第19話 特典の詳細は?
2月20日は調べたところ他にも長島茂雄さんや古いところでいけば石川啄木さんも誕生日でした。あとはマニアックなところをいけば中村悠一さんもですね。
だれがこの幕切れを予想できただろうか?
一瞬、わずか1分程度での決着、その1分に勇希がとった行動はいたってシンプルであったが大勢の観客の中でそれを完璧に見切っていた者はいたのだろうか?
試合開始直後のクドリンの大魔法は威力もスピードも申し分無かった。それなりに経験を積んだ冒険者すら無傷で受け流すことは難しいぐらいには強力であった。では勇希はなにをしたか、
ただ単に今までは抑えてきた魔導式ブーツの出力を解放し、円形の闘技場を弧を描くように移動、そのままクドリンの背後をとって、壁に向かって蹴り飛ばしただけである。
「まいった、2日前だけどユウキの血を吸ったボクにも少し霞んで見えた。みんなが黙り込むのも仕方がないね。瞬間移動したように感じたろうから。
決勝まで手を抜きまくってたのもクドリンを油断させるって言うより相手の新人たちが精神的に再起不能にならないよう配慮してたってところだね。さすがユウキ。」
2日前のユウキとボクが初めて会った時、いくら血が足りてなかったとはいえ、高位の魔族である自分が人の挙動で気絶するなど普通ありえないことだったのだ。なのにボクはアッサリ気絶した。ユウキは自分の人間離れした能力をしっかりは理解してないんだろうな。
「おめでとうユウキ君。初戦からの布石見事だった。まあそんなちまちましたことなしでも結果は変わらんだろうがな。アッハッハ。」
俺は審判をしていたベッテルさんに笑い飛ばされていた。やっぱバレてたか、この人は雰囲気的に規格外だから当たり前っちゃ当たり前だ。観客もやっと衝撃から回復したのか、優勝した俺にたくさんの賛美を投げかけてくれた。目立ちたくないとは思ってたがこれは気持ちがいいものだ。
俺からしてみればクソ貴族に勝てればなんでもよかったのだが。割と本気で蹴り飛ばしたし。その貴族様は侍女たちが大慌てで介護を始めている。死なすような蹴り方はしていないはずだからすぐに目も覚ますだろう。
「観客の皆様、勝者はご覧の通りサトウユウキ選手となりました。この勝利によってクドリン選手は今後一切の手出し無用、さらにユウキ選手へ賠償金として大金貨100枚の支払いが命じられます‼︎ギルドはこれを正式に認めます‼︎」
「ご、100枚だと?ちょっと待て私はそんな約束をした覚えはない!それは不当だ‼︎私はそんな支払いはしないぞ!」
ガバッといきなりクドリンが再起動した。まさかの賠償金額に目が覚めたようだ。
リリがフードを付けた格好で観客席から闘技場に降りてきた。さっきまでフード付けてなかったんだから周辺にいた人たちには顔バレしているだろう。それでもほとんどには顔が見えてないままのはずだ。
「ボクはあの時にユウキが勝ったら賠償金を求めると言って、お前は承諾した。その時にいくらでという条件はつけられていない。だったら賠償金がいくらであっても、不当ではない。なんなら大金貨500枚にしてもいいけど?これはユウキを馬鹿にした報いだ。」
実際あの時のクドリンは自分が勝てば可愛いと美しいが一つの肢体に存在しているようなリリを名実ともに自分のものにできると聞いて、頭が回っていなかった。勝つことしか考えておらず、夜の営みの事を妄想していたのだ。自分に不利な条件だとかは確認すら怠っていた。勝てばよかったのだが悪いのは全て負けた自分である。
「わ、分かった。大金貨100枚を支払う。だから500枚はやめてくれ。いや、どうか勘弁してください。」
そこに貴族のプライドは微塵も無かった。俺からしてもこれはやり過ぎだと思うレベルである。大金貨100枚って本来の優勝賞金の100倍じゃん?日本円だと…なんと一千万⁉︎リリをお怒らしたらダメだと肝に刻んだ。なんにしても新人発掘戦はこれにて終了だ。
「それでは、これから表彰に入ります!…その前に優勝者の特典の発表をしましょう。それは!ズバリ‼︎ベッテル氏による冒険者指南です!ユウキ選手はまだまだいけそうなので表彰の前に早速やっちゃいましょう。」
…………はぁ、そんな気がしてなかったわけではない。ベッテルさんも開催宣言の時に楽しみがあるとか言ってたし、それがこれなんだろう。マジか〜。
「そういうことだ、私と闘おうじゃないか。どうせ決勝でも実力の50パーセントってとこだろう?安心して全力でかかってくるといい、私はそれなりに強いから。アハハ。おいおいそんな震えるなよ、新人いびりってわけではないんだぜ?」
「違いますよ、怖いんじゃないんです。俺がちょっと前までいたところには俺が本気で張りあえる奴が居なくてずっと手加減してきたんです。今日もそうでした。でも雰囲気から分かってします。今の俺はあなたに絶対勝てない…だからこれは武者震いってヤツですよ。」
「フッ、強いな君は、その強さはまさしく漢‼︎そこのフードのお嬢さんが問題の女性だとお見受けするが、こんな漢が騎士になるんだ、たとえどんな災害に巻き込まれても心配する必要なしだな‼︎」
「別にボクも守ってもらうほど弱くはないつもり。今度から一緒に冒険者活動をする。」
「そうか!確かにあなたにも不思議な気を感じる。あなたのような方がギルドで話題になってないのが不思議だが、これからアリッサムのギルドに夫婦冒険者として名が知れ渡るかもしれんな‼︎
とりあえず今は旦那をお借りする。おおけがをさせるつもりはないからどうか安心して応援してあげてほしい。」
「うん、もしユウキに必要以上の何かをしたらボクが君を呪い殺すから。
ユウキ、きっとこの試合はユウキにとって有意義になる。頑張って。」
当たり前だ、俺だってせっかく全力の出せる相手が目の前にいるんだ。ならいつ全力を出すのか?今でしょ!…あ、その、ごめんなさい。
「それではユウキ選手とベッテル氏以外は観客席または控え席にお願いします。はい、それでは本当の最終戦を始めましょう!この試合は模擬戦の形式をとって試合終了はベッテル氏に一任します。それでは始め‼︎」
次回!戦闘オンリー回です。
誤字脱字ダメ出し報告大歓迎です。片っ端から直していきます!
2月22日アレクセイの言葉に誤りがあったので、修正させていただきました。具体的には
「〜〜だから100枚はやめてくれ。」
を
「〜〜だから500枚はやめてくれ。」
のところです。