第18話 決着、VSクソ貴族!
2月20日、それは佐藤勇希の誕生日。そして完全に偶然ですがリナ○ーの誕生日でもあります。現実は小説よりも奇なりってやつですね。
…朝の8時に開始された新人発掘戦、順調に試合は消化されながら正午となりお昼休憩となった。
午前中に行われた試合は8強がでるまでの計56試合。ひとつの闘技場を四分割して行われた試合は観客たちを大いに沸かせた。なかでも特に観客たちの度肝を抜いたのは、クドリンであった。
クドリンの戦いはまさに一方的というのが相応しかった。開会式での勇希の見立ては正しく、高価な触媒をふんだんに用いたド派手な魔法はその見た目の華やかさに比例する威力で対戦相手は防御重視であろうがなかろうが一撃で地に沈め、ほとんどを瀕死寸前にまで追いやった。(運営側の迅速な対応により、死者は今の所いない)
審判をしている冒険者もそれが一撃であるから手出しができず、観客がクドリンを持ち上げるからクドリンも気持ちよさそうに高笑いをしていた。もちろん勝ち残っている。で、今は侍女を控えさせて豪華な食事中だ。
一方、勇希と言えば勝ち残ってはいたがほとんど観客の目が止まるような試合展開では無かった。
初めの試合こそ、魔導具を身につけた肉弾戦という珍しい戦闘スタイルで注目されたがいざ戦いが始まると大した機動力でもなく、対戦相手の剣や斧が自らに降りかかってくるまで硬直、すんでのところで全てをギリギリ回避する。といった危なっかしさ満載であった。
最終的には避けに避けた結果、相手がへばって自滅するという何とも言えない試合終了を全試合でむかえていた。
今はお昼休憩なので観戦席のリリのもとにきている。
「ふぅ、なかなか辛くなってきたぜ。あと3試合か。何がムカつくかってあのクソ貴族がいちいち試合が終わるたびに俺の観戦にくることか、まぁそれでいいんだけど。」
「お疲れユウキ、お弁当持ってきてるよ。はいサンドイッチ。」
リリがサンドイッチを手渡しでくれる。だがこのサンドイッチはサンドされる中身は卵だったり肉の燻製だったりいいのだが、パンが硬い。日本で食べていたサンドイッチとはもはや別種である。手作りだし美味いからいいけど。
「サンキューなリリ。一つ聞きたいんだけどリリ開会式と一試合目の間どこにいた?ずっと探してたけどここにはいなかったよな?」
「それはヒミツ、この新人発掘戦が終わった時にわかるから心配はないよ。」
リリがそう言うなら余計に詮索する必要もないか。サンドイッチを食べ進めていく。腹が減っては戦ができぬってね。
「よし、休憩もそろそろ終わりだ。あと2試合頑張ってくるよ。」
「うん。見守ってる。」
「これにてお昼休憩は終了とさせていただきます。勝ち残っている8人は闘技場の中心に一度お集まりください。
また準々決勝からは一度に行う試合を一つとし、試合範囲も闘技場の全体とします。さらに選手の試合順による時間差を少なくするために試合間を長く取ります。
それでは準々決勝第一試合、クドリン選手とモブA選手との試合から再開します。」
・・・・・・・2時間後
「っはあ〜、やっと終わった〜。長かったぜここまで。次は決勝、貴族とだな。」
準々決勝から準決勝までが終了し、決勝はある意味で運営側の思惑通りである対戦カードとなった。つまり俺とクドリンが勝ち残ったのである。
「今年度の新人発掘戦も残すところ決勝のみとなりました。決勝に駒を進めたのはド派手な魔法で会場を沸かせ続けた子爵クドリン家の次男、アレクセイ・クドリン選手と、全試合が全てギリギリの勝利、サトウユウキ選手です。
ここで観客の皆様にご報告があります。決勝に駒を進めた両者ですが、何の因縁かとある1人の女性を取り合うライバルだそうです。恋の邪魔をするヤツは叩き潰せ‼︎の考えにのっとり、異例ではありますがこの決勝をギルド公認の決闘とさせていただきます。
ルール等は貴族の身分などは完全に無配慮とし新人発掘戦のルールをそのまま採用します。
そして勝敗がついた暁には、観客の皆様に証人となっていただきます‼︎」
今日一番の歓声が沸き上がった。クドリンの派手な勝利を期待する者、俺の大番狂わせを信じる者、問題の中心にいる女性が誰かを詮索する者様々だった。
何がライバルだ、俺のリリを一方的に奪い取ろうとしてるだけだろが、まったく盛り上げるためとは言え、俺はあいつを一瞬もライバルなんて思ったことないってんだ。
「それでは両者、闘技場の中心へ。」
新人戦の間、互いに意識はしていたが会話も目を合わすことも無かった俺たちが同じ場所に来た。
「やっとあのお嬢さんを私の物にできる。君も戦う前から決着はわかっているだろうに、ギルドも酷なことをするものだ。まぁ私は一切の手加減はしないがね。死んだりなどしないでくれよ。事故とはいえ寝覚めのいいことではないからね、クフフ。」
やかましいなこいつ、俺は返事をしないで静かに開始を待つ。
「さてこの決勝だが当然審判長である私が務める。今回は決闘ということだから私は一切の介入をしないことを誓おう。たとえそれが命に関わることであってもだ。昔から男は女のためな命をかける、当然だろう?だから悔いは残すな、全力で闘え。
それでは決勝及び決闘、開始‼︎」
クドリンが全力で飛び退きつつ手に触媒を持った。先手必勝する気なんだろう。だが俺はその間も動かない。
「どうした?怖くて脚がすくんだか?悪いがなさけも手加減もなしだ!今から動いてもお前の機動力では範囲から逃れることはできん!安心して死ね‼︎フレイムランス!」
巨大な炎で包まれた魔力の槍が生まれ、超高速で俺に向かってきている。確か2回戦と3回戦で使っていた技だ。
…死ねとか言ってるし殺す気満々じゃん。死なないで欲しいんじゃ無かったのかよ?貴族の言うことは信用ならんね。
俺のいた場所に槍が命中した。観客からは悲鳴が上がる、無防備に食らったと見えたのだろう。実際炎がひとしきり燃えて消えたあとにはえぐられた地面しか無かった。これを見てクドリンは、たいそうご満悦の様子だ。
「ククク、アーッハッハ。骨すら残らず消えよった。もう終わりか?まったくあっけなさすぎてアクビが出るな。」
「そんなこと言うなよ。まだ死んでねえんだから、けどまぁ終わりは確かに終わりだな、俺の勝ちで。」
「な⁉︎グェッッ‼︎⁇」
次の瞬間にはなぜかクドリンが闘技場の壁にめり込んでおり、クドリンがいたすぐ後ろに勇希が無傷で立っていた。
「勝者。サトウユウキ!」
観客の誰1人として反応が無かった。まるで時が止まっているかのようだった。いや、リリだけは笑顔で手を振ってくれていた。
「ふぅ、手加減がなかなかキツかったぜ。」
瞬殺以上にスッキリすることってないと作者は思います。それができる実力差があることがすでにすごいことですが…
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