表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弾丸は銀色  作者: ろろんむ
第1章 疑惑
8/17

魔法洗浄

第6部分「奴隷」にて


キャラメル色の髪→青みがかった長い銀髪


に訂正致しました。

 ルルナリアが仲間に加わって、一週間ちょっとが経過していた。

 俺のレベルは5まで上がり、ルルナリアのレベルは3まで上がった。あれから俺は一つ気付いたことがある。


 俺がレベル2になった時に覚えたシールドブレッド。実はあれ、一発以上使えるのだ。

 今のところは3発が限界のようだが、レベルが上がっていくにつれて撃てる回数も上がっていくとヘルプに書かれていた。

 シルバーブレットだけは、どうしても一発しか撃てないっぽい。

 またこのシールドブレッドだが、どうやら仲間に当てても効果があるようだ。一度ルルナリアが魔物に攻撃されそうになった時に一か八かで使ってみたら効果ありだった。


 そして俺はレベルが上がって二つの弾丸を撃てるようになった。


 一つはリカバリーブレッド(弱)

 その名の通り、自分や仲間に撃つと体力が少し回復するというもの。今のところ2発まで撃てる。

 この世界にはHPという概念がないから、体力回復というと精神論にもなってきそうな話だが、少なくとも傷は治せないらしい。

 まあ最も、シールドブレッドを手に入れてから殆ど怪我はしないのだが。


 もう一つはサーチブレッド(弱)

 これは最初、魔物に撃ってみたが効果はなかった。魔物の生態を見ることができるものだと思ったが、違ったようだった。

 ダメ元で自分に撃ってみると、何やら視界に文字が増えた。

 なんとこれ、草原に生えている草を見極めることが出来る弾丸なのだ。

 品質や種類まで特定できるので、良い奴だけ引っこ抜いて売れば稼ぎになると思ってやってみた。


「ここ薬屋だよね?」

「そうだよ、あんたもしかして銃の人かい?」

「なんだ、おばさんも他の勇者から話聞いてるの?」

「あたしゃ、あんたの目の方を信じるね。他の奴らはどうも裏がありそうで信用ならん!」

「おばさん、あんた見る目あるね」


 結局、一日で集めた草は銀貨4枚もの稼ぎになった。

 一見少ないようにも思えるが、銅貨40枚分だと考えるとまだモチベーションを保てる。


 他にもまだまだ習得できそうな弾丸がいっぱいありそうだから、レベル上げはしっかりやった方が良いな。


 一方のルルナリアには、俺のような習得技はないようだ。

 どうやらこの習得技、勇者にしかないシステムらしく、ルルナリアはレベルが上がってもステータスにしか影響しないようだ。

 魔法も、余程の生まれ持った才能がない限り、レベルアップで覚えることはないそうだ。



 俺とルルナリアは、あの川辺に座っていた。

 今のところ出会った魔物の中で、食べれるのはブルピョンとデンスモンキー、後はヤコドリという鳥の魔物だ。

 デンスモンキーは筋っぽいのであんまり食べたくはないが、ブルピョンとヤコドリは絶品だ。


「嘉浩様、焼いてください」


 ルルナリアは、少しの間はやはり本能に逆らうのが難しいのか、魔物を倒すとすぐに死骸に手を出してしまっていた。

 しかし俺が生の肉を焼いて食べさせてみると、肉は生より焼いた方が美味いと気付き、死骸にはすぐに手を出さなくなった。

 意外と単純で助かった。


 城下町で火打ち石を買ったし、このサーチブレッドで燃えやすい植物はサーチできるから、火は簡単に起こせた。

 あとは適当に肉を焼いて食う。ちょっと味気ない気もするが、金を無駄にしない為にはこれくらいがちょうど良い。


「どうだルルナリア」

「やっぱり焼いた方が美味しいです」


 ルルナリアはすっかりまともに喋れるようになっていた。

 テントの中では喋ることもなければ、動くことも殆どなかったので、声も体も鈍りに鈍っていたらしい。

 しかし一週間喋ったり動いたりしたことで、体は正常な機能を取り戻した。


「ルルナリアお前、風呂とかって入ったことある?」

「風呂…?風呂とは何ですか?」

「あー、風呂を知らないのか。温かい水で体を洗ったりしたことないのか?」

「たまに…檻の中で水を掛けられることはありました」


 あのピエロ、手入れが行き届いているんだかどうなんだか。

 奴隷とはいっても商品なんだから、そこはしっかりしてほしいな。それともわざとか?

