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カラーパレット  作者: 蒼衣 奏
一章 ~第4地区~
2/6

違和感

心地よい川のせせらぎが聞こえ、ひらひらと花弁が舞っている。両脇にずらりと木々が並んでいる小道を二人は歩いていた。

 チェルは腰まで伸ばして一つに結んでいる緑の髪に時々乗る花びらをつまみあげ、はらりと風にのせるように落としていた。


二人の住むピューリ国は目の色が三色あり、目の色によって使える魔法が変わってくる。

赤色は攻撃魔法、青色は防御魔法、緑色は治癒魔法というように、目の色、つまり血筋によって使える魔法が決まっている。

人によって色の濃淡はあるが、一目見ただけでその人がどの魔法が使えるかわかる。

チェルは薄い緑色、アルは深い赤色の瞳の色をしている。


昨日の夢のことについて話そうとしたが二人とも口が重く、サクサクと芝生を踏む音だけが静かになっていた。

気持ちの良い天気のはずなのに心が重い。最初に口を開いたのはチェルだった。


「ねぇお兄ちゃん。お兄ちゃんも同じ夢見たんだよね?お母さんに殺される夢」


いつもきれいな兄の赤い瞳が曇って見えた。


「あぁ、見た。はっきりと覚えてる。炎が迫りくる中、チェルが必死に俺の名前を呼んでいて……」


途中で言葉を切り、赤い目をそっと伏せた。あまり思い出したくはなかった。夢だとはいえ、妹を守れなかったことを悔いていた。


アルは昔から正義感が強かった。同じ目の色同士しか婚姻は許されず、親と子の色は同じということが一般的だったが、チェルの母は違う色にもかかわらず橋の下で捨てられていた赤ん坊のアルを拾い本当の子供の様に育てた。

小さいころそのことでからかわれていても、堂々とした態度で母の悪口を言うなといつも言っていた。

兄が何か思い返しているのを横目にチェルが口を開く。


「私たちが同じ夢を見たってことはさ、やっぱり現実に起きるってことだよね…前にも何回か同じ夢見たけど起きたから。今までは雷が落ちる木が夢と同じだったこととか、たまたま遊びに来た友達が器割っちゃうこととか大したことじゃなかったから今まで気にしたことなかった。けど今回の夢は規模が違うね」


「ああ。今まで全く気にしてなかったな。俺たちが同じ夢見ることも不思議だし、それが現実に起こることも。そのことがおかしいって気づいて何か調べていたりしたらこんなに不安になることもなかったのにな」


同じ夢に対する意識はおかしかった、ということに二人は気付いた。兄妹で同じ夢を見る、ということは普通であれば考えにくい。ましてや現実に起こるなんてもってのほかだ。

二人はあたかもときどき起こる遊び、当たり前の遊びのような感覚でいたのだ。意識のずれに違和感を隠しきれずチェルは思わず身震いした。

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