てているのが分かるが、やはり応答は飛んで来ない。
ど、どうなってんだよ…………!!
紅に染まる夕日が俺を照り付ける。
「どうなってんだよォ……………!!!」
思っていた事が口から漏れる。
読んでも虚空しか帰ってこないのに、絶望しか出来なかった。
「あ、あの………どうかなされましたか……?」