 幸い、ルルナリアはまだ子供だから、臭ったりはしない。


「よし、じゃあ風呂入ろう」

「温かい水って…体に悪そうじゃないですか?」

「逆だ。冷たい水の方が体に悪いぞ」


 まあ長時間浸かっていればどちらも体に悪いが。

 とりあえず俺たちは町に入り、風呂を入る手段を探した。



 実は俺も、こっちの世界に来てからまだ風呂に入っていない。

 川の水で体を洗って自然乾燥…行水ってやつだ、それをしていた。シャンプーもなければ温もりもない。

 そろそろ俺も温かい湯に浸かりたいな。


 困った時の武器屋のおっさん、ということで俺たちは武器屋に来ていた。

 ついでだからおっさんに、ルルナリアのショートソードの手入れでもしてもらおう。


「お、あんたか。今日は何の用だい?」

「ルルナリアの剣の手入れをして欲しくてさ」

「研磨洗浄すべて込みで銅貨60枚だ」


 俺は銅貨を60枚おっさんに手渡す。

 ルルナリアは少々辛そうな顔でショートソードをおっさんに渡す。やはり好戦的ではあるようだ。


「どれくらいで終わる?」

「そんな掛かんねえよ。30分もあれば終わるさ」

「そっか。その間俺たち風呂入りてえんだけど、どっかない?」

「風呂?なんだそりゃ」


 こりゃ驚いた。武器屋のおっさんも風呂を知らないようだ。

 いや、こんなおっさんが風呂に入ったことないわけがない。きっとこっちの世界じゃ別の言い方をするんだ。


「あれだよ。温かい水に浸かって汗とか落としたりするやつ」

「もしかして魔法洗浄のことか?」

「魔法洗浄?」

「おう。炎魔法と水魔法を組み合わせて体を洗うことだよ」

「あーたぶんそれだ」


 この世界では魔法がなければ風呂もろくに入れないのか。

 きっと俺たちの世界でいう機械とかそういう類のものが、こっちの世界でいう魔法に通じるものがあるのだろう。

 そう思えば何となく納得がいく。


「それ、どこに行ったらやれる?」

「宿屋に泊まったことはあるかい?」

「ああ、ある」


 といっても最初だけだ。最近は節約の為に野宿している。この辺は暖かいから何をしても問題ない。行水もまた然り。


「別料金払えばできるぜ」

「ほかはないの?」

「魔法洗浄屋ってのもあるぜ。まあ色んなコースはあるようだが」

「ってか、おっさんの家にはないの?」

「俺はある程度魔法が使えるから必要ねえんだ。こっちの世界じゃ子供の時に、基本的な魔法は使えるように講義を受けるんだぜ」


 俺の世界でいう義務教育とか学校とかそういう類のことか。

 どこに行っても教育というのは避けられないというわけだな。


 それにしても魔法か。

 覚えていれば、攻撃の手段にもなるんじゃないか?この期に及んで勇者は魔法も使えませんなんてことは流石にないだろうし。


「おっさん、俺にその魔法洗浄やってくれたりしない?」

「そのくらい自分でやりな!第一俺は今、あんたらのソードを研いでるんだぜ?」

「あー、そうだった。今のは忘れてくれ」


 流石に無理なお願いだったようだ。

 頼みの綱であるおっさんもダメだとすると、やはり魔法洗浄屋に行くしかなさそうだな。

 どうせこの町じゃ、俺は弾丸音痴の名が轟いているだろうけど。


「じゃあ30分したら戻ってくる」

「おう」


 そう言って俺とルルナリアは武器屋を出て、魔法洗浄屋を探し始める。



 案外すぐ見つかった。


「いらっしゃいませ……あれ?」

「なんだ、なんか文句あんのか?」

「い、いえなんでも」


 大方、あれ?あの有名な弾丸音痴さん?仲間に手を掛けようとした弾丸音痴さん?とでも思ったのだろう。

 だが俺は客だ。そこはもっとこう、真面目にやれ!


「どのコースに致しましょう?」

「一番安い奴」

「そうしますと洗浄のみとなりますが」

「構わん」


 逆に洗浄以外に何があるのか知りたいくらいだが、聞くのも億劫なので考えないことにする。


「でしたら銀貨1枚になります」


 結構掛かるんだな、風呂でも。俺は銀貨を1枚渡す。

 そういえば俺がこっちの世界に来て初めて食った飯。確かレストランのようなところで食った飯だが、あのレストランはこの町一番の高級レストランだったらしい。

 調子こいて銀貨50枚のディナーセットを頼んだことを、今更後悔している。


 そんなことを思っているうちに、用意が出来たようだ。


「時間になりましたらお呼び致しますね」


 そう言って店の奴は離れていった。

 個室とはなかなか粋じゃないか。見た目も俺の世界でいう銭湯に近いな。結構狭いけど。


「よしルルナリア。服を脱げ」

「は、はい」


 ルルナリアは徐に防具とインナーを脱ぐ。

 やや膨らんだ乳房が露わになるが、ここはあまり見ない方がいいな。

 ルルナリアにも恥とかいやらしい気持ちとかはないようだし、ノータッチノータッチ、俺は平成の平静ボーイだ。やかましいわ。


 中に入ると色々とスイッチが目に入る。

 俺の世界でいうシャワーのようなものもある。


 使い方がいまいちわからないが、いじくっているうちに丁度良い温度のお湯が出たので、体を洗い始めた。

 これが炎魔法と水魔法で成り立っていると思うと、かなり新鮮な気分だ。

 ちなみにシャンプーは別料金だそうだ。舐めてやがる。


「よし、ルルナリア。まずはその汚れた髪を洗うぞ」

「あ、あの。その水、煙が出てます…」

「これは湯気。水が温かい証拠だ」

「本当に、体に悪くないのですか?」

「大丈夫だ。むしろお前、嵌まるんじゃねえか?」


 俺は間髪入れずにルルナリアにお湯を浴びせた。

 ルルナリアは最初体をビクつかせるが、そのあとは気持ちよさそうに笑った。


「き、気持ち良いですね」

「だろ?」


 俺はルルナリアの髪を洗った。濁った水が流れ落ちる。

 やっぱり行水をさせておいた方が良かったな。さすがにルルナリアも女だし、体は綺麗な方が俺も一緒にいて不快じゃない。別に今までも不快じゃなかったが。


 ルルナリアの髪は、見る見るうちに綺麗になっていった。

 青みがかった長い銀髪、というのが正しい表現だろうが、思っていたよりもずっと綺麗な髪だ。

 髪に光が反射して綺麗な銀色を映し出す。艶もある。頭に生える耳もまた、アクセントというか、そういうのが効いていて良い。


「なんだお前、綺麗な髪してんじゃん」

「あ、ありがとうございました」

「ございましたじゃなくて、ございますな」


 何を照れながら言葉を間違えてるんだか…。


 暫く魔法洗浄とやらを堪能していると、店の奴からタイムアップ宣告を受けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