黒い秘密
「国王様、何でございましょう」
ピューリ国の王であるバザリは弟であり側近であるイリヤを大広間に呼んでいた。
「仰々しい態度はいらんぞ。顔をあげてくれ」
片膝をつき頭を深く下げていたイリヤは顔をあげた。
バザリが部屋を一見し、よく通る声で周りにいた召使や従者に言い伝えた。
「すまないが人払いをしたい。私が後に呼びに行く。それまでこの部屋から出ていってもらいたい」
ばらばらと大広間から人が出ていく。二人きりになるのをバザリが確認すると王族の象徴である黒い瞳でイリヤを見て、口を開いた。
「さてイリヤ、さっそく本題に入る。これを見てくれ」
懐から取り出したのは手のひらに収まるくらいの水晶玉だった。表面はつやつやと輝いていたが、中で黒いもやがうっすらとかかっている。
イリヤはそれを見るやさっと顔がこわばった。
「……あれが起きるのですか」
「そう思いたくはないのだがな。なにしろ情報が少ない。我ら王族のみに言い伝えられてきたあの話が本当ならこの国は滅亡してしまうこととなる」
「あの言い伝え通りにことが進むとなれば黒石の持ち主が関係してきます。国中に御触れを出して徹底的に探しだしましょうか」
「待て。まだ事を大きくするのはまずいだろう。国民たちが混乱するばかりだ」
嫌な沈黙が二人の居心地を悪くする。お互いに思い浮かべるのは言い伝えられてきたこの国の終焉。まさか自分たちの代で起こるとは思ってもいなかった。
「リットとサガを呼んできてくれ」
沈黙を破ったのはバザリだった。
リットとバザリは王宮に使える兵の組織、王の手足の中で秀でた者たちだった。これまで王宮の侵入者を数多と捕らえ、功績を挙げたことで王宮内では知らないものはいないほどだ。
「リットとサガですか? 二人なら今、他の王の手足達と山で訓練を行っている時間だと思われますが、二人だけ連れて参ります」
「ああ。よろしく頼む」
イリヤは言葉を聞き終えると一歩下がり深々と頭を下げ、大広間を後にした。
「国王様、失礼します」
リットとサガはバザリの前で跪いた。
二人とも背が高く、すらりとしているが、筋肉がしっかりついていることは衣を着ていてもわかる。
「訓練中にわざわざすまない。実はお前たち二人に探して欲しい人がいる」
サガが顔をあげた。
「……と、言いますと?」
「すまないが詳細はまだ話すことが出来ない。ただ、黒石の持ち主を探して欲しい」
バザリが懐から四角の黒石のペンダントを取り出した。大広間の照明に照らされ輝きが増している。
「これは本物ではないのだがな。これと同じ形をしておる。相手は男か女か知らぬが、手荒な真似は避けてくれ」
リットは頷いた。
「かしこまりました。必ずや探し出してみせます」
二人は再び跪き最敬礼をした。